「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
第69回目となる今回は、アーキビストとして活躍する修了生の平尾直樹さんにお話を伺いました。大学院での学び・研究と現在のアーキビストとしての業務との関わりや、大学院進学を目指すみなさんへのメッセージ等を掲載しています。
平尾 直樹(ひらお なおき)さん
●文学研究科 博士前期課程 2008年度修了
●文学研究科 博士後期課程 2012年度単位取得退学
●現在:寒川町寒川文書館 勤務
【経歴】
寒川文書館主任主事、中央大学政策文化研究所客員研究員、法政大学大原社会問題研究所嘱託研究員。
2009年3月中央大学大学院文学研究科博士前期課程修了、2013年3月同研究科博士後期課程単位取得退学。千葉県文書館嘱託職員、神奈川県立公文書館非常勤職員、法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズリサーチアシスタントを経て、現職。
<アーキビストとは>
アーキビスト(Archivist)は、文書館などで働く記録管理の専門職のことです。
前近代の古文書(こもんじょ)から現代のデジタルデータまで、今日に伝わってきた記録は、将来へ継承すべき重要な情報資源だと認識され、保存されてきました。こうした記録は、後世へ伝えるにあたってさまざまな課題を抱えているほか、記録の保存・活用に社会的な注目が集まっています。アーキビストには、文書館における専門的な業務で中心的な役割を果たすことはもちろん、行政組織や企業、研究機関などで幅広く活躍することも期待されています。
アーキビストとしての業務について教えてください。
私が勤務する寒川文書館は、寒川町が設置した公文書館法に基づく公文書館です。2006年に開館し、今年で開館15年を迎えました。同館職員として私は、町に関する記録資料(公文書、地域資料、行政刊行物など)の収集・保存・整理・公開する業務や、収集した記録資料を利用者に活用してもらうための普及事業(古文書講座・企画展の実施など)を担当しています。規模の小さい自治体が運営する公文書館ですので、一人の職員が担当する業務は多岐にわたります。担当業務の何れもが、町の記録を管理し、その記録を後世に伝えるという使命をおびたものです。それ故に大きな責任をともないますが、その分はやり甲斐を感じています。
大学院での学びと現在の業務とのつながりについて教えてください。
私は、学士入試で中央大学の文学部に入学しました。その理由は歴史学を学び、資料保存機関に勤めたいという思いからでした。しかし卒業論文執筆時に、歴史学をより専門的に学びたいという気持ちが芽生え、大学院に進学しました。大学院では、幕末維新期の地域史(修士論文のタイトル「幕末期江川代官領と「兵卒」」)を研究しました。なお大学院の単位として認定されていた国文学研究資料館主催のアーカイブズカレッジを受講し、ここで本格的にアーカイブ学に接しました。また、大学および大学院で身につけた、資料の読解力や、資料整理の手法は、地域資料の整理や普及事業の企画・実施には欠かすことができないものとなっています。
大学院生活は将来の不安なども抱えながらのものでしたが、同じ志をもつ先輩や同期、後輩にも恵まれ、私のなかではとても有意義なものであったと思います
受験生へのメッセージ
アーキビストの世間での認知度は、残念ながら低いと言わざるをえません。しかし、2020年度より国立公文書館による認証アーキビストという公的な資格制度がスタート、またアーキビストを養成するコースを設置する大学・大学院も増加しています。このように近年アーキビストをめぐる環境は著しく変化しています。アーカイブズが社会には必要な組織・機能であると信じて私は日々の業務を遂行しています。皆さんもぜひアーキビストの世界に足を踏み入れてみませんか。
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