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【2013日越国際シンポジウム】生態経済研究所と「生態村」ー生態経済研究所 ホアン・ラン・アイン研究員

(司会:松谷研究員):次の報告者は、生態経済研究所のアイン研究員による報告です。生態経済研究所(Institute of Ecological Economy;略称EcoEco)は、国連の機関や多様な国際機関と連携しながらベトナムにおいて様々な「生態村(エコビレッジ)」の開発に取り組んでいるという非政府組織(NGO:Non-Governmental Organizations)であります。そちらでご活躍されている研究員のアインさんから、本日は「生態経済研究所と生態村」の関係についてご報告いただきたいと思います。それではよろしくお願いします。

(アイン研究員):皆様こんにちは。ただいま松谷先生から私の紹介をしていただきまして感謝いたします。緒方教授から、私の出身母体であります生態経済研究所(EcoEco)に連絡があり、私たちの研究所が進めておりますベトナムにおける「生態村」についての発表資料をまとめてほしいという依頼がありましたので、本日の配布資料に英文で用意させていただきました。現状では、ベトナムの「生態村」のすべてのリストを網羅したもので、かなりしっかりしたものが出来上がったと自負しております。ベトナムのどのような地域に「生態村」が形成されているか、具体的に興味を持っていただけるかと思います。

まず、私たち「生態経済研究所」がどのような組織なのかというところから簡単にご説明を申し上げたいと思います。私たちは略称で「EcoEco(エコエコ)」と呼んでおりますが、正式名称は「Institutional of Ecological Economy」でして、日本語で「生態経済研究所」ということになると思います。ベトナムにおける最初の非政府組織(NGO)であり、1990年にVietnam Union for Science Association (VUSTA)のもと設立されました。以下ではエコエコと略称で呼びますが、ベトナムの農村組織に加盟しております。まず1995年にIUCNに、1996年にInform Asiaに、そして2009年にGCBNに加盟しました。またベトナム国内におきましても、エコエコはVietnam Press Association というプレス連盟にも加盟しており、『エコロジカル・エコノミー・ジャーナル(生態経済ジャーナル)』は1995年以来、四半期毎に全国に配布されております。

こちらには、簡単にエコエコの組織図を示しております。冒頭で申し上げました通り、エコエコはVietnam Union for Science Association(VUSTA)のもとに設立されております。そのVUSTAがそれぞれの組織とどのような関係があるかを示しています。

次に、エコエコが何を行っているのかという説明に入りたいと思います。私たちは主に二つのことを行っております。そのうちの一つは社会経済問題を研究し、そして経済と技術管理においての科学的先進性を適用し、地方の暮らしや環境の改善をする取り組みを指導しています。そして二つ目は、脆弱な生態系の保存・保護をするため生態学的な知識や技術を広め、そしてまた地域コミュニティーの能力を増強する取り組みを行っています。つまり、地域コミュニティーの持つ力・能力を増強していくわけですから、ここには教育・研修といったプログラムも入ってきます。

こちらは、私たちの成果を示したものです。これらは、実際の16の「生態村」モデルです。さまざまな生態系が脆弱な地域、たとえば先ほどから話に出でおります沿岸砂地の地域、山岳地あるいは傾斜地、そしてデルタ湿地帯といったところに「生態村」の建設を支援しております。そして実際に生態経済の概念をもとに様々な取り組みを行っています。エコエコが実際に実施した様々なプロジェクトは、企画から実施そして監視評価まで、一般参加型で行っています。そして「生態村」建設の取り組みにおいて一般参加型であるということが非常に重要な要素であります。私たちは、ベトナムにおいて早い段階たらこの手法を使っていました。

こちらにベトナム「生態村」構築にあたって、どういったことを行わなければならないのかということが書かれております。第一段階は準備です。情報収集や地図などの準備(preparation)というものが最も重要な段階のひとつです。第二段階ではミーティングです。村人、特に女性が全員集まり、意見交換を行います。第三段階では「PRAチーム」を作り、村の地図で具体的に土地利用の行動計画を作成します。そして第四段階で具体的に実施するわけです。

ここからは、私たちの成果を写真でご紹介させていただきたいと思います。まずこちらが砂地「生態村」のホームガーデンです。この地域は非常に貧しい地域ですが、大変きちんとした形でこのホームガーデンを整備しています。こちらも同じく砂地のホームガーデンですが、この地域は水不足、水が十分にない地域でした。しかし、私たちがこのような灌漑用水路を準備したことで植物が育ちました。養殖池が真ん中に作られているかと思いますが、その池の周辺に実際に樹木を植えております。そしてこちらの「生態村」では、水路に電力を供給するために設置された小型水力発電機です(写真1)。

こちらの「生態村」は山岳地域ですが、ホームガーデンを作り、家畜の食糧として草や野菜を栽培しております。こちらは段々畑の様子がご覧いただけるかと思います。傾斜地に野菜を植えています。

こちらは、エコエコが「生態村」プロジェクトを最終化させるために、村民全員が参加する「一般参加型ワークショップ」を行っている写真(写真2)です。エコエコの教授たちの顔も見られます。村人の理解と協力がなければ、「生態村」は形成できません。

こちらは山岳地域にある「生態村」です。この「生態村」は設立から10年がたっています。これは「生態村」が作った有機野菜です。大きなカボチャに育ちました。「生態村」ができる前の10年前は、何もない砂地・荒れ地でしたが、現在では「生態村」が発展し、周囲には緑の森林のある地域になっております。  

最後に写真だけを紹介します。これは、ザオとよばれる少数民族の住む「生態村」の様子です。水平方向に石を並べて、土壌を守る施設の様子が分かります。(写真3)

こちらは、2009年に、バヴィ「生態村」にCCFDの方が視察にいらしたときの様子です。エコエコは、生態的立地条件の特徴に合わせて「生態村」の意見を尊重しながら支援を行っています。日本からのご支援もよろしくお願いします。

以上です。ご清聴をありがとうございました。 

(司会:松谷研究員):まだわずかに時間がありますので、質問を1件だけ受け付けたいと思います。

(緒方教授):「生態村」を作るためのステップについて再確認させてください。先ほどご説明がありましたが、ステップ1が生態村を作るための準備、ステップ2がミーティング、ステップの3が「PRA」の実施となっていますが、これは具体的にどのようなものですか? 社会調査の分野では、「PRA」は「参加型農村調査法Participatory Rural Appraisal」と言いますが、同じですか?

(アイン研究員):いいえ。ここでの「PRA」は、先ほども説明しましたが、正式名称は「Participatory Rapid Assessment」といい、日本語に直訳すると「一般参加型の迅速な評価」となります。この評価をするにあたって使われるツールは、現在の村の土地利用を表した地図であったり、フィールド・サーベイ(field survey)の情報であったり、どういった種子がそこの土地に適しているのか、といったことを見極めるために情報を収集し、村人が評価します。あるいは、どういった実施計画を選択するのかを村の会議やまたフィールドチームやPRAチームなど様々なセクターが参加をしたミーティングで行われます。村人の理解と合意を取り付ける大変重要な会議ですし、そのための評価です。

(司会:松谷研究員):残念ながらもう時間になりました。アインさん、どうもありがとうございました。(拍手)それでは最後の発表に移りたいと思います。