大学院

【究める vol.142】小原 みと希さん(文学研究科 博士後期課程)が表現学会で発表しました

2024年07月17日

文学研究科 博士後期課程 国文学専攻に在籍している小原 みと希(オハラ ミトキ)さんが、第61回表現学会全国大会で発表を行いました。
本記事では、小原さんによる発表内容の紹介や発表にあたってのメッセージをお届けします。

表現学会全国大会ホームページ

「表現学会」について

表現学会は、語学・文学・教育学など隣接する学問領域で活躍する研究者たちによって構成されています。
そもそも、表現学とは、表現の目的や方法を追究し、その仕組みを体系化していく学問です。表現とは何か。何のために用いられているのか。どのような形で用いられているのか。メカニズムをどうまとめあげていくことができるのか。こうした問いに対して、幅広い学問領域の研究者たちが集って、例会や全国大会、学会誌『表現研究』の中で、各々の研究成果を発表・報告しています。

発表について

今回は2つの研究発表を行いました。いずれも古典文学の表現を扱っています。

1つ目は「わが事を言う終助詞カシ―源氏物語を中心にして―」と題して、単独での発表を行いました。終助詞カシとは、中古に現われた文末表現です。本発表では、『源氏物語』における他者への情報伝達という要素の希薄な場面で用いられるカシに着目し、カシが表現主体の見解としてどのようなことを伝えているのかを明らかにしました。
2つ目は「語義情報を用いた古典語比喩の分析:『方丈記』を対象として」と題して、菊地礼先生(長野工業高等専門学校工学科リベラルアーツ教育院・助教)のご研究を基にして、共同で研究発表を行う機会をいただきました。本発表では、比喩を構成する語に着目して、『方丈記』に用いられた比喩の実態と特徴的な用法を明らかにしました。菊地先生は、「日本語歴史コーパス」のメタデータであるCHJ-WLSPの語義情報を用いて、『方丈記』の比喩を構成する意味分野を整理し、作品内の比喩の実態を示しました。私は、実際の用例をもとに、『方丈記』の比喩の特徴的な運用としての対比表現を明らかにしました。菊地先生は語学的観点から計量的に分析し、私は文学的観点から質的に分析を行っています。

発表を終えて

写真は左から、阿部菜々香さん(本学・院生)、菊地礼先生(本学・卒業生、長野工業高等専門学校・助教)、小原みと希さん(本学・院生)、加瀬桃子さん(本学・院生)、乙部桃子さん(本学・卒業生、株式会社kotoba)

菊地礼先生は、本学の卒業生で、私にとっては先輩にあたる方です。藤原浩史先生(本学国文学専攻・国語学の教授)のもとで学び、現在は直喩の研究者としてご活躍されています。こうして先輩の研究に、自分が関わることができるなんて、大学院を入る前は想像もしていなかったことです。思い返せば、表現学会を紹介してくださったのも、菊地先生でした。大学院で、藤原先生や菊地先生と出会ったことで、私は表現を研究するようになりました。

私は『源氏物語』の表現を研究しています。具体的には、作品に使用されている語彙や文法などの表現を分析し、個別の場面におけるディテールを理解することで、作品全体を解釈していきます。それには、文学だけでなく、語学の研究が必要不可欠です。古語には、分からないことがまだ多く残っています。言葉が分からないから、作品を解釈することも難しいわけです。だからこそ、文学研究は、語学研究を活かして先に進むことができます。
今回の発表では、日本語学や日本文学の分野に限らず、表現学に関わる様々な研究者から、たくさんのご質問やご意見をいただくことができました。本当にありがたいです。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。私自身も、文学と語学の両分野に貢献できるような研究をしていきたいです。