社会・地域貢献

教養番組「知の回廊」2012年度

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(一部、権利問題等により、ダイジェスト版のみを公開している番組もございます)。

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「サイバー法という新たな法律学~
インターネットの自由と法規制~」

情報化社会と呼ばれて久しい現在。私たちの身の回りには、インターネットを中心とした、さまざまなサービスやビジネスがあふれています。Eメールによる連絡から、電子商取引、広告、ブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、私達の暮らしは、もはやネットワークと切り離して考えることはできません。 
一方でこうしたネットワークの世界では、迷惑メールや詐欺、著作権侵害、個人情報の流出、サイバーテロなど、数え切れないほどのトラブルや問題を抱えていることも事実です。 
ネットワークの世界のことを『サイバースペース』とも言いますが、いま、このサイバースペースにおいても、現実の社会と同様に、個人の人権を守り、ネットワークの発展を決して阻害することなく、様々な問題解決を目指した、法整備が必要とされています。 
インターネットの自由を制限する法規制は、どこまで及ぼされるべきでしょうか? 
ネットワーク社会をとりまく現状とその課題、未来への可能性を見据えた、サイバースペースの法整備を考えます。

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「古代ローマの裁判」

イタリア南部のカンパニア州にある『エルコラーノ』遺跡。 
この遺跡は、古代ローマ時代『ヘルクラネウム』と呼ばれ、紀元79年、有名なポンペイの街と共に、ヴェスヴィオ火山の噴火によって、地中に埋もれてしまった、悲劇の街です。 
1938年、この遺跡の住居跡から、古代ローマ時代の裁判記録を記した書字板が発見されました。記録によると、この裁判の原告はペトロニア・ユスタという女性で、母親は元奴隷のウィターリス。当時のローマは、奴隷制度を基盤とした階級社会であり、自由人の子は自由人、奴隷の子は奴隷であるとされていました。しかし、ユスタの母ウィターリスは元奴隷であり、母親がどの時点で奴隷から解放されたのかが不明であったため、ユスタ自身が、生まれながらの自由人であったのか、または解放された奴隷であるのかが争われたのです。
現代日本の法制度の源流とも言える、ローマ法を中心に、当時の裁判の様子を再現しながら、古代ローマの世界を見てみましょう。

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「『百人一首』を味読する」

鎌倉時代、歌人である藤原定家が、京都の小倉山の山荘で選んだという『小倉百人一首』。 
奈良時代から鎌倉時代までの、百人の歌人の優れた和歌を、代々の勅撰和歌集から一首ずつ選び、ほぼ年代順に並べた秀歌撰で、山荘の襖に飾る色紙としてしたためたものが原型とされ、恋や四季の風情を、優雅に、洗練された調子で詠んだ歌が、多く集められています。 
室町時代から、歌道の入門書として一般に知られるようになり、江戸時代以降は絵の入った歌かるたとして、一般教養書や遊びのひとつとしても庶民に普及し、現在でも、日本人には大変なじみ深い和歌集として、広く愛されています。 
今回は、「『百人一首』を味読する」と題して、歌人、藤原定家ゆかりの地、京都を歩きながら、小倉百人一首ができるまでの時代的背景、そして歌のいくつかを、深く味わいながら紹介します。

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「エコツーリズムの光と影」

1990年代前半から、新しいタイプの観光産業として、エコツーリズムが注目を集めるようになりました。エコツーリズムとは、自然や歴史・文化など、地域固有の資源を活かした、持続可能な観光事業のことを指しますが、単なる観光旅行とは異なり、自然環境や文化の保全に配慮しながら地域を学習する、体験型の旅行として人気が高まり、近年、まちづくりの一貫として、多くの地域でエコツーリズムに取り組む活動が進められるようになっています。 
一方で観光開発の推進は、地域に対して様々な影響を及ぼします。観光客の増加、ゴミや渋滞、環境破壊など、その地域への負荷が増大しますし、その逆に、観光客が訪れなければ経済効果が得られず、地域振興や環境保全ができなくなる恐れもあります。このような地域の環境や文化の保全をもとに、観光発展、地域振興を、バランスよく進めていくことがエコツーリズムに他なりません。 
今回は、エコツーリズムの光と影に焦点を当て、経済学的な視点から、観光の発展と環境問題、まちづくりの現状と課題について考えます。

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「会計士のおしごと」

近年、会計士を目指す人々の「人余り」状態が続いています。
公認会計士は、難しい試験に合格したからと言って、すぐになれるものではありません。監査法人に勤めて、一定期間の実務経験を積まなければ資格が取得できず、非常に長く険しい道を通らなければならないのです。にも関わらず、現在、会計士を希望する人々のおよそ半数は就職できないと言われています。これは主に、長期化する日本経済の停滞や、公認会計士制度の構造的な問題などが指摘されているのですが、医師や弁護士と並ぶ、専門的な国家資格が必要とされる会計士が、実際にはどのような仕事をしているのか? というその実態について、実はあまり良く知られていないことが問題なのではないでしょうか?番組では、会計士の仕事を紹介するとともに、会計の魅力について掘り下げてきます。

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「被災地域と協創するエコツーリズム」

数百年に1度といわれる、東日本大震災から1年以上が過ぎました。これまで1万5千人を超える方が亡くなり、今でも3千人近くが行方不明となっています。中央大学でも、早くから被災地への支援活動に取り組み、これまでに多くの学生と教員がさまざまな活動を行っています。なかでも、理工学部 都市環境学科の谷下雅義先生が率いるゼミナールでは、震災直後から岩手県の陸前高田市を訪れ、「自分たちにできることは何か?」を模索しながら、エコツーリズムを通して、被災地域の再生を目指す活動を継続して行っています。 
エコツーリズムとは、自然や歴史・文化など、地域固有の資源を生かした、持続可能な観光事業のことを指しますが、谷下ゼミでは、被災地域の現状を学び、地域の人々とのふれあいを通じて、より地元の特性を生かしたエコツーリズムを探求することで、未来につながる復興支援を果たそうと考えています。 
地域貢献・社会貢献として、大学ができることは何でしょうか?地元に学ぶ姿勢を忘れず、地域の人々の創造力やエネルギーを引き出せるような支援活動とは、どのようなものでしょうか?今回の番組では、谷下ゼミによる宮城県南三陸町での活動から、被災地域と創るエコツーリズムについて紹介します。