国際水環境理工学人材育成プログラム

国際水環境理工学研究バンコク・シンポジウム

2013年11月27日

2013年11月27日、中央大学「国際水環境理工学人材育成プログラム」(以下「本プログラム」)のコンソーシアム校であるタイ王国・カセサート大学にて「国際水環境理工学研究バンコク・シンポジウム」を開催しました。
このシンポジウムは、2010年の清華大学(中国)、2011年の中山大学(中国)、2012年の水資源大学(ベトナム)とのシンポジウムを更に発展させ、東アジアの水関連課題とこれらに対する解決策、最新の技術等の情報交換を目的として開催したもので、このシンポジウムの成果を本プログラムのカリキュラムにも反映することにより、より実践的な人材育成に寄与することが期待されます。
 
今回のシンポジウムには、日本側からは本プログラムの産学関係者、プログラム履修学生、タイ側からは、水道関連公的機関、カセサート大学関係者など96名が参加しました。
 
今回は、気候変動のもとにおける治水・利水・水環境分野の技術と政策の今後の在り方をテーマに日泰の産学官の関係者が専門的見地から意見交換を行いました。タイは、2011年7月から続いた大雨で、各地で大規模な洪水被害が発生しました。10月には日系企業が入居する工業団地も相次ぎ浸水するなど、事態は深刻なレベルに至りました。かかる背景もあり、今回のシンポジウムでは、防災対策が中心テーマの一つとなりました。
 
 冒頭、ホスト校のカセサート大学Thanya Kiatiwat工学部長から、カセサート大学は国際化を推進中であり、このようなシンポジウムを共催できることは大変喜ばしい。水環境分野における日泰の産学官連携の強化は重要であり、このシンポジウムが実りあるものとなること、これを契機に両大学の将来的協力関係が推進されることを期待したいとの挨拶がありました。
 
続いて、プログラムの取組実施責任者である理工学部山田正教授が、2009年10月の第二回日中韓サミットを契機に創設された本プログラムでは、国際的な水環境分野で必要とされる人材の育成に取り組んでいる。現在は中韓越の協定校からの留学生がおり、日本人学生と切磋琢磨して学んでいる。カセサート大学からの留学生のプログラムへの入学が次期には実現するよう期待したい。数年前のタイの大洪水災害を受け、今回の日本側のメンバーには災害対策専門家を含めている。シンポジウムにおける実りある討論を通じ、今後のタイの洪水対策に資する提案を出せることを期待していると挨拶しました。
 
続く、基調講演や発表で、日泰双方の講師が立ち、今日の課題と解決策、最近の技術情報等についての講演を行いました。
 
タイ側講師からは、バンコク首都圏の下水処理管理、災害リスクと技術、水文学と水資源におけるリモートセンシング技術の適用、固形廃棄物浸出水処理に対する膜技術の適用、洪水管理のためのコミュニティー情報システム開発などにつき研究成果や現況紹介がありました。
 
日本側講師からは、地球温暖化と気候変動下の不確実性の中における減災害と水環境保全、低平地における水災害数値予測、沿岸域空港の安全と環境に関する技術政策、水資源賦存量に対する気候変動影響評価、地上・地下相互作用の時空間構造を可視化する流域モデリング、堤防崩壊予測モニタリングシステム、製紙排水流入河川に対する水質浄化技術、洪水減災・灌漑設備管理のための水位計・開度計の紹介などが行われました。タイの洪水を強く意識した対策事例や技術の紹介に、タイ側からその技術適用(導入)実績、コスト等、より具体的な点についての質問が多く出されました。日本側からは、有効な洪水対策のための関連部署間の連携強化に関連する質問が多く出されました。
 
今回のシンポジウムは、防災・減災をキーワードに、双方の研究交流や技術協力等の分野や方向性を考えていくうえでの有益な情報交換の場であると同時に、タイでの本プログラムを通じた水問題への取り組みを進めるきっかけとなりました。