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映画『 FLEE フリー 』上映会・スペシャルトーク
~ Chuo Diversity Week 2022「Safe Campus, Safe Space」~

2022年12月21日

    中央大学ダイバーシティ推進 × ハラスメント防止啓発ウィーク2022
 2022年11月11日(金)〜21日(月)、「Chuo Diversity × ハラスメント防止啓発ウィーク2022」が開催されました。中央大学ダイバーシティセンター(2020年度発足)とハラスメント防止啓発委員会が主催したもので、ダイバーシティの推進とハラスメント防止啓発について考え、理解を深めながら、現代社会のさまざまな課題に触れるウィークです。
  今年は「Safe Campus, Safe Space」をテーマに、一人ひとりが安心して過ごせる場所、お互いを尊重しながら学び成長できるキャンパスを皆で考えようと、さまざまなイベントが対面(多摩キャンパス)やオンラインで開催されました。学生や教職員に加えて、一般の方々にもご参加いただきました。

 2022年11月14日(月)、多摩キャンパス・グローバル館7階ホールにおいて、「映画『FLEE フリー』上映会・スペシャルトーク」が開催されました。上映会は、①13時20分~②15時10分~と、授業履修時間に配慮し2部制で実施され、1部と2部の間にはスペシャルトークとして、ノーマルスクリーンの秋田 祥 氏が登壇。今回の上映映画『FLEE フリー』についての制作背景の解説に加えて、この映画から見えてくるさまざまな問題や出来事(紛争、難民、人種差別、LGBTQ+、人のつながり、セーフスペースづくり、家族のあり方等)について、ノーマルスクリーンが収蔵する作品や上映してきた作品の紹介と合わせて、丁寧にお話いただきました。また、参加者からの質問や感想についてもコメントしたり、問いかけていただいたり、参加者と共に、一緒に考えていくトークを展開していただきました。

スペシャルトーク ~ この作品を私たちの「存在」を考えるきっかけに

▲ノーマルスクリーンによるイベントの様子

 秋田 氏の運営するノーマルスクリーンは、ジャンルや時代や地域を問わず、主に性的マイノリティーの人々の視点や経験を描いた映像作品を紹介し上映するプラットフォームとして、2015年頃から活動しています。商業的に映画作品を配信・上映するのではなく、残そうとしなければ消え去ってしまいそうな作品、国内外のアーカイブ活動や過去の記録と向き合う映像作品等を収蔵しています。さらに海外作品については、映像に字幕を付けるなどして配信したり、映画館や大学等と共催しイベントや様々な機会で上映しています。

▲ノーマルスクリーンの秋田 祥 氏

 今回上映の映画『FLEE フリー』は、アフガニスタンから難を逃れ、ロシア、そしてヨーロッパへと亡命した男性の壮絶な実話をアニメ映画で描いています。ようやく安全な場所に逃れてきたはずなのに主人公の抱く孤独感やLGBTQであることの葛藤、家族とは何か、心から安全を感じられるホームを作り上げることとは何か等、主人公の親友である監督が主人公の心情、背景や時代を丁寧に描いています。
 「FLEEの主人公が体験したことは、大学生の皆さんにとっては、教科書やニュースで見聞きする時代のことで、他国の出来事のように感じるかもしれませんが、現在でも紛争、難民問題は世界各地で起こっていることです。自らのセーフスペースは大学生にも通じるテーマで、LGBTQ+の人たちの心の葛藤等もすぐ近くにあることです。今日、参加してくださった皆さんが、自分たちの「存在」や「ホーム」等、さまざまなことを考えるきっかけを、この作品から感じてほしい」と、トークを締めくくりました。

映画『 FLEE フリー 』について

▲クリックで拡大

 『 FLEE  フリー 』は、2021年度アカデミー賞®にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門で同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画です。
 英題である“ FLEE ”とは危険や災害、追跡者などから(安全な場所へ)逃げるという意味を持っています。主人公のアミンをはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、いまや世界中で大きなニュースになっているタリバンとアフガニスタンの恐ろしい現実や、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が、自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描いています。
 紛争、難民、人種差別、LGBTQ+など現代社会を覆う数々のテーマが内包されており、彼の声は、今を生きる我々の心に深く語り掛けてきます。自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民の家系であるヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、インタビューでこう語りました。「この物語は、過去やセクシュアリティも含め、 自分が誰なのか、それを知ることのできる場所を見つける、一人の人間の物語なのです」(FLEE公式ホームページより抜粋)

上映会とスペシャルトークイベントを終えて ~ 長島先生の挨拶

▲挨拶を述べる法学部教授/ダイバーシティセンター運営委員長  長島 佐恵子

  映像表現を通じて社会課題について考えてほしいという思いから、毎年ダイバーシティウィークでは映画上映を行なっています。
 今年の映画『FLEE』は、秋田さんのお話にもあったように、「ホーム」とは何かを考えさせるものでした。「ホーム」という場所は、必ずしも自分で選べるものではありません。気が付くとある場所に帰属して/させられていて、その場所とどういう関係を持っていくのか、葛藤が生まれることもあります。また、「ホーム」は自分ひとりだけの場所ではなく、必ず複数の人との関係が生じる場でもあります。
 皆さんは、Diversity & Inclusionという言葉を聞いたことがあるでしょうか。そこにBelonging(帰属)が加わってDiversity, Inclusion & Belongingという言い方をすることがあります。すでに多様な私たち(Diversity)が、そこにいて大丈夫と受け入れられる(Inclusion)。するとそこが自分の「ホーム」であるというポジティブな帰属意識(Belonging)が生まれます。
 中央大学という場所に関わる多様な一人ひとりがここにいて良いのだと感じ、いずれここを離れてもポジティブな気持ちで思い出し、また戻ってきたいと思えるような「ホーム」を作れるように、ダイバーシティセンターの活動があると思っています。本日この映画を見て秋田さんのトークを聞いてくれた皆さんが、これからもいろいろ考え学びながら、つながっていただけたら嬉しいです。