大学院

【究める Vol.22】活躍する修了生 鈴木祐太さん(経済学研究科博士前期課程2019年度修了)

2020年03月09日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。第22回は経済学研究科前期課程を修了した鈴木祐太さんにお話しを伺いました。

     鈴木 祐太(すずき ゆうた)さん
    2019年3月に経済学研究科博士課程前期課程経済学専攻を修了し、
     修士(経済学)の学位を取得しました。

   在学中の研究テーマ
    「労働市場の未来推計2030 」
    (中央大学・パーソル総合研究所共同研究成果)です。

   2019年4月からは
    P&Gジャパン株式会社に勤務

 

大学院への進学

 私は、学部卒業後に一度就職し、3年間の社会人経験を経て大学院に進学しました。また、もともとは理系の道を歩んでおり、大学の学部では電気電子情報通信工学が専門で『ロボティクス・空間知能科学研究室』に所属していました。そして、卒業後の就職先ではエンジニアとして、ものづくりに従事していました。では、なぜそこから経済学研究科に入学したのか、その理由を端的に申しますと、経済学とデータ分析(計量経済・統計学)の知識とスキルを習得したかったためです。なぜなら、技術水準が加速的に進歩し、物が溢れコモディティ化による価格競争が激化してきている状況下において、企業の現場では単に良いものを作っても売れるとは限らない、あるいは、技術的に優れていたとしても消費者のニーズにマッチしていないと言った評価を受けるものが多くなっていたためです。そのため、日本の高い技術力は社会にどのようなインパクトを与えているのか経済学の観点から明らかにした上で、新たなリソースとして様々な現場で普及してきているデータを活用し、エビデンスに基づく実用的な戦略立案ができるようになりたいと考え、大学院に入学することを決めました。

大学院生活を振り返って

 指導教授をはじめ、大学院事務の方々、学生の皆様から多くのサポートを頂き、主に2つの研究に取り組みましたので、それぞれ概要を簡潔にまとめさせて頂きます。

 

(1)「労働市場の未来推計2030 」(中央大学・パーソル総合研究所共同研究成果)

 こちらは人事領域のシンクタンクであるパーソル総合研究所と共同で取り組んだプロジェクトです。労働市場の需給モデルを開発し、2030年に644万人の人手不足になるという推計値と、その人手不足を埋めるための4つの方向性についてプレスリリースしました。なお、本研究の目的は644万人という値そのものではなく、未来の労働市場の姿を推計することで、社会や企業、そして我々一人ひとりが、早い段階で適切な対策を検討できるようにすることであります。

※ 研究成果の詳細は以下のURLをご参照ください。

http://rc.persol-group.co.jp/news/files/future_population_2030_3.pdf

 

(2)「情報技術(IT)は日本の労働市場にどのような影響を与えてきたのか?」(修士論文)   

 次に、修士論文についてですが、これまでの技術革新に代表されるIT技術が日本の労働市場に与える影響を量(投入量)と質(賃金や仕事満足度)の両面で分析し、修士論文にまとめました。IT技術が労働者にもたらした効果のうち最も重要な問題は、雇用の数ではなく、労働者の質の変化への影響である事を実証結果と共に記述しています。

※研究成果の詳細は2019年1月に提出した修士論文をご参照ください。(修士論文は中央大学大学院図書室で閲覧することができます。)

 

 修士課程での2年間は、忙しくも楽しい日々で本当にあっという間だったなと感じます。ただ、2年間あれば、その中で修論・就活・共同研究と多くの活動に取り組むことができ、それぞれが私にとって貴重な経験となりました。

進路の選択・就職活動

 大学院卒業後は、企業に再び就職しようと考えていましたので、研究活動と並行して就職活動を行いました。現在勤めている会社に入社するきっかけとなったのはインターンシップに参加したことです。そこでの内容は、製品・流通経路・購買者が多様化している複雑な状況の中で、ビジネスとして継続的に伸長していくための戦略や企画を立てるというものだったのですが、難易度の高さを痛感すると同時に、これまでに培ってきたスキルを活かせる舞台があり、P&Gで働くやりがいを実感することができました。また、様々なバックグランドを持った優秀な方々と協働してみたいと思い入社を決めました。

現在のお仕事

 入社後、約1ヶ月のトレーニングを経て、現在は神戸で複数のカスタマーのアカウントマネジメントを行っています。そこでは、半年ごとの製品投入量やファンド等のプランニングをすると共に、市場データやカスタマーのPOSデータを分析することで、ビジネスの機会を解明し、自社の製品を活用して中長期的にカスタマーのビジネスを伸長できるよう協働しています。また、社内においては、所属チームの中で、市場データから消費税増税のインパクトや、新商品発売後の市場動向などをレビューしたりしています。

 今後のキャリアについては、会社のビジネスニーズにもよりますが、個人的なインタレストとしましては、エンジニアの経験や大学院で学んだデータ分析、統計解析のスキルを活かしてデータアナリティクスの方にフォーカスしていきたいなと考えています。但し、メーカーにおいてはデータそのものが売上になる訳ではないので、ビジネスの現場では何をベースに意思決定がなされているのかをきちんと理解し、そこから見えてきた仮設をデータで実証することで効率的かつ効果的にビジネスをドライブできるよう貢献できればと考えています。

受験生のみなさんへ

 修士課程の研究活動では、ご自身の興味・関心に基づいた研究テーマを設定し、これまで明らかになっていなかった因果関係やメカニズムを解明することで、新たな知見を築いていく研究の楽しさを学ぶことができます。また、教授の方々をはじめ、様々な分野の有識者や研究者の方との交流から新しい景色や、新たな道が開けたりすることも大学院の魅力であると思います。

 博士課程へのステップとしてはもちろんでありますが、企業への就職を考えてえている学生にとっても、高スキル労働者のニーズが高まっているように感じますので、経済学研究科への進学は有意義な選択であると思います。進学を検討している方は是非、チャレンジしてみてください!