2023年10月28日~29日、仙台国際センター(宮城県仙台市)で開催された第47回日本高次脳機能障害学会学術総会において、文学研究科 博士後期課程 心理学専攻に在籍している越智 隆太さん(ほか3名)が、優秀ポスター賞を受賞しました。受賞した研究テーマは、「アルツハイマー病・軽度認知障害・パーキンソン病患者における主観的時間感覚について」です。
日本高次脳機能障害学会は、失語症をはじめとする高次脳機能とその障害の研究の発展を図り、関連学会と連絡を保ち、広く知識の交流を求めることを目的として設立されました。
・第47回日本高次脳機能障害学会学術総会
https://www.higherbrain.or.jp/05_soukai_annai.html
ポスター発表の概要について
記憶障害を中核とするアルツハイマー病 (AD) では、「過去」・「現在」・「未来」といった主観的時間感覚も変化がみられ、「過去」と「現在」が近づいていくことが報告されています。一方で、記憶機能や注意機能と行った認知機能と、この主観的時間感覚との関係性を検討した報告はありませんでした。今回、AD患者、認知症の前駆段階とされる軽度認知障害 (MCI)患者、運動症状を中核とするパーキンソン病 (PD) 患者を対象に、「過去」・「現在」「未来」に関する主観的時間感覚を、「サークルテスト」と呼ばれる心理投影法 (Cottle 1967; 都筑 1993)を用いながら、認知機能との関連性を明らかにする目的で検討を行いました。その結果、AD患者では注意機能低下に伴い、「過去」と「現在」、「過去」と「未来」が近づいて感じられるようになるのに対し、PD患者では、逆に注機能低下に伴い「現在」と「未来」が離れて感じられるようになることが明らかになりました。MCI患者ではこのような主観的時間感覚と認知機能との関係性は確認されませんでした。AD患者に比べPD患者では記憶障害が見られにくいことから、両疾患の間に見られた違いは、記憶障害の重症度の違いを反映したものである可能性が示唆されました。
受賞にあたってのメッセージ
本研究は、昭和大学医学部の河村満先生(奥沢病院名誉院長)、二村明徳先生、愛知淑徳大学の花塚優貴先生(本学大学院文学研究科博士課程修了)との共同研究で実施されたものでした。また、研究の実施にあたり、患者さんやご家族、医療機関のスタッフの方々のご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。