「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
文学研究科 博士前期課程 心理学専攻に在籍している山澤 優心(やまざわ ゆみ)さんが、2025年7月2日~7月5日にオーストラリアのブリスベンで開催された「7th PACIFIC RIM CONFERENCE」において発表を行いました。
「7th PACIFIC RIM CONFERENCE」は以下のの三つの団体により合同で開催されている国際学会です。
●International Neuropsychological Society (INS)
●Australasian Society for the Study of Brain Impairment (ASSBI)
●Australian Psychological Society’s College of Clinical Neuropsychologists (CCN)
今回は、オーストラリアをはじめとした各国から神経心理学に携わる医師、リハビリテーション専門職、心理士など500名以上が参加しました。
本記事では、山澤さんによる発表内容の紹介や発表にあたってのメッセージをお届けします。
発表の概要について
結婚の意思決定には、個人の信念や性格など多様な要因が影響します。私たちの研究では、その中でも発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)の特性とパーソナリティに焦点を当てました。これまでの研究では、ASD特性やネガティブな感情を経験しやすいパーソナリティ特性(神経症傾向)が結婚を遠ざける要因として報告されてきました。
私たちの調査の結果、ASD特性は結婚の可能性を下げる一方で、外向性の高さは結婚に結びつきやすく、これらの効果は互いに独立して存在することが明らかになりました。一方で、神経症傾向の影響は有意には見られず、これまで十分に考慮されてこなかった発達的特性の重要性が浮き彫りとなりました。本研究の成果は、結婚に関する悩みを抱えるASD当事者に対する支援や介入の在り方に、新たな視点を提供するものと考えられます。
発表にあたって

ポスター発表の様子
今回は2度目の国際学会への参加でした。前回は英語力が十分でなく、いただいた質問への対応に精一杯でしたが、今回はその反省を踏まえて発表内容や想定質問への事前準備を重ねたことで、落ち着いて対応することができました。
また、複数の口頭発表セッションにも参加し、特に印象に残ったのは「異なる文化的背景を考慮した神経心理学的アセスメント」に関する議論でした。これは国内の学会ではあまり見られないテーマであり、今後の臨床や研究活動において、より広い視野を持つ必要性を再認識する貴重な機会となりました。