大学院新着ニュース

2020年02月10日

【究める Vol.19】鶴見周摩さんの論文が『Scientific Reports』に掲載されました(文学研究科)

「究める」では、大学院に携わる人々や行事について紹介します。第19回は、文学研究科博士後期課程の鶴見周摩さんにお話しを伺います。

鶴見周摩(つるみ しゅうま)さんは、

文学研究科博士課程後期課程心理学専攻に在籍。年に数本の論文を執筆し活発に研究活動を行っており、2019年7月に電子ジャーナル『Scientific Reports』に論文が掲載されました。さらに11月30日行われた日本基礎心理学会第38回大会学生オーラルセッションでファイナリストに選ばれ高い評価を得てベストプレゼンターとしても表彰されました。

鶴見さんの論文「Infant brain activity in response to yawning using functional near-infrared spectroscopy」がご覧になれます。
Scientific Reportsへのリンク

日本基礎心理学会第38回大会学生オーラルセッション
オーラルセッションへのリンク

Chuo Onlineに掲載された鶴見さんの記事「日本学術振興会特別研究員(DC1)としての研究活動」がご覧になれます。
Chuo Onlineへのリンク

大学院進学の志望動機

―心理学に興味を持ったきっかけはなんですか?―

心理学を意識し始めたのは高校生の時、心理学の本を読み興味を持ちました。もともと人と人との関係というものを気にしていたのですが、本を読むようになって、人の意識・無意識について考え調べるようになりました。例えば国語の授業で音読するときに読み間違えてしまうことがあります。その時に間違えたことを気が付かない人がいる、それはなぜだろうと考えることがありました。気が付いていないのか、文書の意味自体はスルーしても変わらないので、気にせずにいるのか、そのようなことを不思議に思うようになり、心理について学んでみたいと興味を持つようになりました。

 

―中央大学に進学を決めた理由を教えてください。―

中央大学に心理学専攻があったので受験しました。もともとは教員になろうと思って教職課程を取っており、心理学については、ふんわりと“学べたらいいな”としか考えていませんでした。最初は教員になる為、学校カウンセリングなどを学ぶ臨床心理学に進もうと思ったのですが、まずは基礎系から学ぶことが大事と臨床の先生にアドバイスをもらい、基礎系のゼミに入ることにしました。

 

―大学院への進学を考えたタイミングや動機を教えてください。―

大学院進学は大学1年の時から考えていました。心理学を知ることによって、子供のときからあこがれていた教師になるか、心理学の道に進むか悩むようになりました。しかし、大学で心理学の授業を受けたことで、ずっと心理学に携われたらいいなと、博士後期課程にも進もうと思うようになりました。先生方にも、大学院に行きたいことや臨床と実験系のどちらに進むべきかなど、親身にご指導いただきました。 大学院に行くことを考えていたので、3年生の夏終わりに、山口先生が行っている赤ちゃんを対象とした知覚実験に参加し、お手伝いをしました。先生からも学部3年のゼミ論を書く時期あたりから、それまで以上に熱心なご指導をしていただきました。厳しい指導でもあったので、不安もありましたが教職も取っていたこともあり、気負わずにやれるだけやってみようと当時は思っていました。全然指導をされないよりは、熱心に指導していただき業績を増やしていきたいとやる気がでました。 進学相談会にも参加し、入試の情報や先輩方の話など、相談会でしか聞けないことを聞くことができました。

大学院生活について

1日の過ごし方を教えてください―

ほとんど大学にいます。朝9時過ぎから赤ちゃん実験の準備、10時から13時まで実験をしていることが多いです。実験が終わった後は、ひたすらデータ解析や論文の執筆、自身の研究に関する論文を読んでいます。また、学会発表があるときにはその準備などもしています。実験に参加してくれる(3か月から8か月)赤ちゃん(研究員)の募集を研究室でしているのですが、ありがたいことに多くの募集があり、1週間月曜から金曜まで実験を行え、多くのデータが蓄積できます。設備も整っていますし、毎日実験できることが山口研究室の魅力の1つでもあります。1日ほぼ実験で時間を費やしているので、アルバイトをしている時間がありません。RA(リサーチ・アシスタント)だけです。日本学術振興会特別研究員(DC1)なので研究費を支給されているため、アルバイトはせずに研究に集中することができます。土日は学会や研究会がないときは休みで、自宅で作業したり、フリーな時間を過ごしています。

研究について

学部時代・博士前期課程・博士後期課程と研究を進める上で違いはありましたか?―

早い段階で大学院を目指していることは先生もご存じだったので、学部4年生で、すでに大学院と同じような研究指導をしていただけました。博士前期課程に入学してからも、その延長といった感じで、学部時代からの違いをあまり感じませんでした。強いて言えばTA(ティーチング・アシスタント)を任されるようになって、学生達とどのように接するか考えたり、学会発表の準備をしたりすることは学部時代にはなかったことです。

 

大学院に入ると主体的に研究テーマを決めて、自分の研究を見つけていかなくてはいけないと思うのですが、研究テーマはどのように決めましたか?

卒業論文は「あくびの動きに対する乳児の選好と脳活動の検討」について、修士論文は「高速逐次視覚提示(RSVP)課題を用いた乳児の視覚的 注意の発達過程の検討」について執筆しました。 学部3年のゼミ論の時に、「実験としてやるなら何がやりたい?」と先生に聞かれ、周りは結構難しそうなことに手を出している人が多くいました。自分は、今の自分でできる範囲のことでできるものがあると思い、その時興味があった「あくび」をテーマにしました。「あくびは伝染する」言われていて、他人があくびしているのをみると自分もつられてあくびをしてしまうことがあります。このあくびの伝染は、他者に共感することを示す信号に近いと言われたりもしますが、未だ明らかにはされていません。そこで、このあくびの伝染についてゼミの時に発表を行いました。実験で実際に提示するあくびの動画を先生方に見せたところ、赤ちゃんにも応用できるのではないかとアドバイスをいただき、「あくびの動きに対する乳児の選好と脳活動の検討」の研究につながりました。この後に注意の研究を始めました。元々、意識や無意識に興味があり、意識と密接に関わっているとされる注意を調べることで、人の意識について研究したいと考えました。最初は、高速逐次視覚提示(RSVP)とは異なる注意(object-based attention)について研究を行い、論文を執筆しました。その後、RSVPの研究を始めました。

 

心理学にはいくつは実験系の分野がありますが、今の研究を選んだのはなぜですか?

最初は脳に興味があり、脳を調べれば人がどう感じているかなどの意識の本質がわかると思っていました。山口研究室に入ったきっかけとしては「あくび」の研究をするときに赤ちゃんに携わったことです。先輩たちの実験を見ていくうちに赤ちゃんって面白いなと。単純に発達・成長していろんな能力を確立していくというよりは、大人ではできないようなことができる段階があって、それが無くなっていき、徐々に大人に近づいていくといった実際はより複雑ですが発達の変化が面白く、実験をやっていくうちに興味を持つようになりました。山口研究室では、一人ひとり調べていることは異なりますが(注意や顔認知など)、赤ちゃんを対象にしている点で共通です。大学院を選ぶときに先生のスタンスを確認し自分とマッチングするかを考えることは大事だと思います。

 

鶴見さんが専門とする実験心理学とは、どのような研究ですか?

人の心的プロセスを実験的な手法に基づき検討していくことが実験心理学です。何らかの出来事に対する反応時間や脳活動の変化といった、人の心理という主観的なものを客観的な数値として計測することがこれにあたります。その上で重要なのは、調べたい要因とは関係ない余計な影響を実験的に統制し、得られた結果に対して統計を行うことです。信頼性と妥当性がともに高くなるような実験にする必要があります。こうして得られたデータから人の心理を考察していきます。よく大学で心理学を学びたい人や新入生から”これも心理学なの?””想像と違う”など言われます。それは心理カウンセラーなど人と接することを心理学と思っていた人たちにとっては当たり前のことだと思います。しかし、実験で得られた知見が現場(カウンセリングなど)でいかされ、また現場で見られた現象を実験的に検討していくこともあり、相互に関わっているのも事実です。私は実験に興味があり楽しくやっていますが、どちらも魅力がありやりがいのある領域だと思います。

 

論文はどのくらいのペースで執筆していますか?

論文は、実験してデータを取り終わり、論文化しようと思ったタイミングで書くようにしています。目標は、1年に1~2本は書きたいと思っています。この目標は大学4年生の時から変わらず持ち続けています。卒業論文を書き上げてからすぐ別の論文の準備に取り掛かりました。実験から論文掲載までに1年から1年半くらいの期間がかかります。論文を投稿しても、査読審査があるので、掲載されるまでに時間がかかります。

 

海外の学術誌の投稿や学術国際会議に参加することが多いと思いますが、語学はいつ勉強しました?

もともと英語は好きで、大学でも毎日英語を読むようにしていました。大学2年の時には、英語で書かれている心理の本を読み、3年からは毎日、英語の論文を読むように続けています。論文の構成はどれも共通なので、どのような書き方であると読みやすいのか、インパクトが増すのか、なども考えて読むように心がけています。鈍らないように英語には毎日触れるようにしています。

 

―『Scientific Reports』に掲載されたことに先生方も高い評価をされていますが、投稿することになったきっかけはなんですか?

(論文題名)「Infant brain activity in response to yawning using functional near-infrared spectroscopy」は大学4年の「あくび」をテーマにした論文で、投稿したのも大学4年を終えるときです。投稿してからのアクセプト(掲載決定)に1年以上かかりました。投稿するとエディター(編集担当)が付くのですが、担当が急に辞めてしまったり、査読の結果が出るのに時間がかかったり、あまりにも長いので取り下げようかと思ったくらいで、色々な意味で思い入れの強い論文です。雑誌にはインパクトファクター(影響度)というその雑誌に掲載された論文がどのくらい引用されるかの頻度を示す指標があります。この指標は自身の研究を投稿する際の指標になり、今回発表した論文もそれを考えた上で投稿に至りました。高い雑誌に出す分リジェクト(掲載不可)になる可能性も上がりますが、研究をする上でいちいち止まっていることはできません。今回『Scientific Reports』にアクセプト(掲載可)されたことは素直に嬉しく、研究のモチベーションもあがりました。

進路について

―今後の計画・進路について教えてください。

今、博士課程1年ですが、3年で博士学位を取ることを目標にしています。博士学位を取得し、 PD(日本学術振興会の特別研究員)になって、希望する研究室に行けたらと思っています。赤ちゃん研究も続けていきたく、博士取得後に海外で研究もしてみたいです。

受験生のみなさんへ

受験の準備は、過去問題集を見て勉強したり、心理の先生方の著書を読んだりしました。 中大生に限ると学部の時に授業で使ったレジュメを取っておき復習しておくことをお勧めします。 また、「何を目的に大学院に行くのか」は大事だと思います。目的によって入学後の過ごし方が変わってきます。目的は、はっきりしておいたほうがいいですね。