大学院

【究める vol.52】修了生の声(文学研究科 博士後期課程)

2021年04月28日

大山 真樹さん(文学研究科 博士後期課程 2019年度修了)

 大山 真樹(おおやま まさき)さん

 2019年度に文学研究科 博士後期課程 哲学専攻を修了し、2020年度に博士(哲学)を取得しました。

 <博士論文タイトル>
 ニーチェの道徳批判を導きの糸にした永遠回帰思想の解明
 ― 生きることそのものにおける価値評価と生きることそのものとの原理的な分裂

哲学書が並ぶ本棚を背景にした大山さんの「アシスタント」

 

ご自身の大学院生時代の研究テーマについて
博士前期課程の頃から振り返っていただくとともに、
研究するとはどのようなことかお答えいただきました。

「研究」に関心をお持ちの方、ぜひご覧ください。

 

大学院時代の研究について

哲学専攻の研究は、哲学的な事柄そのものを取り扱う哲学的な研究と、特定の思想家・哲学者の唱えた学説を取り扱う哲学史的な研究とからなります。

私は、博士前期課程において、言語哲学における規則のパラドックスを道徳哲学に適用することによって、個人主義的な倫理学説の批判に取り組みました(これは前者の事柄そのものを扱う研究です)。一方で、博士後期課程においては、指導教授の指導方針に従い、 ― 昭和の頃から中央大学において重視されてきた ― 後者の哲学史的な研究に立ち帰り、ニーチェのテクストを広いコンテクストから読解することにより、ニーチェの哲学において難解を極める永遠回帰思想の解明を試みました。博士前期課程と博士後期課程とが、方法においても主題においても、連続しておりませんので、博士後期課程においては、一からのスタートとなり苦労することもありましたが、おかげで様々な研究方法や研究対象に取り組むことができました。

ご自身にとって大学院はどのような場でしたか

私は、博士前期課程時代には、仕事をしながら研究をし、修士論文を自分の研究キャリアの総決算とするつもりでしたが、野に下って外から哲学研究の状況を観ているうちに新しい問題意識を抱くようになり、意を決して仕事を辞め博士後期課程に入り直しました(幸いにして勤め先の社長がかなり多めの退職金を払ってくださったことが博士課程の研究生活の安定に繋がりました)。

博士前期課程時代は、働きながら研究していたため、孤独な研究生活でしたが、博士後期課程時代は、他大学の大学院生との交流も深まり、研究ばかりの生活だったにもかかわらず、むしろ人との交流は増し世界が広がりました。

大学院時代の印象に残っている出来事について

私には学部時代から足かけ20年以上お世話になっていた指導教官がおります。その先生は、放任主義で、どの学生からも優しい先生だと思われていましたし、実際に優しい先生だったのですが、ある年の哲学専攻の院生総会で大学院生主体の研究発表を嫌がる声が強く上がったとき、とても静かに怒られたのが今でも印象的です。先生によれば、大学で研究しているなら自分の研究していることについて話したり書いたりしたくなるはずだということでした。自分のパフォーマンスが他の研究者と比べてどうであれ、また自分のキャリアに結び付くことがあろうとなかろうと、自分の研究を発信したいという姿勢こそ研究者なのだと、なにより教えられました。ただ、その先生が在任中に私自身が博士論文を仕上げられなかったのはなにより残念です。

修了後の進路について

今後も研究者として研究を続けます。また、中央大学文学部で非常勤講師として授業を担当する予定です。

受験生へのメッセージ

大学院は予想以上に時間とお金がかかるところです。ゆとりにゆとりを持って自らの研究計画と工程表を思い描いておかなければ、簡単に足をすくわれます。学会で業績を積まねば、博士論文の執筆資格を取得することはできませんし、学会で業績が認められるのにも時間がかかります。また、複数の学会に所属しておかねばならないので、毎年、少なからず年会費を払い続けねばなりません。そして、最新の研究動向を追うためにも、大学の図書館が買い入れてくれるよりも早く、高価な研究書を買い漁らねばなりません。

中央大学は、設備費も授業料も、他の多くの大学より安いように思いますが、遊び半分で大学院に入ると、気付いたときにはお金も若さも失っているなどということになりかねません。私が博士後期課程に進学するとき、指導教授は、君の身の上を保障することはないよ、と正直に告げ、そのうえで、研究したいことがあるなら研究しなさい、と言ってくれました。

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