大学院

【究める vol.112】在学生の声 髙橋 侑希さん(文学研究科 博士前期課程)

2023年01月27日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。今回は「在学生の声」として文学研究科の髙橋侑希さんへのインタビューをお届けします。大学院でのご自身の研究をはじめ、進学した理由や大学院での研究活動・課外活動など、大学院の様子が伝わる様々なエピソードが載っています。

髙橋 侑希(たかはし ゆうき)さん


研究科:文学研究科
専 攻:英文学専攻
課 程:博士前期課程2年

大学院でのご自身の研究について教えてください

研究領域は第二言語習得で、学習者の文法知識や習得のメカニズムを明らかにすることを目的に、普段は学習者にとって、何がどうして簡単で何がどうして難しいのかを考えています。

研究テーマは日本人英語学習者による英語のタフ構文の習得です。英語で”Ami is easy to please.”と発話したとき、形式上主語位置にあるAmiは動詞pleaseの目的語として解釈されます。このような文をタフ構文と呼びますが、日本語で上記の文に対応する文「アミが喜ばしやすい。」と発話したときには、英語と同じような①「(誰かにとって)アミが喜ばしやすい。」という解釈と②「アミが(誰かを)喜ばしやすい。」という2通りの解釈が得られます。そこで日本人英語学習者が英語タフ構文において、母語の解釈を捨て、英語のタフ構文の知識を習得できるのかを心理言語実験を通して調査しています。

大学院へ進学した理由と、中央大学大学院を進学先に選んだ理由を教えてください

一番の理由はタイミングです。第二言語習得研究の分野でトップの先生方が揃っているのはもちろん、分野のこれからをリードしていくような先輩、優秀な同期、後輩、留学生がいて、大学院に進学するなら、人生において今がベストだと思ったからです。中央大学大学院を選んだのも上記の環境があったからです。

実際に入学してみて、大学院はいかがでしたか

進学の際には一般企業の内定と教職の2つを蹴ってこの道に来ましたが、この進路選択に全く後悔はありません。特に、先輩や同期、後輩など仲間たちとのふとしたことから始まる議論はかけがえのない経験になりました。言語現象についてあーだこーだ何時間も話す経験は、平均的な進路を歩んでいたらめったにできないことだと思います。一見時間の無駄に思われるかもしれませんが、その時の思考のプロセスであったり、分析態度などは研究以外の分野でも活きる重要なスキルだと思います。また仮に無駄だったとしても、無駄なことに我を忘れて没頭できるのもこの大学院生活だけなのかもしれません。

大学院の授業はどのように行われていますか。学部との違いや特徴を教えてください

授業は先生によりさまざまです。①対面かオンラインか、②講義形式かディスカッションか、③使用言語はなにか、などは先生次第です。学部と比較したときに1つ言えることは、発表の機会が圧倒的に多いと言うことです。そのため、念入りな準備をしないと周りに迷惑をかけることになります。予習の質と量が、輝かしい院生活のスタートダッシュにつながると思います。また、発表の際には批判的なコメントもより高いレベルで求められます。ただ文献を読むだけでなく、常に批判的思考を働かせ、課題を発見し、建設的な議論に発展させることが重要です。読むだけなら、誰とでもできます。内容を発展させ、周りを巻き込んだ議論を展開することで初めて、選んだ環境にいる意味が生まれます。

実際に履修した授業について、印象に残っていることを教えてください

博士前期課程1年の後期に履修した統語論・形態論の授業です。授業でIan RobertsのParameter Hierarchies and Universal Grammarを扱いまいしたが、正直難しすぎて全然わかりませんでした。それでも毎授業で何かしらコメントしようと批判的に問を探す姿勢や、わからないなりに根気強く読む姿勢は、今後の生活にも役立つと思います。自分では絶対に手に取らないような難書に取り組めるのも、大学院ならではだと思います。

中央大学大学院に進学してよかったことについて

先生方のネットワークが幅広くかつ強固であったこともあり、他大学の先生や学生を含めた勉強会や、授業で読む文献の著者である有名な海外の先生を招いた講演会などに参加できたことです。分野の中で権威のある先生方やこれからを担っていく方々と時間を共有できたことは、たとえ研究の道に進まないにしても、自分の人生にプラスの影響になりました。

授業以外の時間はどのように過ごしていますか

       NPO出張にてイベント開催地候補を視察。(インドネシア コモド国立公園) 

週に2日、大学1年生の時から続けている集団塾のアルバイトで中高生に英語を教えていました。あとは、所属しているNPOの活動で単身インドネシアに出張したり、各国のリーダーが集まるサミットに参加したりして国際性豊かな生活も送っていました。また、大学4年生の時に既に教員採用試験に合格していて、大学院卒業後は高校教員になる予定でしたが、NPOの活動を通して教員になる前に海外で働きたく思ったので就職活動もしました。文系大学院に進むと進路選択の幅が狭くなるという考えが世間に浸透していますが、過ごし方次第ではどんな進路であれ武器になると実感しました。それ以外の時間は趣味の筋トレやインドネシア語の勉強をしていました。心技体が強くなる2年間でした。

大学院進学を目指すみなさんへ

大学院に進学したい方は、「何のために進学して、進学後何をやるのか」を明確に考えておくことをお勧めします。おそらくこのページを読んでいるということは、あなたはある程度大学院進学を見据えていて、もっと学びたい・極めたいという意欲が強いのだと思いますが、ただ学びたいという気持ちだけでは2年間持ちません。行けば何とかなるだろうではなく、大学院に来て何を成し遂げたいのかを自分自答して、有意義な2年間を送れるようにしてください。また大学院は何をやるにしても自分次第です。自分で行動すればするほど、この2年間でしかできない貴重な経験を享受することができ、逆に何もしなければただの大学5年生、6年生になってしまいます。実りある2年間にするためにも入学前から入学したつもりで鋭い嗅覚と行動力を持って過ごすことをお勧めします。まだ大学院進学に迷っている人は、たくさん迷ってたくさん考えてください。前述のとおり大学院はなんとなくで来る場所ではありません。ただ一つ言えることは、大学院進学という選択肢で迷えることは普通のことではなく、あなたが恵まれているということです。たいていの人は、選択の余地すらなく迷わず就職という選択をとるわけですが、あなたには選択のチャンスがあるわけです。将来に関わることでなかなか大変だとは思いますが、大学院進学で迷えるなんてなんて幸せなんだという気持ちをもってじっくり悩んでください。熟考の末の選択には後悔は付きまといません。最後に、皆さんが人生においてこの2年間は最も有意義だったと胸を張って言えるような大学院生活を送れることを祈っています。

 

 

※本記事は、2023年1月時点の内容です。