大学院

【究める vol.55】活躍する修了生 西出 佳詩子さん(文学研究科 博士後期課程 2016年度修了)

2021年06月24日

「究める」では、大学院に関わる人や活動についてご紹介しています。
今回は、2016年度に文学研究科 博士後期課程を修了し、現在は大阪大学大学院言語文化研究科で専任教員として勤務されている、西出 佳詩子さんにお話を伺いました。

博士学位授与式にて

 西出 佳詩子(にしで よしこ)さんは、

2016年度に文学研究科 博士後期課程 独文学専攻を修了し、博士(文学)を取得しました。

これまで、中央大学杉並高等学校や早稲田大学高等学院、中央大学ほか複数の大学にて兼任講師として勤務されたのち、現在は大阪大学大学院言語文化研究科で専任講師として勤務されています。

本記事では、ご自身の研究テーマや大学院生時代の過ごし方をはじめ、大学教員としての日々の様子について伺いました。大学院進学を目指す受験生へのメッセージも掲載しています。大学院に関心のある方や研究者を目指している方は、ぜひご覧ください!

研究テーマについて

外国語学習者の読みの諸相に関心があります。博士課程在籍時から、中級程度のドイツ語能力を持つ学習者を対象に、要約文課題や重要度判定課題、発話プロトコル法などの方法で得たデータを手がかりに、テクストの重要な情報に読み手はどの程度注目しているのか、どのような言語指標を読み手は注目しているのか、あるいは誤って把握してしまうのか、学習者の読みの諸相を明らかにし、得られた知見をドイツ語の読解指導の場に活かしています。

現在は、ドイツ語初級、初中級程度の学習者を対象に読みのストラテジーを明示的に示すことによって学習にどのような効果が期待されるか質的調査・研究を行っています。加えて、博士論文の調査対象に据えたドイツ語母語話者の読みから、ドイツにおける国語教育、言語教育、さらには読むことと書くことの相互作用についても関心があります。これらについては、まずは文献調査を通して研究を重ねていきたいと思っています。

大学院で過ごした日々について

比較的長い時間を院生生活に費やしました。テクスト言語学をさらに深く学びたいと意気込み、他大学院単位互換制度も利用して授業を履修するなど、意欲的にスタートをきったものの、研究が思うように進まず、悩み考え込む日々も多々ありました。そうした中、高等学校での自らのドイツ語学習を思い出し、ドイツ語の教員免許状取得を一目標とし、博士前期と後期課程にまたがって教職課程を履修しました。ドイツ語での教育実習を経て免許取得後すぐに高等学校でドイツ語を教える機会に恵まれました。他にも、学部生向けの授業のサポートやドイツ語教員養成・研修講座の受講を通じて、学習者の学びのプロセスに興味関心を持ち、言語的なデータを手がかりに地道に分析・考察する面白さを体感しました。

博士後期課程では専攻内の研究発表会(コロキウム)をはじめ、外部の研究会や学会の場で研究発表を行いました。外部での研究発表は緊張しましたが、自分の研究に対し貴重な意見を頂くことができます。当時コメントやアドバイスを頂いた先生方とは今でも連絡をとっています。

このように、二足の草鞋を履きながらの論文執筆は心身ともに辛い時も多々あり、博士課程の在籍期間も長期に渡りましたが、林明子先生の熱心な御指導のもと、諦めずに一歩一歩歩みを進めたことが非常に重要であったと思います。
 

研究者となり、大学教員として過ごす現在について

◆Covid-19が与えた授業への影響
2020年度はCovid-19の影響で授業がオンライン形式に変わったことで、これまで当たり前のように行ってきた対面授業とは大きく異なる運営を迫られました。対面授業とオンライン授業それぞれの長所・短所は何か、根本的な所から見つめ直し、1年が経過した現在もどうしたらオンライン形式で学生の学びをサポートできるのか、試行錯誤の日々が続いています。パンデミック前はICT教育を実践していませんでしたが、この度の事態で様々な学習支援ツールについて随分勉強しました。

例えば、ロイロノート・スクールといった授業支援クラウドをはじめ、既習事項の復習や問題演習、単語や語彙学習に適したBookWidgets、Kahoot!、Quizletといったアプリ、コミュニケーション活動の成果を即座に共有できるFlipgrid などが挙げられます。今は、各ツールの特徴をうまく使い分けて授業で活用しています。

◆現在の取り組みや今後に向けて
今年度の授業では、日本とドイツの大学生同士による日独交流の一つとして、自己紹介、私のふるさと、食文化といったテーマでドイツ語と日本語の2言語併用による紹介ビデオを各自で作成、投稿し、お互いにコメントを寄せあったりしています。この活動はドイツ語と日本語を使って動画を作成することだけが学習目標なのではなく、ドイツ側のビデオを見ることによって、英語以外の言語を複数操ることができる学生が多くいること、複数の学術分野を専攻していること、様々な背景をもった学生がいることといった異文化への理解や複言語への気づきをもたらすきっかけにもなっています。

今後パンデミックが収束し、対面授業に戻ったとしても、今回のオンライン化に伴って得た教訓や経験を積極的に応用していきたいと考えています。
 

研究の道を目指すみなさんへのメッセージ

関心のある分野をより深く究めてみたいという情熱が研究を推進する動力になると思います。しかし研究を進めていくには経済的な面も考慮に入れる必要があることと思います。私は民間企業の給付型奨学金制度に応募し受給していました。日本学術振興会の特別研究員制度も重要な選択肢として挙げられるでしょう。

上述の通り、私は博士課程修了後も複数の教育機関で授業を受け持っており、文献資料を深読みするための時間を捻出するのに苦労しました。しかし就職するにあたり、地道に研究活動を続け、研究ノートや論文投稿、学会発表といった場で何らかの形にまとめていくと良いと思います。また、学会主催のゼミナールなどにも参加し、研鑽を積むことも大事ではないかと思います。

 

※本記事の内容は、2021年6月現在のものです。

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