大学院

【究める vol.110】大学院の授業をのぞいてみよう!④ 経済政策Ⅱ(経済学研究科)

2022年12月09日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。今回は「大学院の授業をのぞいてみよう!」の4回目として、経済学研究科の「経済政策Ⅱ」(瀧澤 弘和(たきざわ ひろかず)教授)の授業の様子をお届けします。

授業概要

経済政策Ⅱについて

まずは前期に開講した「経済政策Ⅰ」において主として扱った完備情報ゲームの分析の復習から始め、後期の本授業では、その総仕上げとも言える繰り返しゲームから始めます。その後、不完備情報のゲームとその応用について解説していきます。

現在では、ゲーム理論の基礎知識なしでは経済学を理解できなくなっており、ゲーム理論は経済学の中枢の理論となっています。本科目は、そのためのゲーム理論の基礎を修得することを目的としています。

授業は担当教員が作成したレジュメに沿って進められますが、できるだけディスカッションの時間も設けて、履修生自身の研究上の関心と結びつけていくようなものとすることを目指しています。

本日(11月18日)の授業について

ゲーム理論は、ゲーム的状況の中での人々の選択を予測することを中心としています。この場合にはゲームが与えられていますが、その逆に、特定の目的を達成するために、どのようなゲームをプレーさせたらいいのかを考えることがあります。これが「メカニズム・デザイン」という研究領域です。

今回は、この理論的枠組みをオークション理論に応用しました。オークションには、公開された競りの場で価格を競り上げていくイングリッシュ・オークション、逆に価格を下げていき、購入意志を示す人が現われたところで勝者が決まるオランダ式オークションなど、さまざまな方式があります。これらを一括して扱うことができる枠組み(「顕示原理」)を用いて分析することで、かなり多くのオークション方式で、競売を開催する人の期待収入が等しくなるという「収入等価定理」の証明を行いました。
 

履修者の声

本日の授業はいかがでしたか

【杉本 大樹さん】
本日の経済政策Ⅱでは、収入等価定理を中心に学びました。一履修者である私の所感ですが、本日に限らず本講演の担当教授である瀧澤弘和教授は学生の反応を重視してくださっていると感じています。講義内で出てくる経済学・数学の基礎的な点から履修者に配慮して丁寧に解説してくださる他、先週の講義のおさらいもしていただいた上で、当日扱うテーマについて解説していただけます。そのため、正直なところ本日の内容は全期間通してトップクラスに理解が難しい講義ではありましたが、食らいつくことができています。

【杉山 拓海さん】
本日の授業はメカニズムデザインの中の収入等価定理の理論を学習しました。内容は理論の証明が主で、ひたすら何が行われていて、どのように手法を展開しているのかを教授と一緒に追っていく授業でした。触りは簡単そうに見えるが実際に中身をのぞいてみると非常に複雑に論理が展開されていることが理解できました。本日は今までの授業よりも難易度が高く、理解するのに時間がかかるところもありましたが、論理の展開を追っていくと、どんなふうに緻密に作られているかがよくわかります。

【郭 涵茹さん】
本日の授業は少し難しかったですが、面白い内容だったと思います。いろいろな学びがありました。授業が終わった後に、もう一回整理して復習することで、しっかり理解できると思います。 

この授業(経済政策Ⅱ)を通じてどのような学びや発見が得られますか

【杉本 大樹さん】
経済政策Ⅱでは、標準的なゲーム理論の習得を目指してゲーム理論の応用に触れつつ、契約理論、オークションといった現実にも存在する事象(ゲーム)について考えます。また、講義内で学んだモデルを振り返りながら今年のノーベル経済学賞について解説していただく機会もあり、学びを深めることができました。ゲーム理論はモデルをもとに事象を考えることから、学びを経てオークション等の社会に存在する事象の見え方が変わる講義です。

【杉山 拓海さん】
経済政策Ⅱ(経済政策Ⅰもセットで)を通じて、基本から標準、応用までの経済論理を一通り触れ、学ぶことができます。教授が論理を教えるのがとても上手で、論理だけに集中せず、人間の直感に訴えかけるような教え方も両立しており非常に頭に受け入れやすい授業が展開されています。オークションのような現実世界で実際に行われている経済活動がどのような論理で成り立っているのかがよく理解できるようになります。そして学部で勉強したことの先を触れることができるので、学部での内容が足りない人にとってはとても良い場所になります。

【郭 涵茹さん】
この授業はゲーム理論に関する内容が中心です。前期には経済政策Ⅰを履修していましたが、前期の内容に比べて、ゲーム理論に関する知識をより深く学んでいます。瀧澤先生は簡単な方法で複雑な内容を説明してくださるので、理解しやすいです。この授業で勉強する前は、ゲーム理論に接する機会はあまりありませんでしたが、今では少しずつ理解してきたので、前より考え方が変わってきました。分析方法も勉強することで、これからの研究にも役に立つと考えています。 

上記とご自身の研究や将来とのつながりを教えてください

【杉本 大樹さん】
私は現在、人の思考や行動について知りたいという想いを持ち、それに最も純粋にアプローチできることが人間の無意識について研究を行うことではないかと考えています。大学院では人間の無意識をテーマに研究を続け、将来的に無意識の研究と可視化によって、人々の気づくことのない機会や現象の発見による社会貢献を目指しています。
経済政策Ⅱにて扱われているゲーム理論は人間の行動結果について考える際に、モデルを用いて複雑なシステムを理解しようとする学問であり、ゲーム理論のこういった側面は私が進めていく無意識の研究ともつながりが深いと考えています。

【杉山 拓海さん】
大学院でのいろいろな学習や研究を通してみた知見を通じて、その過程で手に入れた緻密な理論を考察する力と人間的な直観の両方を用いて将来の仕事や自分のビジネスにつなげることができるようになりたいと思っております。また、大学院を通じて手に入れた知見をレンズのように用いて経済学的な観点から世の中の事柄や世界で起こっている問題、自分の身の回りで起こっている問題を見られるようになりたいと考えております。研究につながることとしては、この授業を通して学習したことをベースに多様な授業を受け、大学院への研究につなげたいと考えております。

【郭 涵茹さん】
私の専門は国際経済・国際貿易です。学部の時は、ゲーム理論などの知識は具体的には勉強できていませんでしたが、元々、経済学に興味があったため、大学院へ進学することに決めました。現在は、経済政策を学び、修士論文の内容を考えて、これからは論文の作成について、授業で勉強した考え方や理論知識を用いていきたいと考えてます。

学部と比べた際の大学院での授業の特徴を教えてください

【杉本 大樹さん】
最も大きな違いは担当教授との距離の近さだと思います。一般的に大学の授業では人数が比較的多くなることもあって、講義後に担当教授が時間をとってくださり、1対1で質問をするといった経験が記憶に残っています。ただ、大学院では比較的、履修者が少なく、学生も学ぶ意識が高いため、担当教授は履修者全員に意識を配っていただけていているように感じます。そのため、履修者の発言や表情から講義の理解度を汲み取りながら講義を進めていただけるために、質問や議論が全体で行い易く、学びの多い時間となっていると感じます。

【杉山 拓海さん】
とても分かりやすいところですと、学部の授業と大学院の授業で一番大きく違う点ははやり少人数で授業を受ける点です。経済政策Ⅱは4人で受けており、ほぼほぼ学部のゼミのような授業形態で通常授業が進みます。先生との距離が近いので質問がとてもしやすいです。また、質問でなくても、自分の理解があっているか、この考え方でよいのかなどの質問もかなり臆することなくできます。同時により緊張感をもって授業を受けることができます。

【郭 涵茹さん】
私が通っていた大学(学部)は中央大学ではありませんが、学部では実証研究と経済史に関することを勉強していました。そのため、大学院へ入学していきなり理論についての知識を学ぶときは、かなり心配しました。しかし、大学院は学部と違って、少人数で授業を受けるため、分からない時はその場で質問をして、先生に聞くことができます。また、自分の研究と合わせて履修する授業を選ぶことができます。学部よりは自分の目標を明確にでき、よく考えてから行動しています。私にとっては、大学院に進学することは自分の意識を高めることにつながり、勉強だけではなく、今後の目標に向けてもいい影響を与えています。 

杉本さんと杉山さんは現在学部学生で、大学院授業科目の履修制度を利用して本授業を履修しています。中央大学大学院文系研究科では、大学院への進学を志望する在学生に対して、「大学院授業科目」の履修を認めています。この制度は、早期に大学院教育に接する機会を提供するため、学部に在籍するうちから大学院の授業科目を履修できる制度です。

大学院授業科目の履修制度についてはこちら

瀧澤教授からのコメント

ゲーム理論というと数学的に難しいという印象を持つかもしれませんが、そんなことはなく、むしろコンセプトを論理的に理解することが重要となります。一度話を聞いても、なかなか直観的に理解できないこともしばしばだと思います。難しいことを扱う授業のときには、学生さんにとってどこがわかりにくそうなのかを推測し、そこに寄り添って何度も説明します。

※本記事は、2022年12月時点の内容です。