大学院

【究める Vol.25】修了生の声③

2020年06月01日

牧野由華さん(経済研究科博士前期課程2019年度修了)

牧野 由華さん

◎大学院時代の研究内容

 「日本版DMOの役割と課題に関する考察」をテーマに研究しました。人口減少の影響による地域経済の衰退が深刻な日本において、地域経済の活性化は極めて重要です。その成長戦略の1つである観光による地方創生の推進には、観光地域を運営する観光振興組織の存在が欠かせません。その中でも、近年地域のまとめ役として「日本版DMO」が注目を集める一方、その存在の形態と、存在することによる効果が不明確です。そこで、日本版DMOの観光振興組織としてのあり方を明らかにするべく、実態調査を用いて研究しました。

大学院生活を振り返って 

 卒業間近まで迷った進学でしたが、学部時代の「中国人観光客の消費動向調査」を応用し、大学院では「観光による地方創生」を焦点に研究しました。 大学院は、最も学生自身の「主体性」が求められる環境であると考えています。その一例に授業スタイルを挙げると、学部時代は講義を通じて情報が得られる為、受け身の姿勢でも単位が取得できます。一方、大学院では、講義はあくまでも研究の為の情報の一つにすぎません。加えて、研究は自ら行動しなければ進まないのです。この「主体性」が重視される環境で2年間、全力で行動した事で、自分なりの結論を導き出すことができたと思っています。 研究にあたり、最も苦労した事は情報収集です。私の研究テーマであるDMOは、日本では2015年に設立された組織です。その為、注目されている一方、既存の文献はさほど多くありません。そこで、知見を広げる為DMOに限らず、組織論や経営論、観光経済学、地方創生論といった多様な文献を100本以上読み、DMOに関連づけられそうな情報を集めました。また、インターネット上で得られる情報には限りがあったうえ、既存研究では、観光庁を参照とする研究が多い一方で、DMOの実態を踏まえた研究は極めて少なかったのです。そこで、情報がないのであれば自分の足で稼ごうと考え、インバウンド誘致に注力している九州に焦点を当て、福岡県や宮崎県といった九州各地の観光協会を一人で訪問し、ヒアリング調査を行ないました。その結果、DMOは「地域のまとめ役としての役割が期待されており、各地で連携構造が整備されつつある一方、観光振興そのものが縦割りである為横割りの連携がうまくいっていない」という実態を明らかにすることができました。大学院修了後も、目的達成の為に、常に考え、行動していきたいです。

 

受験生へ一言

 大学院は、自分の行動次第でどこまでも切り開ける場であると考えています。さらに、専門家から直接ご指導頂ける為、学部時代以上に様々な観点から考察することができます。時間は有限!後悔のない選択を!

武田作郁さん(総合政策研究科博士前期課程2019年度修了)

2019年度中央大学大学院修士学位授与式

◎大学院時代の研究内容

 東京オリンピックをひかえ、あるいは健康増進目的から、国民のスポーツ熱は高まってきています。私はそうしたスポーツ活動の下支えとなるべき「安全」「スポーツリスクマネジメント」を研究のテーマとしています。修士論文においては、スノースポーツの安全に関して、経営、実践、法の3つの視点から、スキー場管理者(事業者)の安全確保のあり方について考察しました。

◎大学院生活を振り返って

 中央大学法学部を卒業後、同大学保健体育研究所において研究に携わる機会を得たこと、またスポーツの指導を行う中で現場での問題点を目の当たりにしたことが、研究者を志し、再び白門をくぐるきっかけとなりました。

  しかし、いざ始めてみると困難なことも多く、とくに仕事と履修や研究活動を両立するため、時間のやりくりには苦労しました。先生からは、「常に考え続けることが研究だ」というアドバイスをいただいていたので、限られた時間を無駄にせず研究活動を続けるために、日常の中に思考のヒントを探して、考え続けることを意識しました。

  修士論文作成の上では、アカデミックな論理展開の仕方や文章の書き方も苦労した点です。専門外(他分野)の方にもわかりやすい、もっと言えば学問を志していない方にもわかりやすい文章を書くには、明快な論理展開と丁寧かつ思いやりのある文章を書くことが必要でした。先生には、何度も何度も、修士論文の提出期限の直前まで粘り強くご指導いただきました。そして、自分の文章に他人の目が入ることの大切さを学ぶとともに、自らの研究を客観的に見つめなおす姿勢を養うことができました。

◎修了後の進路について

 修了後は、博士後期課程への進学と、大学で非常勤教員として教鞭をとることが決定しています。至らぬ点が多い私を根気強くご指導くださった先生方へ心から感謝しています。大学院生活で私を支えてくれたのは、そうした日々実感する人の温かさや人脈の大切さでした。私が研究対象として向き合うのは、スポーツの安全に関わる「モノ」や「コト」なわけですが、いつもそこには「ひと」がいることを感じながら、人と向き合った、研究活動、学生指導をしていきたいと思います。

◎受験生へ一言

 総合政策研究科では、自らの専門分野だけではなく、多彩な分野の教授陣、カリキュラムのもとで学びを深めることができます。こうした環境で得られる、より広く、より深い知識や考察は、研究領域や研究手法にとらわれることのない「学際的なものの見方」を育みます。自らの研究を客観的に批判する能力と、多様化し、複雑化する社会問題に対する、柔軟かつ実践的な問題解決能力を鍛えながら、「学びのとき」を楽しんでください。きっと新たな発見があると思いますよ。