大学院

【究める vol.116】修了生の声 チョルチャワリット・カノパンさん(法学研究科 博士後期課程)

2023年04月17日

「究める」では、大学院にまつわる人や出来事をお伝えします。今回は「修了生の声」として、2023年3月に法学研究科 博士後期課程を修了したチョルチャワリット・カノパンさんにお話を伺いました。大学院時代の研究テーマをはじめ、進学理由や大学院での過ごし方や印象に残っていることなど、様々な角度からのエピソードをお届けします。ぜひご覧ください。

研究で使った参考書の一部

CHOLCHAWALIT KANOKPAN
 
チョルチャワリット      カノパン      さん

2023年3月に法学研究科 博士後期課程 民事法専攻を修了し、
博士(法学)を授与されました。

<博士論文タイトル>
仲裁における保全処分の研究

大学院時代の研究について

博士後期課程では、修士論文に続く研究として、仲裁における保全処分制度について研究を行いました。

仲裁手続、とりわけ国際仲裁手続では、民事訴訟手続におけるのと同様に、将来の終局的仲裁判断の実効性だけでなく、円滑な仲裁手続を確保するために、保全処分は極めて重要な役割を果たします。それにしても、仲裁廷による保全処分をめぐっては、①仲裁廷による一方審尋保全処分の可否、②仲裁廷による保全処分の執行力付与に関する問題、そして、③緊急仲裁手続に関する問題など、いまだに議論が残されています。その結果、仲裁廷による保全処分は、期待されるほど機能していない現状にあります。

そこで、本研究では、仲裁制度、とりわけ日本とタイにおける仲裁制度の実効性及び自己完結性を高めるために、仲裁廷による保全処分に関するこの3つの論点を取り上げて深く研究しました。研究方法は、主に比較法研究の手法によって、諸法域の仲裁法や常設仲裁機関の仲裁規則を分析・検討する方法によることとし、仲裁廷による保全処分の全体像を体系的に整理して、仲裁廷による保全処分制度の望ましいあり方を提案しました。

中央大学大学院への進学を決めた理由を教えてください

私は、仲裁制度について興味があり、日本で修士課程に進学することを検討していました。その時、タイでお世話になっている先生から、中央大学には、この分野で研究している先生がいらっしゃると教えていただきました。中央大学大学院に進学して、仲裁に関する優れた専門知識や経験を有する先生方のご指導のもとで研究することができれば、充実した研究活動を行うことができると思い、中央大学大学院に進学することを決めました。博士後期課程に進学するときも、博士前期課程からお世話になっている指導教授のもとで、仲裁制度についての研究を続けたいと考え、博士後期課程も中央大学大学院に進学することを決めました。

また、中央大学には充実した研究環境が整っていることも理由の一つです。中央大学は、例えば、「ライティング・ラボ」という学術的な文章の作成を支援する機関の設置、博士後期課程の大学院生の学位取得の促進と高度な研究教育者を育成するための「法学部任期制助教C1」の任用など、研究者を目指す者に対する様々な支援制度を提供しています。こうした支援制度により、中央大学大学院に進学すれば、論文執筆能力を向上させることが期待できるほか、経済的な負担も軽減でき、研究に集中できると思います。

ご自身にとって大学院はどのような場でしたか

大学院は、研究者としての人生を歩き始める第一歩であり、その訓練場だと思います。大学院生活では、自分の関心のあるテーマに対して十分な時間をかけ、研究に向かって、もっとも集中できる時期であるので、大学院で研究活動を行っている間に、自分に合う研究方法を見つけることができます。

それに、中央大学大学院には、学術誌や学会など多様な研究発表の場が用意されているため、そこで先生や専門家の方々からのご指摘をいただいたことによって、自分の考えを整理・改善することができました。中央大学大学院法学研究科は、研究者として求められる高度な論文執筆能力や法的思考力を修得することができる環境が整っていると思います。

中央大学大学院へ進学してよかったことについて

自分にとって、中央大学大学院へ進学して一番よかったことは、教授陣からのご支援だと思います。
私は、博士後期課程における研究を行っている間、日本では、仲裁法改正に向けた研究会が行われていました。その後、当該研究会を引き継ぐかたちで、法制審議会仲裁法制部会は、仲裁法制の見直しに関する検討を開始し、仲裁法の改正案をまとめました。こうした事情により、それまでに行ってきた研究のあり方及びその内容の一部を修正する必要に迫られるなど、困難な時期がありました。

しかし、研究会で論文を報告したとき、先生方から研究の内容について、貴重なご意見・ご指摘をいただきました。また、法改正に関する情報や日本における立法過程のあり方についても丁寧に教えていただき、非常に親切なご助言を頂戴しました。そうした先生方からの手厚いサポートがあって、博士論文を完成させることができたと思っています。それに、研究を行うにあたっては、どのようなことを考慮に入るべきかを学ぶ機会をいただいて、法趣旨や法制度だけではなく、立法過程についても学ぶことができて、自分の視野を広げることができました。

中央大学大学院では、このように先生方からの様々な助言や指導を受けることができ、心強いサポートのある環境の下で博士論文の執筆ができたので、本当に感謝しています。

大学院時代の印象に残っている出来事について

指導教授のご指導が深く印象に残っています。私の指導教授は、いつも時間を割いて、私に個別指導を行ってくださいました。指導教授は、研究内容や方向についての指導だけでなく、仲裁制度の基礎知識・実務上の状況、論文の論理的な書き方、日本語・専門用語、判例解釈、研究方法や研究の進め方など、様々なことを教えてくださいました。そして、私が自分の意見を上手く整理できないとき、論文の方向性に迷ったときには、どうすべきか・どう考えるべきかをすぐに教えるのではなく、私が自分の考えを整理できるようになるまで何度も意見交換したり、質疑応答したりして、私の意見をより分かりやすく整理してくださいました。指導教授が私の意見を聴きながら、とても丁寧に指導してくださったおかげで、研究を完成させることができました。指導教授には、私に研究者としての重要なことについていろいろ教えてくださったことに深く感謝しております。

修了後の進路について

博士後期課程修了後は、立正大学法学部の民事訴訟法担当の特任講師として着任予定です。

受験生のみなさんへ

大学を卒業して、社会人になるという人が多い中、自分だけが大学院、特に博士後期課程へ進学する道を選ぶことは、大きな決断になると思います。それに、大学院で行う研究活動についても悩むことがたくさんあると思います。そのため、大学院への進学を検討する際は、進学先となる大学院には自分の研究活動を遂行するために適切な環境があるかをよく考えることが非常に大切です。

中央大学大学院には、上記のとおり、研究活動に対する支援制度や設備が非常に充実しています。中央大学図書館には、参考文献やデータベースが充実しているので、論文を執筆するにあたって、必ず役に立ちます。また、アカデミックな面での支援だけではなく、中央大学大学院には、国内外での研究発表にかかる旅費を支援する制度、奨学金、法学部任期制助教C1制度など、経済的な支援もたくさん提供しており、皆さんが安心して研究活動に専念できる環境があると思います。

そして何より、中央大学大学院では、先生方をはじめ、大学院事務室の方々、そして、大学院生にも親切な方が多く、困ったときに必ずサポートしてくれます。中央大学大学院は、研究者を目指す大学院生にとって最適な環境が整っているところだと思います。

受験生の方々も、これらの制度や支援を活用して、有意義な大学院生活を送ることができると思います。

 

※本記事は、2023年3月時点の内容です。