国際連携・留学

12月6日(木)講演会

前国連事務次長の 赤阪清隆氏

12月6日(木)の講演会では、午前中に「日本は没落と苦悩に喘ぐ国となるのか―否、若者がいる」と題して、前国連事務次長であり、現在、外国メディアの日本取材や、日本から外国へのメディアを通じた情報発信の支援を行っている、公益財団法人フォーリン・プレスセンター理事長の赤阪清隆氏が講演。アメリカの大統領選に出馬した共和党のロムニー候補が、今年8月9日の演説の中で日本を侮辱した「We are not Japan. We are not going to be a nation that suffers in decline and distress for a decade or a century.(我々は日本ではない。10年も1世紀も没落と苦悩に喘ぐ国にはならないのだ)」の一説を引用し、会場いっぱいの学生の前で、日本が直面している厳しい現実について語った。

赤阪氏は講演の中で、国連職員の数が、日本が国連に拠出している負担金の割に少ないこと、そもそも国連職員の希望者が少なく、英語能力も不足していること、日本から海外への留学生数が激減しており、10年以上前と比較して、駐在外国メディア数も減少していること、隣国の中国や韓国では逆に増えているという日本固有の右肩下がりの現実を、数々のデータで示し、「君たち日本の若者には、もっと世界に出てもらって、ロムニーさんに『あなた間違っていましたよ。日本は没落と苦悩に喘ぐ国ではなかったですよ』と言って欲しい」と、学生に対する期待を込めて締めくくった。

続いて午後は、外務省国際協力局地球規模課題総括課課長の飯田慎一氏と、国連国際防災戦略事務局UNISDR駐日事務所代表の松岡由季氏が、それぞれ「日本の外交における人間の安全保障の視点」と「国際的な防災への取り組み、及び国連職員を目指す若者に向けて」のテーマで講演した。

続いて午後は、外務省国際協力局地球規模課題総括課課長の飯田慎一氏と、国連国際防災戦略事務局UNISDR駐日事務所代表の松岡由季氏が、それぞれ「日本の外交における人間の安全保障の視点」と「国際的な防災への取り組み、及び国連職員を目指す若者に向けて」のテーマで講演した。

外務省国際協力局 地球規模課題総括課課長 の飯田慎一氏

飯田氏は、1990年の外務省入省後、一貫して外交や各国との交渉事にあたっており、日本語とほぼ同レベルで英語を扱うことができ、天皇陛下の通訳も担当されるという。ただし、まさしく死ぬほど勉強されたそうで、誰でもそのように勉強すれば同じレベルに扱うことができるようになるとのこと。講演の途中、所々で、「国際法における国家主権とは何か?」、「90年代中盤に、アフリカのルワンダでどんな事件があったか?」、「国連憲章上容認されている3つの武力行使とは何か?」など、会場にいる学生に質問し、その解答の的確さに、飯田氏が驚く場面もあった。

飯田氏は、国際会議における交渉の中で、G77の強硬な反対にあって「人間の安全保障」と「保護する責任」を切り離さざるを得なかった経験を話し、その中で、実務家は、学者とは違い、100点を目指すのではなく、50点より上を目指し、60点、70点とれれば上出来という姿勢で事に当たる考え方の重要性を訴えた。また飯田氏は、イギリスのサイクス・ピコ協定とバルフォア宣言を例に、いわゆる二枚舌外交といわれる事柄に対しても、イギリス外務省内では、整合性のある説明が存在することを例に、国際社会の中で自国の立場を守ろうとする実態を紹介。「外交官は嘘をつかずに嘘をつく人種である」との言葉も紹介したが、これに対し、学生からは「人間の安全保障を主張してきている割に、日本はあまり難民を受け入れていない。これも、外交官は嘘をつかずに嘘をつくということか?」など、鋭い質問があり、「21歳でそこまで言えれば頼もしい。是非外務省に入って欲しい」など、厳しい中にも興味深いやりとりが、学生との間で交わされた。

UNISDR駐日事務所代表 の松岡由季氏

そしてこの日最後の講演は、松岡氏による国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の活動内容の紹介であり、前半部分では、2015年に期限を迎えるHFA(兵庫行動枠組)にも触れながら、東日本大震災後ますます注目されている防災戦略について、日本が世界のリーダー的存在となって各国を牽引していく必要性があることを訴えた。

また後半は、国連職員を目指す学生へのアドバイスを含めて、自身の経験から、国連職員のどういう点に魅かれ、どんな過程 を経て国連機関にアプライしたのかを講演。多種多様な人々との間で仕事を進めることが面白い反面、忍耐を要することであり、日本人はあまり自分を前に出さ ないが、積極性が大事であること、国連組織では、常に競争にさらされるので、自分を磨き、アプライし続ける努力と向上心が必須であることなどが語られた。

最後に、「国際社会に貢献する使命感がなければ、国連の仕事は続けられない。それを持続できるのであれば、是非チャレン ジして欲しいし、国連というのは理想的な使命を持ちながらできる価値ある仕事なので、関心のある方は是非、頑張ってほしい。」と、学生にエールを送って、 この日の講演は全て終了した。