バイオメタンの地域内への普及に向けて

星陵高等学校 星陵高等学校バイオメタン・施設班(仙石 颯季)

(1)現在の二酸化炭素排出量
 全国地球温暖化防止推進センターによると、日本は世界で五番目に二酸化炭素を排出している国であり、全世界における二酸化炭素排出量の割合は3.5%である。各部門別にみていくと、産業部門が最も多くの二酸化炭素を排出し、それに次いで運輸、業務、家庭部門が多いという結果になっている。しかし、産業部門は1990年から排出量が減少しているのに対し、業務その他部門と家庭部門では1990年と比較すると、排出量は増加傾向にあることが分かる。
 IPCC 第5次報告書によれば、人間活動が及ぼす温暖化への影響についての評価は、「可能性が極めて高い」(95%以上) 温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖 化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。とされており、人間の活動が地球温暖化に影響を与えていることはほぼ間違いない。地球温暖化が進行すると、異常気象、気温上昇による干ばつでの食糧不足、水不足、生態系への影響が起こると考えられている。

(2)「バイオメタン」とは
 ここで、私は地球温暖化の進行を抑えるために「バイオメタン」の利用を提案する。バイオメタンとは生ごみや家畜の糞尿といった有機性廃棄物を微生物によって分解・発酵させることによって発生するガスのことである。生ごみを原料とすることで、生ごみの焼却処理が不要になるため、その時排出されていた二酸化炭素が排出されなくなり、二酸化炭素の削減となる。また、バイオメタン発生時の残液は「消化液」と呼ばれ、液体肥料として利用することができる。バイオメタンの大きなメリットは3つある。1つ目は天候に左右されずに安定してガスを供給できることだ。一般的な再生可能エネルギーは雨や風などに影響されて、供給電力が変動しがちであるが、バイオメタンはその心配はない。よって、二酸化炭素排出量がバイオメタン同様に少ないとされる再生可能エネルギーよりも効率的にエネルギーを生み出すことが可能である。2つ目は上で述べたように、バイオメタン生成時の残液が液体肥料として使用できることだ。エネルギー生成に使用したものすべてを無駄なく使用することができる。3つ目はバイオメタンが「カーボンニュートラル」なエネルギーであることだ。この場合、メタンガスを燃焼したときに排出される二酸化炭素の排出量とバイオメタンの原料になっている植物が成長する過程で光合成で吸収した二酸化炭素の量が同じであることを示す。バイオメタンはこの性質を持っているために、二酸化炭素排出による環境影響が少ないと言える。
 生成された後のバイオメタンは、熱源や電力として使用することが可能である。(1)で述べたように家庭での二酸化炭素排出量は増加傾向にあるため、それを食い止める新しい手段となるだろう。

(3)小規模バイオメタン施設の運転
 私の高校の校内には小規模バイオメタン施設が設置されている。本校の小規模バイオメタン施設概要は表1のようになっている。

 私たちはこれまでにこの施設で投入する生ごみの量を変えて、運転を行った。
 全3期間での比較実験をした。それぞれの条件を表2に示す。

 結果として、期間1ではそれ以前の準備期間と同じドッグフードを使用したため、微生物がもともと原料になれており、安定したガスの生成が行われた。しかし、期間2では原料が突然生ごみに変化し、微生物が順応するのに時間がかかってしまったことで、発生したガスの量が減少してしまった。期間3は一日当たりのガス発生量の変動が大きかったが、発生量全体としてはほかの条件よりも多かった。また、ドッグフードで実験した時よりも生ごみで実験した時の方がメタン濃度が高いという結果になり、メタン濃度は投入する原料の内容にも影響することが分かった。

 また、この実験内で、期間1に3㎏×20週、期間2に6㎏×44週、期間3に9㎏×12週分の生ごみ、計約430㎏を投入した。本来この生ごみは焼却処理をされるが、今回は実験に利用したことで焼却処理が不要になる。NPO 法人 生ごみリサイクル全国ネットワークによると、標準生ごみ1トンを、トラックによる収集と運搬、焼却の従来の方法で処理すると2,051.3㎏のCO2 が排出されるので、1㎏あたりだと、約2㎏の二酸化炭素が発生する。よって、今回の実験内で2㎏×430㎏=860㎏の二酸化炭素を削減したことになる。

(4)小規模バイオメタン施設の地域への普及
 最終的にはバイオメタンを世界的に広げていきたいが、はじめから普及させていくことは難しいので、まずは私の学校がある富士宮市に普及させることから始めたい。そこで、バイオメタンの認知度に関するアンケートを実施した。1.バイオメタンについて知っているか 2.バイオメタン生成に使う生ごみ回収に協力したいか 3.バイオメタンに興味があるか という3つの質問をしたところ、結果は図1~3のようになった。バイオメタンの認知度は決して高いとは言えなかったが、生ごみ回収に積極的な人やバイオメタンに興味を持っている人がとても多いことから、地域でバイオメタンシステムを普及させるには地域内での広報活動を通して、バイオメタンを知ってもらうことが必要であると考えた。

 また、生ごみ回収を行ったときに1日でどのくらいの生ごみが得られそうか調べるため、富士宮市で排出される生ごみの量を調査した。富士宮市一般廃棄物処理基本計画によると、家庭系ごみ、事業系ごみ合計で39945.46tの可燃ごみが一年間で排出されていることが分かった。そのうち生ごみは約13%を占めているので、5192t排出されている。これを一日当たりに直すと約14.2tもの生ごみが排出されていることが分かる。上記のアンケートより、92%の方が生ごみを提供してくれると仮定した場合、約13tの生ごみが集まる。毎日13tの生ごみをバイオメタン施設で処理する場合、小規模バイオメタン施設の日処理量が6㎏より2000台近くの小規模バイオメタン施設が必要となり、現実的に不可能な台数になるが、もし、実現した場合、市内だけで約27000㎏の二酸化炭素を毎日削減することができる。
 実現させるためには、大規模バイオメタン施設を設置するか、小規模バイオメタンシステムの高効率化が必須となる。

(5)まとめ
 以上のことより、バイオメタンは生ごみ処理時の二酸化炭素を削減することで地球温暖化の進行を防止し、環境問題の改善に貢献することができる上、バイオメタン通じてSDGsの7番であるエネルギー問題や13番の気候変動に関する問題、14番や15番の生態系の問題の解決に貢献することができるだろう。しかしながら、地域住民の認知度、バイオメタン施設そのものの効率の問題、費用の問題等問題が山積みであるため、今すぐの実現は難しいし、実現したとしても、生ごみの焼却処理が完全になくなる可能性はかなり低いだろう。
 ただ私たちの最終目標として、富士宮市で「資源循環型社会」を実現させることである。資源循環型社会とは、生ごみから作られたバイオメタンを災害時や山小屋などで使い、消化液を畑等で使用し、そこで出た生ごみを再度バイオメタン生成に使うというものである。この社会が作られることにより、排出された生ごみを焼却処理する必要がなくなり、二酸化炭素の削減につながる。
 今後はこの社会の実現のために、さらなる小規模バイオメタン施設の高効率化と地域への広報普及活動を行っていく。

◆参考文献

  • 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
    https://www.jccca.org/trend_japan/state/
  • WWFジャパン「地球温暖化が進むとどうなる?」
    https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1028.html
  • IPCC 第5次評価報告書の概要―第1作業部会(自然科学的根拠)―
    https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
  • NPO 法人 生ごみリサイクル全国ネットワーク
    「標準生ごみ1トンを焼却した場合のCO2 排出量」
    http://grnj1437.sakura.ne.jp/index1/1tonsokyakuco2.pdf
  • 富士宮市一般廃棄物処理基本計画(平成24年度~平成33年度)
    http://www.city.fujinomiya.lg.jp/municipal_government/llti2b0000001isd-att/llti2b000000428h.pdf
  • 平成31年世帯人口一覧表
    http://www.city.fujinomiya.lg.jp/municipal_government/llti2b0000000z0u-att/llti2b00000044kd.pdf
  • 外務省「JAPAN SDGs Action Platform」
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html