教養番組「知の回廊」

教養番組『知の回廊』第131回「日本の醤油業界のダイナミック・ケイパビリティーに関する考察 ―和歌山湯浅からはじまる多様性の強さ―」

2020年01月20日

 2020年1月放送の番組は、国際経営学部 野間口隆郎教授監修 「日本の醤油業界のダイナミック・ケイパビリティ―に関する考察  ―和歌山湯浅からはじまる多様性の強さ―」です。

 醤油という産業の持つダイナミック・ケイパビリティ―(※)に焦点を合わせ、野間口教授の研究の専門分野である経営戦略の最先端の理論により、日本の醤油業界を分析しています。

※ダイナミック・ケイパビリティーとは
組織が環境の変化に対応して既存の資産、資源、知識などを再構成し、相互に組み合わせて持続的な競争優位をつくり上げる能力です。オープンに他企業の資産や知識も巻き込んでオーケストラのように構成する能力を含みます。

番組内容

 日本の醤油業界も現代のビジネスのあり方について模索を続けています。これまでの伝統を継承しつつ、時代と需要の変化に柔軟に対応していき、⾷材をはじめとする国の文化に寄り添い、多様化を探る。その取り組み・事例について紹介します。

 中国に由来する醤油は、鎌倉時代に禅僧が湯浅(和歌山)に持ち帰りました。これは、殺生のできない僧のための精進料理を少しでも美味しいものにするためでした。その醤油は湯浅から日本の各地に伝わり、それぞれの地域に合わせて進化を遂げています。
 この進化の一部がグローバル化です。江戸という巨大都市で育った濃い口醤油はグローバル化を遂げましたが、一方では、日本各地には1400社の地元の醤油蔵元があります。その中でも、日本における醤油発祥の地である湯浅には、鎌倉時代の伝統の製法に戻ることでインバウンドの外国人観光客を取り込み成功している企業があります。
 そのような、環境の変化に素早く適応して持続的な経営を行うことのできる経営戦略としてのダイナミック・ケイパビリティ―に関して考察します。

監修のポイント

 ローカル化とグローバル化はダイナミック・ケイパビリティーの観点からみると別物ではなく、本質的には同質のものであると理解されます。
 グローバル化は自らを知ることから始まります。醤油はユーザーイノベーションによる製品です。たとえば、照り焼き醤油はユーザーが味醂と酒と砂糖を好みや食材に合わせて調合することで完成します。このように、醤油のもつ不完全性がダイナミック・ケイパビリティ―を生み出しているのです。
 この番組では、身近な製品である「醤油」を題材に、魅力的な食文化もあわせて紹介しており、楽しく視聴いただける番組になっています。