学生相談室学生対応の基本

 本学には、3万人近い学生が学んでいます。生まれも、性別も、国籍も違い、これまでの生活歴、学習歴も多様な学生たちです。私たち教職員が彼らの相談を適切に受け止めることができれば、彼らの自立を促し、成長の可能性をはぐくむことができます。また、これらの学生に、「この大学に来てよかった」と感じてもらえたとしたら、教職員としての大きな喜びにもなるでしょう。

(1)カウンセリングマインドとは

学生が相談にくるのは、授業終了後だったり、事務室のカウンターだったり、個人研究室だったりします。どのようなタイミング、場所であったとしても、カウンセリングマインドをもって受容的、共感的に接することが対応の基本です。
 ただ、いついかなるときでも無条件で学生の話を聴いてくださいというわけではありません。事情がある場合は、「今日は予定があり時間が取れないので、いつだったらいいですよ」というように伝えてください。すぐに話を聴くのが難しい理由を説明し、代替案を提示することは、学生の安心に繋がります。
受容的・共感的に接するということは、相談を受ける上で最も大切な要件です。それが、学生があなたを信頼し、安心して相談をする鍵となります。以下の点に注意しましょう。

  • 対等な立場として認識する
    教職員と学生は、教える立場と教わる立場、年齢の上下などの違いはありますが、人として対等です。このことをまず念頭に置いてください。
  • 話しやすい環境を作る
    自分が困りごとを話すときにはどういう環境を求めるでしょう? ざわついた場所、出入りが多いところではないですよね。自分は立っているのに相手は座っているとしたら? 腕組み足組みをしている人や、視線、体の向きを合わせない人に、気持ちよく話すことができるでしょうか? 学生が安心して話ができ、自分も落ち着いて聴くことのできる環境を作りましょう。
  • きちんと話を聴く
    学生たちは様々な質問、訴えなどを投げかけてきます。なかには思っていることを伝えることが苦手で、学生同士では話せても、大人にはきちんと話せない人もいます。何を言っているのかよくわからなくて、聴き手としてイライラすることもあるでしょう。だからこそ、気持ちを落ち着けた状態でじっくり話を聴くように準備を整えてください。
  • 学生の立場を理解する
    話を聴くときに自分の立場から考えるのでなく、学生の立場に立って考え、その気持ちを推し量ることが大切です。学生たちは今の状態を「わかってほしい」「受け止めてほしい」と感じています。「うんうん」「なるほど」。自分と異なる意見であっても否定せず、まずは受けとめましょう。「あなたはそう感じたんですね」。その上で自分の感じたことを伝え、それぞれの違いを認め合うことが大切です。
  • 傷つけない
    最近の学生の特徴のひとつに傷つきやすさがあります。何気なく発した言葉が彼らを傷つけてしまうことがありますから、神経質になる必要はないとしても言葉遣いには注意しましょう。性自認の多様性への配慮から、見た目で判断せずに“さん”づけで話すこともよいと思います。
    一方的な激励やアドバイス、または叱責は禁物です。そのような対応を受けた相談者は、受け止めてもらえていない、尊重されていないと感じる場合があります。
  • 情報を正確に伝える
    学生が情報を求めているときには、速やかに正確な情報を伝えることが大切です。不確かな情報の提供は、学生に不信感や混乱をもたらしますので、正しい情報を入手するように努めるか、正しい情報の得られる場所を紹介してください。
  • 自分の間違いに気づいたら謝る
    人は誰でも失敗をします。些細なことであっても間違いに気づいたらすぐに謝りましょう。さもないとせっかく築いた信頼関係が壊れ、学生に不信感を植えつけることにもなりかねません。

 学生の人格を認め、正面から受けとめようとすれば、自然とこのような態度になるのではないでしょうか。きちんと向かい合い、お互いに気持ちの良い関係性を保ちたいものです。

(2)秘密を守る

学生から聴いた相談内容や個人情報はどう扱っていますか? 安易に他人に話したり、利用したりしないようにお願いします。あなたへの信頼が失われるばかりか、所属する部局、大学への不信にも繋がります。性自認や性的指向に関することなど、極めて機微な個人情報を漏らした場合には、漏らされた側の人格や尊厳が侵され、生死にかかわるようなことにもなりかねませんので特に注意してください。
学生相談室では、「相談室で話した内容や相談に来たという事実は、あなたが了解しない限り、父母や指導教員にも伝えることはありません」と約束をしています(※自傷他害など生命、財産に関わる場合や、大学の危機管理上、重大な問題が生じると想定される場合は、守秘義務の解除事由となりえます)。
学生が学修上の問題を抱えたり、疾患・障害を抱えたりしているため、適切な援助者に繋げることが必要なときは、「誰に」「何を」「どのように」伝えるかを明確に説明し、学生本人の了承を得るようにしましょう。

(3)合理的配慮

学生の相談が具体的な支援の話になることがあります。特に、障害のある学生の場合には履修や受験、学生生活上の配慮を求めてくることが増えてきました。何をどうすればいいでしょう?

  • 障害者差別解消法
    2016年に障害者差別解消法が施行されました。この法律は「障害の社会モデル」に基づいて、障害のある人に対する①差別的取り扱いの禁止と、②合理的配慮の提供を求めています。すなわち「障害者が経験する困難は、社会に溶け込んでいる事物、制度、慣行、観念その他が、障害のない人を前提として作られていることから生じており、本人の機能障害によって生じるのではない。こうした障壁を取り除くのは社会の責務である」という考え方です。
  • 合理的配慮とは
    本学でも『中央大学における障害学生支援に関するガイドライン』を制定し、障害のある学生が障害のない学生と平等に教育・研究に参加できるよう機会の確保に努めることとしています。以下に合理的配慮の例を示してみます。

    ○移動に困難のある学生のために、教室に近い位置に駐車場を確保する

    ○授業や実習等において、ノートテイク、パソコンテイクなどの情報保障を行う

    ○試験の際に、学生の障害特性に応じて、試験時間の延長、別室受験や支援機器の利用を認める

    ○授業資料を事前に提供し、事前に一読したり、読みやすい形式に変換したりする余裕を与える

 

これらの配慮の際に重要なことは、申し出た学生あるいは受けた大学・教員のどちらか一方が配慮内容を決定するのではなく、相互の建設的対話によって調整していくものであるということ、調整の範囲は、教育・研究の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない、ということです。
仮に、適応障害の学生が、ゼミの討論会で発表することが難しいので配慮してほしいと主治医等の情報提供(診断書等)とともに申し出てきた際は、どう考えたらいいでしょう? みんなの前で発表をすることが不可欠な場合というのは、発表の内容・質だけでなく「大勢の前で」「口頭で」「発表し討論すること」も、その科目の単位認定要件(教育上の目的)になっているということを意味します。その場合にはシラバスにもその旨が明記されていた方が良いでしょう。発表内容の理解度を確認するために質疑は必要だが、「大勢の前」「口頭で」が単位認定上必須とまでは言えない場合には、LANを通して別室から発表と質疑対応をすることを認めたり、指導教員のみが別に質疑応答を行って確認したりするという配慮が可能になるでしょう。

(4)留学生に対して

 留学生だからといって日本人学生と異なった対応をする必要はありません。しかし、留学生の抱える背景として、生まれ育った社会環境、文化圏から離れ、異なった環境に身を置くことから、ストレスが大きくなりやすいということや、周りの教職員、日本人学生に相談することを躊躇する傾向があることは理解しておいた方が良いでしょう。こうした場合には、睡眠障害や、不安感、抑うつ的言動、集中力の低下などの精神的症状や、身体の症状が出やすいので、なるべく早く周りの人が気づくことが大事です。こうした学生がいる場合は、学生相談室や国際センターにご相談ください。
 また、経済的な問題、下宿・宿舎におけるトラブル、医療に関する困りごとなども留学生が抱えやすい問題ですので、適宜、学内の関係部署に繋げてください。