大学院

【究める vol.71】活躍する修了生(アーキビスト③) 篠崎 佑太さん(文学研究科)

2021年12月22日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
今回は、アーキビストとして活躍する修了生の3人目として、篠崎佑太さんにお話を伺いました。大学院での学び・研究と現在のアーキビストとしての業務との関わりや、大学院進学を目指すみなさんへのメッセージ等を掲載しています。

篠崎 佑太(しのざき ゆうた)さん

●文学研究科 博士前期課程 2012年度修了
●文学研究科 博士後期課程 2017年度修了

●現在:宮内庁宮内公文書館 勤務

<研究テーマ>
近世後期から幕末期における幕藩関係の変容を大名家の格式や幕府の儀礼の面から研究しています。職場では、公文書を用いて近代の宮内省の業務に関する研究をしています。

<アーキビストとは>

アーキビスト(Archivist)は、文書館などで働く記録管理の専門職のことです。
前近代の古文書(こもんじょ)から現代のデジタルデータまで、今日に伝わってきた記録は、将来へ継承すべき重要な情報資源だと認識され、保存されてきました。こうした記録は、後世へ伝えるにあたってさまざまな課題を抱えているほか、記録の保存・活用に社会的な注目が集まっています。アーキビストには、文書館における専門的な業務で中心的な役割を果たすことはもちろん、行政組織や企業、研究機関などで幅広く活躍することも期待されています。

アーキビストの詳細や本学大学院でのアーキビスト養成プログラムについては、こちらをご覧ください。

アーキビストとはどのような仕事か教えてください。

アーキビストの仕事は、まず所属するその組織を知ることから始まります。文書の流れを知ることは、組織の変遷を知ることと言っても過言ではありません。私の勤務する宮内公文書館では、明治期以降の宮内省・宮内府・宮内庁が作成・取得した公文書を所蔵しています。宮内省は、明治2年の設置から現在までに宮内府・宮内庁と2回の変遷があり、内部の部局や職掌はさらに多く改正されています。各時期において宮内省(宮内府・宮内庁)がどのような業務をおこない判断をしてきたのか、現在の私たちが実証し回顧するための資料(公文書)を保存・管理し、組織内外の利用に供することがアーキビストの仕事です。そうした組織の歴史、換言すれば自己認識や組織への帰属意識を支えることがアーキビストの社会的な役割といえます。ここでは宮内公文書館を例としましたが、組織は省庁に限らず自治体や企業、地域社会などに置き換えることもできると思います。

そうしたうえで、1つの専門分野だけで成り立たない点がアーキビストの魅力であり、難しさであるといえます。アーキビストの仕事は、文書の評価・選別、保存・管理、利用・普及など多岐に及びます。私の場合は、歴史学(日本史学)を専攻するなかで学んだ資料の整理方法や取り扱い方、古文書の調査研究能力などを活かし、日々の仕事に取り組んでいます。例えば、公文書の調査研究を進め、利用・普及業務として一般の方にもわかりやすくその魅力を伝えるために展示会を企画・運営したり、様々な目的を持って公文書の閲覧に来た方へ適切な資料を案内することが主な仕事です。しかし、アーキビストに求められる能力は、歴史学に関わることだけではありません。例えば、昨今多くの公文書館が取り組んでいる資料のデジタル化やオンラインデータベースでの目録公開、公文書を取りまく法律の解釈、これらを実践するためには情報学や法学の知識も必要です。多くの専門性を一人で担うことは難しいですが、さまざまな専門性を持つアーキビストや職員が協力しあって公文書館の運営を支えています。アーキビストの仕事は、自分の専門性を活かしつつ近接する専門分野にも携われる点が魅力の1つです。こうした多様な専門性の集合がアーキビストの仕事ということもできるでしょう。

大学院での研究活動は、どのようにいまの仕事に役にたっていますか。

先に述べた通り、大学院へ進学後に携わった史料調査での経験や古文書を読む力を付けられたことは、現在までとても仕事の役に立っています。ゼミでの研究報告を通じて、自分の主張を整理して実証的に説明する力を身に付けられたことも、仕事の一助になっています。

また、中央大学大学院では記録史料学の授業があり、アーカイブズ学の基本を学ぶことができました。それだけでなく、国文学研究資料館主催のアーカイブズカレッジに単位互換制度で参加出来たことは、私がアーカイブズの世界に触れるきっかけにもなり、貴重な機会であったと思います。

受験生へのメッセージ

私の進学した文学研究科日本史学専攻には、古代から近現代まで各時代に専門の教員がおり、進学後も研究に幅広い選択肢を与えてくれます。どの授業でも実証史学が重んじられており、くずし字の読解や史料の解釈はもちろん、公文書館や資料館などの現場への見学や史料調査を通して史料の取り扱い方まで学ぶことができました。

受験生の皆さんは、ぜひ些細なことでも意欲的に取り組んでもらいたいと思います。自分の専門を見定めて突き詰めていくことは、もちろん研究の醍醐味です。一方で、アーキビストには多様な専門性が求められることも事実です。一見、自身の関心とは関係ないと思った事柄でも数年後に自分の研究と重なってきたり、次の研究のきっかけになることは多くあります。それを無駄と思わず、興味を持って取り組んでもらいたいと思います。中央大学大学院には、そうした皆さんの関心を受け入れてくれる環境が整えられていると思います。

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