大学院

【究める vol.127】池内 陸(法学研究科 博士後期課程)さんがイギリスでの海外プログラムに参加しました

2023年11月08日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介しています。
今回は、イギリスでの海外プログラムに参加した池内 陸(いけうち りく)さんにお話を伺いました。池内さんは、法学研究科 博士後期課程 国際企業関係法専攻の2年次に在籍しており、英米法(特にアメリカ合衆国憲法)を専門としています。

参加したプログラムの概要


プログラム 中央大学法科大学院が提供しているイギリスでのSAP(study abroad program)
実施期間  2023年9月10日~9月19日
実施場所  ダラム大学(9月11日~15日)・ロンドン(9月18~19日)

プログラムに参加した理由について

英米法を専攻しているということもあり、やはり一度現地で法律の勉強をしてみたいと思っていました。

今回のプログラムでは大学での講義に加え、法曹養成所であるミドルテンプルでのレクチャーも予定されていました。日本人がイギリスに存在する法思想・法文化を学ぶまたとない機会であると考え、参加を決めた次第です。

プログラムの概要について

ダラム大学の講義で使用された部屋

最初の一週間はダラム大学において契約法(contract)と国際紛争解決(international dispute)の講義を受けました。その間、自分たちで契約法における特定のテーマについて調べ、発表する機会がありました。

2日間の移動日の後、ロンドンではまず法曹養成所ミドルテンプルで講座を受けました。二日目はTMI(日本の大手弁護士事務所)のロンドンオフィスにて、現地で活動されている日本人弁護士の方からご自身の体験談を伺いました。

プログラムを通じて印象に残っていることについて

ダラム大学ではグループで日英の法制度を比較して発表する機会がありました

印象的なことはたくさんありましたが、ここでは特に二点あげたいと思います。

一つ目はイギリスの法律家たちが持つ実践への意識の高さです。ダラム大学での講義およびミドルテンプルの講座は法律家が実際の法廷や、交渉段階においてどのようにふるまうべきかという点に主眼が置かれたものでした(ロースクールが主催するプログラムだからという点も大きかったかもしれません)。法学の講義にもかかわらず、法解釈論の割合が日本と比べると低い点が印象的でした。

二つ目は国際社会における英米法的思考の優位性です。TMIロンドンオフィスにおいて、弁護士の方は旧大英帝国が自身の影響力を拡大・維持する際、英語・金融・法制度の三つの手段を用いた点に言及されていました。実際、国際紛争解決の中でも国際仲裁(international arbitration)の分野では、大陸法と比較して、コモン・ローの優位性は明確です。世界でも多くの事例を扱う国際仲裁機関はロンドンやニューヨーク、香港、シンガポール等、コモン・ローを採用する国にある仲裁機関であることが多いです。英米法圏のローヤーにとって国際仲裁は大きなビジネスチャンスとなっていることが非常に印象的でした。

今回のプログラムとご自身の研究のつながりについて

ロンドンのミドルテンプルでの講義は実際の裁判を強く意識したものでした

私のテーマはアメリカ合衆国の公法に関することですので、直接のかかわりがあるわけではありません。それでも今回のプログラムは自分の研究にとって、特に比較法の方法論の観点から非常に示唆に富むものであったと思います。イギリスには日本とは明確に異なる法文化・法的思考が存在します。最終的な法制度や法的問題の解決方法が近似するように見えるからと言って、安直に表面だけをなぞって比較するようなことは厳に慎むべきであることを肌感覚で知る良い機会となりました。

プログラムに参加して

非常に有意義であったと思います。私たちは普段、外国法を学ぼうとする時、誰かが書いた文字でしかその様子を知ることができません。実際に現地に行ってみることで初めて字面から得た情報を自身の感覚と結びつけることができます。勉強をある程度した後にこのようなプラグラムに参加することで、なるほどと膝を打つような経験を得られたように思います。
 

※本記事は、2023年11月時点の内容です。