国際水環境理工学人材育成プログラム

「外濠再生」に挑む Ⅲ 国際水環境理工学人材育成プログラム履修生の研究が明らかにしたこと

2014年12月03日

2014年12月3日、中央大学後楽園キャンパスにて大学連携リレーシンポジウム「水循環都市東京シンポジウム」 (主催:水循環都市東京シンポジウム実行委員会)第一回会合が開催されました。右リレーシンポジウムは、本学理工学部教授で、国際水環境理工学人材育成プログラム(以下「プログラム」)の取組実施責任者である山田正教授(以下「山田教授」)が実行委員長を務めています。

第一回会合は、「玉川上水の機能を活かして水都東京をつくる」と題し、水環境に関心のある一般市民や産官学関係者など、約200名が参加しました。本プログラムからは、総合司会として産学官連携コーディネーターである山村寛理工学部助教が、基調講演の報告者及びパネルディスカッションのコメンテーターとして、山田教授が、研究成果発表ポスターセッションで、プログラム内通称「外濠研究チーム」8名(日本、中国、韓国、ベトナムの学生で構成)の学生が参画しました。

山田教授は、基調講演で、流れの極めてゆるやかな外濠の水質汚濁に関連し3つ実態があることを、「外濠研究チーム」の学生たちが明らかにしたことを紹介しました。1つ目は、近年、注目されているゲリラ豪雨など、大規模降雨が外濠に流入した後、外濠の水は浄化される。底泥、いわゆるヘドロが東京湾へと一気に押し流され、外濠の水は入れ替わった状態になる、2つ目は、外濠の水質は中規模降雨後が最も悪い。降雨は、底泥を巻き上げ、微生物の活動を活性化させる。結果、水中の溶存酸素量が不足し、水生生物の生存を困難にする。3つ目は、底泥の浚渫後、外濠の水は一旦浄化されるが、その状況は長くは続かない。下水由来の底泥が再び堆積し始めるため、という実態でした。

山田教授は、外濠には構造上、下水が流入するため、特に夏場の水質汚濁状況は深刻である。外濠に常に新鮮な水を導入できれば、外濠の水は浄化される。学生たちは、地道な観測と数値計算からそれを解明した。東京は、もともと世界一の水循環システムを持った美しい「水の都」であったが、開発を急ぐあまり、人々は、水を生活から、まちから見えないとところへと遠ざけしまった。文化的資産価値もある外濠の水浄化の実現は、世界に誇る「水循環都市東京」の取り戻しの一つであるだけでなく、彼らのような若い人たちに夢与える仕事にもなると思うと結びました。

基調講演に続き、リレーシンポジウム連携大学の中の3つの大学(東京理科大学、法政大学、日本大学、東京大学等)及び市民団体組織の関係者から報告が行われました。現代版水都市の再生、外濠再生に伴う地域連携、玉川上水機能の見直しと再生化、利水全体像の把握の重要性などの報告とともに、東京水循環健全化プロジェクト構想として、具体的な水源や導水方法等についての提案がありました。

最後に、「玉川上水を活かして水都東京をつくる」と題するパネルディスカッションが行われました。パネルでは、これを契機に、続くシンポジウムでも、さらに多様な多くの人の参画を得て、「東京全体の水循環の再構築」について考え、具体的に行動していくことの重要性を確認しました。

文責:国際水環境理工学人材育成プログラム事務局