中央大学について
植民地出身学生
20世紀の前半、1945年の戦争終結まで日本は台湾(1895年から)、朝鮮(1910年から)を植民地としていました。
中央大学にも植民地出身の学生が学んでいました。ここでは、その学生の状況を紹介します。
1)学生数
植民地出身学生の数に関しては、「年報」(文部省年報)によって紹介します。
「年報」以外にも、文部省の指示で報告した文書中に記載のある場合もありますが、「年報」で報告している学生数がより信頼できると判断します。
「年報」は日本全国の教育機関の実態を毎年、数字などで表すものとして、明治年間から戦争終結後までの約80年間にわたって、文部省が作成しました。毎年度、大学を含む教育機関に統一様式で学生数等を報告させ「文部省年報」としてまとめていました。
一方で、「年報」には「入学者数、在学生数、卒業生数など」の項で説明したように、信憑性の低い数字を中央大学は報告しています。当時の国の制度は、日本国籍を持つ学生については入学定員管理を行ない、植民地出身学生などそれ以外の学生については入学定員にしばられずに受け入れることを可としていました。このことから、日本国籍を持つ学生に関する数字には実数と報告数との二重の数字で使い分け、それ以外の学生に関しては実数を報告したと推測します。
なお、『中央大学百年史』通史編下巻の129ページでも「年報」に基づく在学生数を掲載しています。
(1)1936(昭和11)年度の学生数
1937年07月31日 |
[昭和11年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(833KB) |
da20133508a0001-da20133508a0002 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(411KB) |
da20133508a0006 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(431KB) |
da20133508a0016 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で124人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で368人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(2)1937(昭和12)年度の学生数
1938年07月26日 |
[昭和12年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(785KB) |
da20133510a0001-da20133510a0002 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(418KB) |
da20133510a0006 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(436KB) |
da20133510a0016 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で194人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で434人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(3)1938(昭和13)年度の学生数
1939年07月27日 |
[昭和13年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(810KB) |
da20133511a0003-da20133511a0004 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(470KB) |
da20133511a0008 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(462KB) |
da20133511a0018 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で224人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で437人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(4)1939(昭和14)年度の学生数
1940年07月24日 |
[昭和14年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(681KB) |
da20133512a0001-da20133512a0002 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(464KB) |
da20133512a0007 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(458KB) |
da20133512a0018 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で376人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で476人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(5)1940(昭和15)年度の学生数
1941年07月15日 |
[昭和15年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(682KB) |
da20133513a0001-da20133513a0002 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(473KB) |
da20133513a0006 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(455KB) |
da20133513a0016 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で302人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で570人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(6)1941(昭和16)年度の学生数
1942年06月29日 |
[昭和16年度]大学年報及専門部年報報告ノ件(716KB) |
da20133514a0001-da20133514a0002 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(491KB) |
da20133514a0006 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(534KB) |
da20133514a0010 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で357人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で744人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
(7)1942(昭和17)年度の学生数
1943年07月30日 |
昭和17年度年報報告ノ件(380KB) |
da20133515a0001 |
甲号表2 公立私立大学表 其ノ1 学部(500KB) |
da20133515a0006 | |
甲号表3 公立私立専門学校実業専門学校表(469KB) |
da20133515a0010 |
「報告ノ件」は中央大学から文部省への「年報」報告の稟議書および報告鏡です(報告鏡を稟議書に兼用しています)。
甲号表2中に、学部ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で316人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
甲号表3中に、専門部学科ごとの学生数が記載されています。朝鮮半島出身者、台湾出身者合計で886人(昼間部夜間部合計)が在籍しています。
2)教練実施報告での植民地出身者への評価
1941(昭和16)年ころ |
学部教練実施報告[案](1953KB) |
da20134184a0001-da20134184a0005 |
1941年ころ |
昭和15年度教練実施情況報告 中央大学専門部[案](3335KB) |
da20134185a0001-da20134185a0010 |
1942年04月 |
学校教練実施情況報告(2479KB) |
da20134339a0001-da20134339a0005 |
いずれも、「軍事教練」の項で紹介した史料と同じです。
これらの史料は、いずれも文章で教練実施状況を報告しており、植民地出身学生とくに朝鮮半島出身学生について触れています。
現在では偏見や差別的な意識を感じる文章ですが、以下に引用します。
「学部教練実施報告[案]」(1941年ころ)
3.半島出身学生
学部総員ニ対スル半島出身学生ハ約19%ナリ是ラノ大部ハ教練ノ経験ニ乏シク且ツ偏欠ノ思想ヲ抱ク者多キガ如シ是ト一般学生トノ親和ニ就キテハ特ニ注意ヲ払イツツアリ
「昭和15年度教練実施情況報告 中央大学専門部[案]」(1941年ころ)
1 一般ノ情況
(イ)本学ハ二期入学制(4月、9月)ニシテ生徒ノ素質ハ一般ニ中以下ノモノ多ク又夜間部ヨリノ転校者相当多ク中ニハ全ク教練ヲ受ケザリシ者05%アリ又半島出身者32%ノ多数ニシテ且半島出身者ハ兵役ノ義務ナキト精神思想内地人ト異ナリ服従ノ観念乏シク面従腹背ニシテ単ニ点数ヲ取ラントシ中等学校ニ於ケル教練ノ知識モ一般ニ低シ 以上ノ如キ情況ナルヲ以テ教育ノ普及向上ニ支障ヲ来スコト大ナリ
注1:原文では「半嶋」とあるが半島とした。
注2:「05%アリ」は5%の意味と推測。
「学校教練実施情況報告」(1942年4月)
半島出身者ノ精神状態モ昨年ニ比シ一般ニ向上シ良好ニ趣キツツアルモ一部ニ於テハ未ダ真ノ日本精神タル忠節、責任観念等ノ精神ヲ欠キ表裏アル行為ヲ為スモノアリ又出席時数モ未ダ十分ナラザルモノアリ
注1:原文では「半嶋」とあるが半島とした。
3)「学徒出陣」後の状況
政府は、日本国籍を持つ学生の「学徒出陣」と同時に植民地出身学生へも実質的な徴兵を行なおうとします。
これについては、「卒業期繰り上げ、学徒出陣」の項の植民地出身学生の兵への志願(半強制的な勧誘)で紹介しています。