大学院

【究める vol.65】活躍する修了生 森 朋也さん(経済学研究科 博士後期課程 2015年度修了)

2021年11月10日

「究める」では、大学院に関わる人や活動についてご紹介しています。
今回は、2015年度に経済学研究科 博士後期課程を修了し、現在は山口大学で専任教員として勤務されている、森朋也さんにお話を伺いました。

<活躍する修了生>

森 朋也(もり ともや)さんは、

2015年度に経済学研究科 博士後期課程を修了し、博士(経済学)を取得しました。

現在は、山口大学教育学部で専任講師として勤務されています。
国際理解教育選修というコースに所属しており、持続可能な開発のための教育(ESD)や持続可能な開発目標(SDGs)を中心に講座を担当しています。社会科の免許を取得する学生に対して、小中学校の公民や高校の政治経済の講義も行っています。

本記事では、ご自身の研究テーマや大学院時代の研究の様子、大学教員となった現在の過ごし方などについてお話を伺いました。ぜひご覧ください。

ご自身の研究テーマについて教えてください。

私の研究テーマは、「コモンズ」で、分野としては環境経済学や生態経済学となります。コモンズとは、村落共同体や市民によって共同利用・管理される資源、および、その諸制度を指します。コモンズの持続性は、市場機構での資源配分や国家による統治だけではなく、利用者らの協力行動にも依存します。コモンズ研究では、その協力行動を促す要因や構造について、理論研究、フィールド研究(インタビューやアンケート)、あるいは実験など、さまざまな方法からアプローチされています。私の研究は、主にフィールド研究です。

博士課程では、東南アジアのラオスにおけるコミュニティ・フォレストリーについて、現地調査にもとづいて研究を行いました。最近では、観光についても分析対象を広げています。昨年は、中央大学の薮田雅弘教授らとの共同研究で、新型コロナ感染症のリスクが都道府県間での観光移動を抑制することを宿泊旅行統計調査のデータを用いて定量的に明らかにしました。また、観光地も広い意味で、コモンズであり、その持続可能性を維持するためには、市場・国家・地域コミュニティの調和と連携が不可欠です。現在、島根県の津和野の持続可能な観光について山口大学の同僚と共同研究を行っています。研究では、歴史文化遺産や景観を保護しつつも、いかに観光産業を維持する道を地域住民との対話を通して探っています。

中央大学大学院へ進学した理由を教えてください。

学部時代に、ゼミの指導教官でだった緒方俊雄先生の影響が大きいです。先生のゼミでは、宇沢弘文氏の『社会的共通資本』(岩波新書)を通して、持続可能な発展/開発について学びました。しかし、大学院の進学のきっかけは、ゼミでの学びだけではなく、長期休暇に連れて行っていただいたベトナムやラオスなどの東南アジアのフィールド調査でした。そこで、調査を通じて、現地の人びとの人間的な豊かさや生活の知恵を知ることができ、より深く現地のことを知りたいと思ったことが進学の決め手となりました。さらに、後期課程への進学は、より専門的な学びを深めたいと感じたことがきっかけです。

院生時代は、どのような大学院生活を送っていましたか。

中央大学大学院は、共同研究室で研究を行うことができ、大変ありがたい環境でした。4~5人での共同利用で、別の研究分野を学んでいる人と交流ができたのも良かったです。博士前期課程では、どちらかというと、講義の予習と復習に多くの時間を割きました。博士後期課程では、講義はほとんどありませんので、自分の研究に専念していました。ただ、先輩や後輩と自主的な勉強会を開いていたりしていました。オンラインですが、今でも続いている勉強会もありますし、また、現在の勤務先でも読書会などを開催しているので、この時の経験は生きています。例えば、計量経済学については、詳しい先輩に助言をいただくことができたので、大変助かりました。また、日本経済史やEUの研究をしている方とも研究交流していたことが、現在、講義をする上で役立っています。

研究者、そして大学教員となった現在、どのような日々を過ごされていますか。また、今後の抱負についてお聞かせください。

現在は、講義や教職関連の校務が多くなり、また、家庭を持ったこともあり、自分の研究や勉強会などの機会を確保するのが難しくなりました。もちろん、校務も大事な仕事ですが、いかに研究の時間を確保するかが就職後に大事なことだと思います。また、現地調査に行くのも学生時代よりは難しくなり、新型コロナの影響もあり、海外調査が難しい状況となっています。このような限られた環境の中で、現地の共同研究者と協力してもらいながら、研究を進めています。加えて、他方で、現在は、山口県・島根県でのコモンズ研究も進めています。例えば、先述した島根県津和野町や山口県美祢市での研究を進めています。今後は、これらの研究成果を発信していきたいと思います。

他方で、教育学部には、さまざまな分野の先生がいらっしゃるので、他分野の先生との読書会もうまく時間を捻出して開催しています。もちろん、専門研究を進めなければならないのですが、今後も別の分野の研究者との交流も図っていきたいと思っています。
 

中央大学大学院へ進学してよかったことについて教えてください。

中央大学の大学院では、先生方が丁寧に指導していただきました。学部の講義は、人数が多く、内容を深く理解することができませんでしたが、大学院では、少人数で深い学びを得ることができ、また、オーソドックスな理論だけでなく、最新の研究動向なども含めて、幅広く学ぶことができました。また、経済研究所の公開研究会や自主的な研究会にも呼んでいただいたこともよい刺激が得られました。とくに、薮田雅弘教授には、計量経済学の研究会を開いていただき、そのおかげで、自分の研究方法に幅を持たせることができました。

加えて、事務の方々の研究支援も充実していると外部に出て実感しました。例えば、日本学生支援機構の特別研究員制度(DC)の申請も大学院事務室や研究助成課の方々に丁寧に指導していただきました。残念ながら、一度も採用されませんでしたが、その時に挑戦していたおかげもあり、文科省の科学研究費に二度採択されました。二つの様式は同じものではありませんが、院生時代に応募し続けた経験や挑戦する気持ちが生きていると思います。

研究者を目指すみなさんへ

私は、博士後期課程を終了後に、任期制助教制度に挑戦をして、二年間、中央大学でも勤務させていただき、おかげで現在の勤務先で職を得ることができました。大学院時代は、将来の先行きが決まらず、不安だと思いますが、ゆとりをもって研究する機会はありがたいものです。自分は、大学院時代に、多くの研究会や読書会に参加、あるいは開催していました。その時に学んだことや人的なネットワークは、今でも生きています。指導教官との対話が一番大事ですが、内外に関わらず、広く学びの機会を広げられたら良いと思います。そこから次の研究の道が広がることもあるかと思います。

 

※本記事の内容は、2021年11月時点のものです。

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