大学院

【究める vol.117】修了生の声 多田 由彦さん(経済学研究科 博士後期課程)

2023年05月01日

「究める」では、大学院にまつわる人や出来事をお伝えします。今回は「修了生の声」として、2023年3月に経済学研究科 博士後期課程を修了した多田 由彦さんにお話を伺いました。大学院時代の研究テーマをはじめ、進学理由や大学院での過ごし方、印象に残っていることなど、様々な角度からのエピソードをお届けします。ぜひご覧ください。

多田 由彦(ただ よしひこ) さん

2023年3月に経済学研究科 博士後期課程 経済学専攻を修了し、
博士(経済学)を授与されました。

<博士論文タイトル>
Theoretical Studies in Unawareness and Discovery Process

大学院時代の研究について

私の博士論文のテーマは共有知識 (common knowledge) の仮定を緩め、unawareness と呼ばれる無知が介在する状況で、主体の意思決定がどのように変化するのかを数理的に分析することです。まず discovery process と呼ばれる無知の改善プロセスに対してどのような解概念と結びつけることが適切であるのか検討しました。また、情報関数と unawareness との関係を考察し、unawareness の性質を数理的に特徴づけました。

中央大学大学院への進学を決めた理由を教えてください

研究者によっては、別の大学院に進学し、新しく出会った人たちと競争した方が良い研究結果を出せる場合があります。しかし私は環境に慣れた場所でマイペースに勉強した方が結果を出せるタイプでした。中央大学は学部の頃から所属しており、研究環境も学内の人間関係も共に慣れ親しんだ場所だったので、入学を決心しました。

ご自身にとって大学院はどのような場でしたか

大学院は学部と違い授業科目数が大幅に減る代わりに、勉強や研究、思索に時間を割く場所です。そしてその時間を有効活用するためには、自分自身の計画性や忍耐力など色々と試しながら、自分に合った研究スタイルを確立する必要があります。大学院は研究スタイルを確立するための修行期間だと言えます。

中央大学大学院へ進学してよかったことについて

時間にゆとりができたことです。大学院によっては定期試験を繰り返し、同期と競争を繰り返して研究能力の向上を目指すことがあります。他方で中央大学大学院は同期との競争を求めない代わりに、思索に時間を割くことが求められます。私は理論系の研究者を目指していたので、思索に時間を割くことが求められます。中央大学大学院は私の研究者としてのタイプにピッタリとハマっていたので、結果的に博士論文の質を高めることができました。

大学院時代の印象に残っている出来事について

海外研究者に論文の草稿を送ったことです。私の研究分野は専門家が少ないため、数少ない専門家から関心を集めることができるかどうかが重要になります。私は主要な先行研究者をリストアップした上で、関連のある研究者に論文草稿を送りました。そして幾人かの研究者からコメントをもらうことができました。海外研究者から関心を持ってもらえたことが何よりも嬉しかったことです。

修了後の進路について

中央大学経済学部にて任期付の助教になります。研究者としての修行期間を終え、これからは大学教員の修行期間となります。授業と研究を両立できるようしっかりと研鑽を積みたいと思います。

受験生のみなさんへ

研究者は研究者としての実力が必要とされます。しかし、実力が研究結果に与える影響はあまり大きくなく99%の運、1%の勘が大事になります。特に人間関係の運はとても大事になります。研究者は研究論文を読んでくれる人がいないと研究の意味がありません。指導教授以外にしっかりと研究を見てくれる学内外の先生方や大学院生たちと交流を重ねることも必要になります。研究の基本は勉強ですが、研究活動の基本は人間関係にもあることを忘れないでください。そしてそうした出会いは運によるものなので、しっかりと運を掴み取ってください。

 

※本記事は、2023年3月時点の内容です。