文学研究科 博士後期課程 心理学専攻に在籍している越智 隆太さんが、12月9日(木)~10日(金)に実施された「第45回日本高次脳機能障害学会学術総会」にて、優秀ポスター賞を受賞しました。発表した研究は、緑川 晶教授(文学部)、浜本 加奈子さん(本学大学院 文学研究科 博士前期課程修了生)と共同で実施したものです。
本記事では、越智さんにお寄せいただいた受賞にあたってのメッセージをお届けします。
<受賞の詳細>
★第45回日本高次脳機能障害学会学術総会
【開催期間】2021年12月9日(木)~10日(金)
【会場】 ビッグパレットふくしま(福島県郡山市)
ハイブリッド開催(現地会場+Web)
【受賞名】優秀ポスター賞
【受賞ポスタータイトル】高次脳機能障害および認知症介護者における心理的負担感の比較検討
【発表者】越智隆太、浜本加奈子、緑川晶(敬称略)
受賞にあたってのメッセージ
今回発表させていただいた研究は、緑川晶先生(文学部)、浜本加奈子さん(大学院文学研究科博士前期課程修了生)と共同で実施したもので、高次脳機能障害者と認知症者の介護者における心理的負担感について、検討をいたしました。
本邦では間接的な比較により、高次脳機能障害者と認知症者の介護者の負担感は同程度であるとされています。一方で、海外では直接的な比較からむしろ高次脳機能障害者の介護者において負担感が高くなりやすいと指摘されていますが、このような直接比較による検討は本邦ではなされていませんでした。そこで、本研究では、両者の直接比較による負担感の検討を目的に介護者へのアンケート調査を実施しました。
研究の結果、両介護者の半数以上が負担感の高い状態にあった一方で、両者の間に明確な負担感の差はみられませんでした。しかしながら、認知症に比べ、高次脳機能障害では、障害当事者の認知機能障害や自立度の低下が重度であるほど、介護者の負担感は高くなることが明らかになりました。また、高次脳機能障害者の介護者は、介護者自身だけでなく障害当事者に対しても、心理相談を始めとする支援を求めていることが明らかになりました。
高次脳機能障害では認知症に比べ親が介護を担っている割合が高く、「親亡き後」における障害当事者の生活支援が問題となっています。本研究により、両介護者の負担感が同程度である場合でも、介護者を取り巻く背景の違いによって負担感の質的な違いがみられることが想定され、それぞれ異なった支援が必要であると示唆されました。