大学院

【究める vol.88】修了生の声(文学研究科 博士後期課程)

2022年05月02日

修了生の声(文学研究科 博士後期課程)

「立川団地」での夏まつりにて(2016年度)


大谷 晃(おおたに あきら)さん

2021年度に文学研究科 博士後期課程 社会学専攻を修了し
博士(社会学)を取得しました。

<博士論文タイトル>
現代における「地域コミュニティ」再編と担い手たちの「ローカルな実践」
――都営「立川団地自治会」における参与的行為調査

博士論文の内容について教えてください

博士論文では、現代において「地域コミュニティ」がいかにして再編されうるのかを大きなテーマとしました。1962年に建てられた立川市にある都営団地(「立川団地(仮名)」)の人びとが、1990年代半ばの団地建替え以降、いかにして既存の関係を継承しつつ、新たな関係を築いていったのかを検討しました。具体的な方法として、「立川団地」や周辺地域(砂川地域)に10年間通い、運動会や夏祭りといった自治会行事にスタッフとして参加するなど、日常の団地生活で起こる地域問題の解決を話し合う会議(「役員会」)への参加を続けました。実際の自治会運営のしくみを観察したり、インタビューや過去の資料をお借りしたりすることも含めて団地の人たちにお話を聞きました。

大学院時代の研究について

大学院時代の研究テーマは、地域社会学・都市社会学・政治社会学にまたがる領域として、「地域コミュニティ」に関するものでした。とりわけ、博士前期課程の際は「地域コミュニティの自治」を支える自治会の制度(しくみ)を中心に、博士後期課程の際には「地域コミュニティ」をより関係論的に捉え、いかにして関係が継承されたり、新たな関係がつくられたりしていくのかを検討していきました。対象は、立川市の都営「立川団地」の自治会を中心とした砂川地域、方法は10年間にわたる参与的行為調査(W.H.ホワイトが提示した、調査者と当事者が調査のプロセスや知見を共有する調査方法)でした。この調査は、所属ゼミにおける集団的な共同研究(「立川プロジェクト」)が出発点でした。

中央大学大学院への進学を決めた理由を教えてください

学部生の頃法学部政治学科に所属しており、地方自治や参加民主主義に漠然とした関心を持っておりました。学部2年生の頃に、FLP地域・公共マネジメントプログラムを履修し、現在の指導教授である新原道信先生に出会ったことがきっかけでした。先にも少し触れましたが、新原先生のゼミでの集団的な共同研究(「立川プロジェクト」)を通じて「立川団地」に出会い、団地での自治会活動のしくみと意義を、より時間をかけて深く理解したいと思ったことがきっかけでした。

ご自身にとって大学院はどのような場でしたか

私にとっての大学院という場を一言で言うならば、専門の研究者の集団ということに加え、ひとりひとりの人が織り成す「コミュニティ」でもありました。私は、博士前期課程では法学研究科政治学専攻に、博士後期課程では文学研究科社会学専攻に所属しておりました。いずれの専攻でも、先生方は「研究仲間」として扱って下さり、良い所も悪い所も真剣に指摘して下さり、相談にも真摯に乗ってくださいました。院生の仲間たちは、私にとって1つの「居場所」であり、長時間かけて細かなことから1つ1つ相談したり、雑談したりできる相手でした。また、大学院事務室や専攻の研究室の方々はそれを見守って下さいました。大学院では自らの研究を立て、学問をつくっていくことが最も重要なことですが、それを支えていたのは専門的知識だけでなく、周囲の人たちとの関わり・対話であったと強く感じています。

中央大学大学院へ進学してよかったことについて

既に書いたことですが、何よりも周りの人たち(先生方、院生の先輩や後輩の仲間たち、事務室の方々)が、支えになってくださったことです。特に、ゼミで何をどのようにやるのかという点から研究室で夜遅くまで議論したり、他ゼミとの交流も含め院生の自治組織(院生協議会)の論文中間報告会の企画等、研究以外でも1つの場をつくりあげる力を身につけることができました。

 

大学院時代の印象に残っている出来事について

多くの大切な瞬間があったのですが、最も印象的であったのはつい最近のことで、完成した博士論文をフィールドの方にお送りした時のことです。長年お世話になった方から、すぐに「お礼まで」と電話を頂き、新型コロナウイルスの影響で中止になっている団地の地域行事の今後のことも考えていきましょうと言葉を交わさせて頂きました。私の研究は、多くの人にお世話になり、集団的につくられてきたものだということを改めて実感した出来事でした。

修了後の進路について

2022年度からは、中央大学文学部で兼任講師をやらせて頂く予定です(担当科目:地域社会学/都市社会学、入門・社会)。

受験生へのメッセージ

大学院は何よりも、自由に考えることができる場です。博士前期課程の2年間、博士後期課程の3年間(私はなかなか博論が書けず6年間在籍しました)は終わってみればあっという間ですが、しかしこれだけ集中して自分の学問をつくるための時間は本当に貴重なものでした。自らの研究を立て、また進めていく中で、大変なこともたくさんありますが、これから大学院を受験される方、入学される方には、ぜひこの時間を楽しんで頂きたいなと思います。

 

※この記事は、2022年3月時点の内容です。

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