大学院

【究める vol.91】研究科委員長に聞く大学院での学びと研究⑥(中尾 秀博 文学研究科委員長)

2022年05月12日

中尾 秀博 文学研究科委員長


「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
第91回となる今回は、「研究科委員長に聞く大学院での学びと研究」というテーマで、大学院で学ぶ意義や学部との違い、研究の特徴などについて研究科委員長へインタビューした記事をお届けします。今回は文学研究科の中尾 秀博(なかお ひでひろ)委員長にお聞きしました。
受験を検討している方や大学院という場所に関心をお持ちの方は、ぜひお読みください。

大学院で学ぶ意義について

高校での勉強と大学(学部)での学修とが、連続しているところがありながらも、本質的に別の要素があることが実感できるとすれば、同様のことが学部での学修と大学院での研究との間でも起こるだろうということは、容易に想像できるのではないでしょうか。

大学受験の世界史の勉強が大学院での西洋史学の研究の基礎になることはもちろんですが、そもそも歴史を日本史と世界史とに二分する発想がどこに由来しているのか。そもそも世界における日本の地理的な位置づけが「東方」であるのに、政治信条的には「西側」とされているのはなぜなのか。

「東」や「西」ということばの語源にまで遡ることで理解できる事象があるかもしれませんし、語源とは別の「東方」や「西側」のイメージの変遷を、視覚的に検証することで浮き彫りにされてくる現象があるかもしれません。
このように「そもそも」を徹底的に追及したり、捉えがたい表層を丁寧に凝視したりすることにこそ大学院で学ぶ意義があるのです。

大学院での研究で求められること

【大学院で学ぶ意義】とも関連しますが、一つの分野・テーマを究めることが求められます。その研究成果がだれかとの相対比較であっても、比較の対象は学内の大学院生に留まらず、同じ分野・テーマを究めるべく日々研鑽を重ねている日本中・世界中の研究者たちと競うことになります。独自の分野・テーマの場合は、文字通りの「第一人者」となるべく研究を切り拓く覚悟が求められます。

学部と大学院の違い

学部生も大学院生も「高等教育機関で研究(=study)する人」という意味の  “student”なのですから、語源的には違いはありません(その意味では大学教員も「研究する人」という意味では“student”です)。

違いがあるとすれば「研究する」という行為の質と量の差にあるかもしれません。「研究」の精度や蓄積、深さや広さなどの違いと考えることができます。

与えられた課題について「研究する」ことの多い学部と課題を自ら設定する大学院とでは、その「研究」姿勢に根本的な違いがあるということになるでしょう。

大学院を目指すにあたって

実際に必要なのは、大学入試と同様の試験勉強です。具体的には傾向と対策に尽きるでしょう。面接で問われることがあるのは【大学院で学ぶ意義】で触れた「そもそも」について、です。このことについて予め自問しておくことは、実践的でもあり、本質的なことでもあります。健闘を祈ります!

 

※本記事は、2022年5月時点の内容です。