大学院

【究める vol.114】大学院生の生活⑬(経済学研究科 博士前期課程1年 齋藤 登志さん)

2023年03月31日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
現役大学院生に院生生活や研究についてお聞きする連載「大学院生の生活」。今回は、経済学研究科 経済学専攻 博士前期課程1年の齋藤 登志(さいとう とし)さんにお話を伺いました。

   齋藤 登志 さん


  研究科:経済学研究科


   専攻:経済学専攻


   課程:博士前期課程1年

研究テーマについて

私は税理士コースで相続税を研究対象とした修士論文の作成を予定しており、相続財産としての土地の評価を題材に相続税法22条が規定する「時価」の概念を研究しています。

日本の相続税法では、相続税額の計算の基礎となる相続財産の価額は同法22条が定める「時価」により評価することとされています。ここでいう「時価」とは「客観的交換価値」を意味し、経済学的には完全競争市場における均衡価格と同義ですが、現実の評価事務では、課税の公平の観点から国税庁が定める「財産評価基本通達」に従い全国一律に画一的な評価が要求されています。評価通達は市街化地域に所在する宅地の評価に路線価方式と呼ばれる評価方法を用いていますが、その路線価は、評価の安全性を加味し、平成4年の地価税の実施以降は地価公示価格の8割程度となるよう設定されてきました。しかし、地価の二極化・個別化が顕著になりつつある昨今において、当時の急激な地価上昇の下で設定された安全率を未だに一律で適用することには疑問の余地が残ります。修士論文の作成にあたっては、8割評価の位置づけをした租税争訟事件の判例研究を行った上で、現行の8割評価の妥当性を経済学的に検証しようと考えています。

1週間のスケジュールについて

大学院生として、どのような1週間を過ごしているかについてお聞きしました。

  午前 午後(昼) 午後(夜)
自由 自由 自学自習
 大学講義★ 自学自習 TAC講義★
研究★ 研究 自由
大学講義 大学ゼミ 自学自習
大学講義 自学自習 TAC講義
大学講義 研究 自学自習
自学自習 TAC講義 自由


<Pick Up!>
★大学講義(火・午前)
大学院の講義は少人数制のゼミ形式によるものが多いです。初回の講義で発表順を決め、指導教員から提示されたテキストの箇所あるいは研究テーマに関して各自がまとめてきたレジュメを基にディスカッション形式で授業が進行します。したがって、学部以上に積極的に講義へ参加する姿勢が要求されます。

★TAC講義(火・午後)
私は大学院に進学する段階で簿記論と財務諸表論には合格していましたが、税法1科目を残していたため予備校とのダブルスクールを行っていました。課題やレポート、試験勉強が忙しく授業実施期間中にアルバイトをする余裕は無かったのですが、休校期間中に大学試験監督補助や八王子税務署非常勤職員といった短期雇用のアルバイトを経験しました。

★研究(水・午前)
文献の収集にあたっては公益財団法人日本税務研究センター(東京都品川区)や公益財団法人租税資料館(東京都中野区)の図書室をよく利用しました。また、大学院生になると中央大学図書館(多摩キャンパス)の閉架式書庫に自由に入室できるようになります。文献の必要な箇所をコピーし、通学中の電車内など空き時間を利用して目を通していました。

1日のスケジュールについて

続いては1日のスケジュールについて、具体的に例を挙げていただきました。

~6:00 睡眠
6:00~7:00 起床
7:00~8:00 朝食
8:00~9:00 大学に通学
9:00~11:00 大学講義★
11:00~12:00 昼食
12:00~16:00 研究★
16:00~17:00 夕食
17:00~18:00 TACに通学
18:00~22:00 TAC講義
22:00~23:00 帰宅
23:00~24:00 睡眠


<Pick Up!>
★大学講義
税法2科目免除を目指す学生の場合、修士論文の執筆に加えて、税法に属する科目(所得税法や相続税法など)の講義を4単位以上修得することが必須の要件となっています。税理士コースを予定する学生は履修登録する科目の選択に注意しましょう。なお、この4単位には修士論文に関する演習やゼミの単位は含まれません。

★研究
税理士コースの学生が作成する修士論文は、経済論文の中に租税争訟事件の判例研究を盛り込む必要があるため研究テーマの設定に苦労することになるかと思います。その場合は、『租税判例百選 第7版』(有斐閣2021)が参考になります。大学院入学後も様々な場面で使用しますので、手元に置いておいて損はない一冊です。

受験生のみなさんへ

中央大学大学院に進学を検討されている方は、年2回オンライン上で開催される大学院進学相談会に参加することをお勧めします。大学院ではゼミに所属しなければならないため入学前に指導教員とアポイントをとる必要があるのですが、相談会はその仲介役を担ってくれます。
大学院での学びはこれまで資格試験一辺倒であった私の視野を大きく広げるものでした。現行の税制の背景を知ることは税理士試験の税法科目をより深く理解する上でも役立ちますし、中央大学は伝統的に難関国家資格の取得に強く大学側のサポートも充実しています。大学院進学に興味はあるけれど不安や疑問をお持ちの方はまず説明会に参加するところから一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

 

※この記事は2023年2月時点の内容です。