中央大学について

学長挨拶

次世代を拓く「行動する知性」を育成する「開かれた大学」へ

学長 河合久
学長 河合久

いま世界は度重なる自然災害、コロナ禍、紛争の脅威などに見舞われ、私たちを取り巻く経済社会情勢は激しい変動の中にあって、ますます不透明感を増しています。しかし、私たち人類は、いつの時代にも訪れるそうした混沌ともいえる情勢を克服してきたことも事実です。人類には情勢を的確に把握し、分析し、理想的な解決策を模索しようとする姿勢と知性が備わっているからです。大切なことは、この姿勢や知性を意識して行動に結びつけることであり、その際、異なる文化や歴史を有する国や地域に生きる多様な人々が共通して理解している、あるいは、パラダイムとして認識している人間像や社会像を視野に入れることでしょう。ここに学問を進める意義があり、大学の役割があります。

1885年に創立した中央大学は、そうした大学の役割を138年にわたって堅実に担ってきたと自負しています。本学は、「實地應用ノ素ヲ養フ」という建学の精神のもとに、白門を象徴とする伝統と実績を築き、いつの時代にも、社会を支え、未来を拓く人材を数多く送り出してきました。この建学の精神は、8学部、大学院8研究科、専門職大学院2研究科、4附属高等学校、2附属中学校と9研究所を擁する総合大学・総合学園となった今日、多様な学問研究と幅広い実践的な教育をとおして「行動する知性」を育む、というユニバーシティメッセージに受け継がれています。

学問は、実社会とそこに生きる人々に無縁ではなく、現実事象から課題を発見し、理論を還元するといった形で、社会の営みとの相互作用により発展すべきです。学問は常に時代とともにあり、社会の変化に適合するよう進化します。建学の精神「實地應用ノ素ヲ養フ」は、このような学問研究の姿勢に根ざす教育観を表したものです。したがって「素」とは社会に応用できる力の素地であり、「素ヲ養フ」とは知識はもとより、さまざまな体験や人との交流の中で培われるコミュニケーション力や議論する力、組織的な判断力、そして弛まず学び続ける力の涵養を伴います。

一方、持続可能な社会基盤の構築にとって、今後の大学における教育と研究においては、学問領域をますます複眼的にとらえ、多分野の融合を軸とする学際的研究教育の拡充、とくに科学技術(自然科学系分野)と人間行動・社会行動(人文社会科学系分野)の相互関係性に眼目を置いた文理融合型の研究教育が求められています。さらには、大学で学ぶ学生の皆さんが心身健やかに、そして主体的に学生生活を送れるような学修環境・教育プログラムの整備やスポーツ振興の強化が不可欠です。本学は近年、そのような社会からの負託に応えるために、「ダイバーシティ宣言」と「SDGs宣言」を発出し、全学的に次のようなことに取り組んでいます。

◆「中央大学スポーツ憲章」の制定(2022年)

◆ CHUOスポーツセンターの設置(2022年)

◆ 戦略経営研究科(ビジネススクール)のAMBAによる国際認証取得(2022年)

◆ 文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に認定(2022年)

◆ 産学官連携・社会共創フロア(後楽園キャンパス)の整備(2022年)

◆ 「中央大学の授業におけるデジタル技術活用の方針」の策定(2022年)

◆ 茗荷谷キャンパスの開設<法学部・法学研究科移転>(2023年)

◆ 駿河台キャンパスの開設<ロースクールとビジネススクールの移転>(2023年)

◆ 小石川キャンパスの開設<都心スポーツ施設>(2023年)

◆ 国際情報研究科の新設(2023年)

「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されたSociety5.0の時代に活躍できる、知性と行動力を備えた人材の育成という観点から、本学は教育DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、教育効果を高めるための遠隔教育と対面教育との有効な組み合わせのもとで、学生参加型教育プログラムの開発と外国大学・国際機関との連携をこれまで以上に進めます。これは、学生の皆さんが常に世界とともに学び、相互に成長しながら知性を社会に応用する力を養ってほしいからです。これからも、本学の豊富な人的、物的リソースを地域やさまざまなコミュニティに開放し、社会との交流も積極的に図る所存です。確かな未来につながる学びの実現に向けて、私たちは「さらに開かれた中央大学」をめざします。

2023年4月
学長学長 河合 久

中央大学学長  河合 久

1958年東京都生まれ。1977年中央大学附属高等学校卒、1981年中央大学商学部卒、1983年同大学院商学研究科博士前期課程修了、他大学専任教員を経て1996年中央大学商学部助教授、2000年商学部教授(2019年3月まで)、2011年商学部長・学校法人中央大学理事(2015年10月まで)、2018年5月副学長(同年10月まで)、2018年11月国際経営学部開設準備室長(2019年3月まで)、2019年4月国際経営学部教授(現)・学部長(2021年5月まで)・学校法人中央大学理事(現)、2021年5月学長就任。日本管理会計学会理事・常務理事、日本会計研究学会評議員、日本原価計算研究学会常任理事、中央大学附属高等学校・文科省「スーパー・サイエンス・ハイスクール事業」運営指導委員長など公的社会活動を歴任。現在の学外活動は、大学コンソーシアム八王子会長、学術・文化・産業ネットワーク多摩副会長、日本私立大学連盟常務理事、大学基準協会理事、大学監査協会理事、私学研修福祉会理事等。専門は会計情報システム論。