キャリアセンター(理系)

中央大学での出会いを大切に「つなぐ人」になる

リコーITソリューションズ株式会社
矢野 絵美(やのえみ)

私にとって中央大学は、新たな出会いと成長のきっかけを与えてくれた場です。一つひとつは点でバラバラだった出来事も、時が経つにつれ線になり面になり、それをまたみずから意識してつないで広げていくことで、人生がより豊かにワクワクしたものになると信じて活動し続けています。

学生時代―新しい出会い

中央大学の経営システム工学科(現ビジネスデータサイエンス学科(*1))は、人間システム、情報システム、機会システムに関する学問を有機的に結合した学問体系で学べると知り、「人」に関する部分が含まれていることに魅力を感じて進学しました。そして、出会ったのが「感性工学」です。感性工学では、一人ひとりの異なる嗜好や感じ方をモデル化しシステムで活用していきます。今、振り返ってみると、その後、私が長く関わるダイバーシティに関するベースはすでにここからスタートしていたようです。
研究室配属後はほとんどの時間を大学で過ごし、プログラムや学会発表の論文を書いたり、ゼミの仲間と一緒にいつもワイワイ楽しく過ごしたりしていました。
もう一つ、私にとって大学生活の中でのとても重要な出会いは、第二外国語で選択したフランス語です。理工学部でフランス語を選択する人はあまり多くなく、2年生になり選択科目となった時の履修者はなんとたったの4人! それでも、講師の先生が毎回インタラクティブでとても楽しい講義をしてくださり、流れるようなフランス語の響きにすっかり魅了されました。そして、修士2年生の時には念願かなって3週間(トゥールに1週間、パリに2週間)の短期語学留学をしました。それから20年ほど経ちましたが、ラジオを聞いたりオンラインでレッスンを受講したりして、現在もフランス語の学習を続けています。旅行でフランスを訪れた時には、ホームステイ先のマダムのお宅に顔を出したり、レストランやショッピングでもフランス語で会話したりして楽しんでいます。

WISE Chuo―女子学生応援

中央大学理工学部には、技術開発や研究のスペシャリスト育成、キャリアデザイン教育など理工系女子学生を応援するプログラムWISE Chuo(Women In Science and Engineering, Chuo University)があります。
2008年に私は産学連携コーディネータとして大学に戻り、このプログラムをサポートすることになりました。理工系ではまだまだ少数派の女子学生が縦横のつながりをもってネットワークを広げられるよう、プレ入学式の企画をしたり、産業キャリア教育プログラム(WISE科目)では国内外で活躍する企業の方々を講師として招き、ご自身のキャリアをどのように切り拓いていったのかなど、リアルなお話をいただくことで学生の皆さんがキャリア形成に役立てる機会を提供したりしました。各方面で活躍されている講師陣からのお話を学生と一緒に聞き、「私が学生のときにもこのプログラムがあればよかったのに!」と何度も思ったことを覚えています。コーディネータとしてプログラムをサポートした期間は短かったのですが、現在は企業で働くOGの一人として講師という立場でこのプログラムを継続的にサポートしています。
2023年度からは新たな試みとして夏季集中講義の形式を取り、8月には学生の皆さんに私の働くオフィスで1日過ごしていただきながら講義・演習を実施しました。

IEEE―世界とつながる

WISE Chuoでの女子学生支援がきっかけとなり、人類社会の有益な技術革新に貢献する世界最大の専門家組織であるIEEE(アイトリプルイー)の中のWomen in Engineering (WIE)というグループで、2008年からボランティア活動をしています。
WIEでは、テクノロジー分野で活躍する女性技術者・研究者の自立と連携を支援しています。IEEEには、技術専門領域ごとのグループや若手研究者・学生のグループなどがありますが、さまざまなグループと連携して、学生・若手・女性向けにキャリア開発ワークショップやネットワーキングイベントなどを毎年企画・開催し、キャリア開発や組織を越えたつながりの強化に貢献しています。
活動は国内にとどまらず、2019年から2022年の4年間はRegion10(アジア・パシフィック地域)のWIEの代表を任されました。女性技術者・研究者を支援するという柱は変わらないものの、国や地域によって具体的な課題や活動の仕方も異なる中、各国・地域から集まったチームメンバーとコミュニケーションを密に取りながら自分ができること・すべきことを見極めて取り組むことは時に難しいと感じることもあります。とはいえ、IEEEでのグローバルな活動はとても貴重であり、視野を広げる良いきっかけになっています。2023年からはHumanitarian Technology Activities CommitteeのChairとして、女性という枠を越え、技術者や専門家が社会的責任を持ち、持続可能な社会のために私たちができることを分野や立場を越えて皆で共有し、技術的解決策の開発につなげていく活動やネットワーキングの支援に取り組んでいます。

現在の仕事―働きやすさと
働きがいをつなげる

現在私が働いているリコーITソリューションズは、ITのプロフェッショナルとして世界をリードしていく技術者集団です。その中での私の役割は、多様な個性を持つ技術者の皆さん一人ひとりが働きやすく、働きがいをもって最大限に力を発揮できるような環境を提供し、活躍をサポートすることです。
2017年からスタートした働き方変革では、リモートワークの実践、意識変革プロモーション、新オフィスの環境整備に取り組み、いつでもどこでも仲間と「つながる」働き方を実現。その取り組みは、厚生労働大臣輝くテレワーク賞(特別奨励賞)受賞という形で、世の中にも広く認められる成果となりました。こうした取り組みを進めていたこともあり、新型コロナウイルス感染症対策もスムーズに行い、社員の皆さんの健康安全・感染拡大防止の対策を取りながら事業継続を実現することができました。
そして現在は、「働きやすく」「働きがいのある」会社であり続けるために、「一人ひとりがイキイキと働き、個人およびチームとして最大のパフォーマンスを発揮し、新たな価値を生み出し続けることができる働き方」の実現をめざして、多様な社員が「みずから考え選択」できる働き方へとつなげています。高い技術力・専門性を身につけ、世界レベルで活躍するプロフェッショナルとなるためには、自分のありたい姿を描き、それに向けてアクションをし続けることが大切です。
DX最前線で活躍する主体性を持ち、尖った技術者を育てるために、人材開発部門のマネージャとしてチームメンバーを支援しながら、スキル可視化やプロフェッショナル認定をはじめとした技術人材育成に取り組み、多様な社員の皆さんが個性・能力を最大限に発揮できるよう働きがいのある企業づくりを行っています。

中央大学の皆さんへのメッセージ
―出会いとつながりを大切に

「人は完璧ではない、他人に迷惑をかけるのは当たり前」という考え方をインド人の友人から教えてもらいました。誰しも失敗したくないと考えると思いますが、完璧を求め過ぎずに、機会が訪れたらまずはやってみることで「できた!」という成功体験がどんどん増えていくのだと思います。学生のころからこの意識でいろいろなことに挑戦していければ、経験値はどんどんたまっていきます。私たちは一人ではなく、周りには支えてくれる人がたくさんいます。是非、皆さんも一歩ずつアクションを起こして、ありたい自分の実現に向かって未来を切り拓いていっていただきたいと思います。

Profile

1979年生まれ。2004年 理工学研究科経営システム工学専攻(現ビジネスデータサイエンス専攻)*2博士前期課程修了、専攻は感性工学。同年、Web制作会社に入社し、人間中心設計やデザイン思考を用いたWebコンサルティングに従事。中央大学で産学連携コーディネータを務めた後、2009年リコーITソリューションズ株式会社へ入社。現在は、人材開発部門のマネージャとして人材開発とDE&Iを推進。

休暇で訪れたArt Gallery of Ontarioにて
休暇で訪れたArt Gallery of Ontarioにて

2023年度WISE講義の様子
2023年度WISE講義の様子

RICOH THETAで撮影したアジアパシフィックの仲間たちと
RICOH THETAで撮影したアジアパシフィックの仲間たちと

WIEのグローバルなチームメンバーと
WIEのグローバルなチームメンバーと

*1理工学部「経営システム工学科」は2021年度より「ビジネスデータサイエンス学科」に名称変更

*2理工学研究科「経営システム工学専攻」は2022年度より「ビジネスデータサイエンス専攻」に名称変更