大学院

【究める vol.118】修了生の声 吉田 のえるさん(総合政策研究科 博士前期課程)

2023年05月08日

「究める」では、大学院にまつわる人や出来事をお伝えします。今回は前回に引き続き、「修了生の声」をお届けします。博士前期課程の1回目は、総合政策研究科 博士前期課程を修了した吉田 のえるさんです。大学院時代の研究テーマをはじめ、進学理由や大学院での過ごし方、印象に残っていることなど、様々な角度からのエピソードを掲載しています。

 

吉田 のえる(よしだ のえる) さん

2023年3月に総合政策研究科 博士前期課程 総合政策専攻を修了しました。

<修士論文タイトル>
吉野作造の朝鮮観および国家観の変化過程−人的交流の分析による思想転換の再検討−

大学院時代の研究について

大正デモクラシーの立役者・吉野作造について研究しています。
論文としてまとめるにあたって、既存研究を調べるうちに、吉野は思想転換をしたか否か?という論争があることがわかりました。
そこで修士論文では、「吉野には思想転換があった」という立場から、既存研究に加えて、吉野本人の日記や論文等の一次資料の分析を通して彼の交友関係(人的交流)を再検討し、そもそも吉野の思想転換は、具体的にどのような出来事や交流を契機として起こったものなのか?ということを掘り下げました。

中央大学大学院への進学を決めた理由を教えてください

進学を決めた一番の理由は、勉強が好きだからです。
学部1~2年の頃は、必修科目をクリアし、基礎科目をインプットするので精一杯でしたが、3~4年になって、より専門的な講義についていけるようになり、自分の専門分野を勉強するコツを掴んで、さらに勉強が楽しくなってきたところで、就活シーズンを迎えてしまいました。
とりあえず社会人になってみる、という選択肢もありましたが、企業や上司の理想像に寄せて自分をアピールしていく傾向のある日本の就活は、私の性格にはあまりフィットしませんでしたし、やはり気が済むまで勉強してみたい気持ちの方が強かったです。
また、勉強を続けてみて、その成果を将来的に職業と結び付けられれば、自分の好きな「勉強」を「仕事」にできて、これほど幸せなことはないだろう、という考えに至り、進学を決めました。

ご自身にとって大学院はどのような場でしたか

人生で一番、自分と真剣に向き合った場所でした。
好きなことを好きなだけ、好きな角度やアプローチで研究できる環境は、勉強好きな私にとっては最高でした。
しかし、裏を返せば、この自由度の高さは、漠然とやりたいことだけをやっていては、いつまでもゴールには辿り着けない、という厳しさでもあったように思います。
博士前期課程においては、修士論文の執筆・提出というゴールを目指して、自分に足りない部分を勉強して補いながら、既存研究の整理や資料の収集・精読、論文の構成・執筆など、論文を完成させる作業を並行して行う必要がありますが、私は「勉強したい欲」が上回ってしまい、なかなかバランスが取れずに苦労しました。
気合い一本でがむしゃらに進むのではなく、戦略的に、論理的に、着実な一歩を踏み続けることが、本当の意味合いでの積み重ねだと、大学院での生活を通して学ぶことができました。

中央大学大学院へ進学してよかったことについて

現在の指導教授には、学部時代からお世話になっています。
そのため、研究や論文だけでなく、長期的な研究の方向性や、人間性、研究者としての心構えのような部分についても、長期間にわたってご指導いただけているのは、とてもありがたいことです。
また、総合政策研究科は少人数なので、ほとんどの授業がマンツーマンで、指導教授以外の先生方とも距離が近く、多くの先生に自身の存在を覚えていただけています。
研究のことから、今後のキャリアや私生活のことまで、「研究者の先輩」という目線から親身に相談に乗ってくださる先生が多くいらっしゃって、恵まれた環境で研究できたことに感謝しています。

大学院時代の印象に残っている出来事について

学部時代と比べて、先生方とのお話や議論の次元が、格段に上がったことが印象的です。
私は1年次を、とにかく既存研究の整理や基礎的な概念のインプットの時間に当てました。
そのおかげか、2年次以降、修論についてたくさんの先生方からご意見をいただく中で、答えに詰まるような質問が減り、質問の意図を明確に理解した上で回答できる場面が、圧倒的に増えた実感がありました。
同じ研究分野の先生からの質問に対し、的確に回答できた際、「こちらも大変勉強になりました」というコメントを頂けたときは、すごく嬉しかったですし、研究を進める上での自信にもつながりました。
インプットに時間を割くことにはメリットとデメリットがありますが、論理的思考を鍛える、という意味では、効果的に作用したのかなと思います。

修了後の進路について

中央大学大学院の博士後期課程への進学が決まっています。
引き続き、吉野作造や大正デモクラシー期の歴史について、研究を進める予定です。

受験生のみなさんへ

大学院進学は、研究者を目指す方はもちろん、そうでない方にもぜひおすすめしたいです。
研究者志望の方は、どの先生につくか、そもそも研究で食べていけるのかなど、悩みが尽きないと思いますが、自分のやりたいことや目指すものへの気持ちに正直に、嘘のない選択をしてほしいなと思います。
就活と進学で悩んでいる方には、ぜひ進学をおすすめしたいです。
修士論文を仕上げるというプロセスの中では、単に専門的な知識を習得するだけでなく、物事を論理的に考える力、物事を俯瞰してその本質を捉える力、マルチタスクなど、会社ではじっくり教えてもらえないことを、時間をかけて綿密にトレーニングできます。
より高い次元で就活をするための準備期間として、大学院で「考える力」をさらにトレーニングすることも、選択肢の一つに加えていただけたら嬉しいです。
一人でも多くの方が、大学院という環境での、新たな学びにチャレンジしてくださることを願っています。

 

※本記事は、2023年3月時点の内容です。