新年のご挨拶　－理事長　大村雅彦－

明けましておめでとうございます。

　3年ほど続いた新型コロナ・ウイルスの猛威は下火になり、私たちの活動も3年前の平常に戻りつつあるようです。昨年度は学員会の各支部の総会のリアル開催が全国で一斉に復活し、お陰様で私も忙しい週末を過ごしました。私たちはコロナ・ウイルスと共存しながら生活や仕事を進めていくという時代に入ったといえます。

　大学は、新型コロナ・ウイルスの経験を経て、対面型授業を基本としつつオンライン型授業をうまく組み合わせることによって、学生の多様なニーズに応えています。この短い期間に進展したＤＸの経験は、おそらく本学の教育研究活動にこれからも生き続けるでしょう。教職員や役員の会議も同様であり、仕事のスタイルに柔軟性が生まれました。国際大会に出場する優秀なアスリート学生がオンラインで授業に参加できるなど、グローバルな局面でもオンライン方式が有意義に活用されていくことを期待したいと思います。

　コロナ禍のため、三大駅伝大会も沿道での応援が制約されるなどの影響を受けましたが、少しずつ通常の姿に戻ってきました。そして、昨年の箱根駅伝では本学は総合2位という近年にない立派な成果をあげ、出雲駅伝では7位、全日本大学駅伝では4位という成績でした。かなり力を付けてきていることは確かでありますので、記念すべき第100回の箱根駅伝での成果を期待したいと思います。

　中央大学中長期事業計画「Chuo Vision 2025」は2024年度に9年目を迎えます。多摩キャンパスのグローバル・ゲートウェイやフォレスト・ゲートウェイは学生たちの生活の中に定着し始めており、多摩キャンパスの新しい表玄関としての賑わいを感じるようになってきました。都心では、茗荷谷キャンパスが完成して法学部が移転し、理工学部・国際情報学部およびロースクールとの連携を踏まえた法学教育が始まりました。市谷田町キャンパスでは、国際情報学部の大学院がこの春からスタートしました。新駿河台キャンパスでは、学員の都心拠点を確保しながら、ロースクールとビジネススクールが移転して活動を開始しました。さらに、後楽園キャンパスの1号館の建替え工事も進行中です（2025年供用開始予定）。本学は、最大規模の多摩キャンパスと、新たに拡充された都心キャンパス群とで構成されることになり、これを機に、大学教育とそれを支える各種サービスのDX化を一層推進し、キャンパス間の連携を高めて参ります。

　そろそろ次の中長期計画（仮にCHUO VISION 2035と呼ぶことにします）の策定を視野に入れる時期に入っています。2024年1月から、総合戦略推進会議を総合戦略会議に改め、この新会議の下でCHUO VISION 2035の策定を進めることになりました。そこでは、いうまでもなく、2035年頃に始まる多摩キャンパスの大規模整備計画を作ることが1つの柱となります。教学（とりわけ、中堅や若手の教職員）の意見を中心に据えた計画を策定したいと考えています。

　ところで、昨年も予告したことですが、「法と正義の資料館」を炎の塔の中に開設し、基本的人権の擁護や正義の実現に多大な貢献をされた本学卒業生などの功績を顕彰することに致します。4大公害訴訟において被害者のために最初の勝訴判決を勝ち取るうえで決定的に重要な役割を果たされた松波淳一弁護士、広島で被爆したアメリカ軍兵士（捕虜）に関する詳細な事実関係を調べ上げて遺族やオバマ大統領から感謝された森重昭氏、戦時中に大政翼賛会の下で行われた衆議院選挙を官憲による選挙妨害を理由に無効と宣言する判決を下した唯一の裁判官である吉田久大審院判事（後の中央大学法学部教授）など、歴史に残る功績を上げられた本学の卒業生は、この資料館で顕彰すべき人々であります。しかし、本学関係者に限らず、例えば、奴隷解放宣言を発出したリンカーン大統領、女性の権利実現のために生涯をかけたルース・B・ギンズバーグ連邦最高裁判所判事など、現代の若者に注目してもらいたい人物を広く取り上げる公共的な資料館としてこれを発展させて参ります。それがこの資料館への最大寄付者たる奥野善彦（よしひこ）弁護士のご意向であり、私もその趣旨に賛同致します。

　最後に、教職員の日頃の地道な活動を通じて教育研究の高度化や産学官連携を推進するとともに、大学と学員との連携を強化していくことが、学生たちの学びを充実させ、社会貢献の意欲を高め、さらには、中央大学を「世界に存在感のある大学」へ押し上げることにつながっていくものと、私は考えています。法人役員も微力を尽くして参りますので、教職員の方々はもちろん、全国・全世界の学員の皆様のご協力・ご支援をよろしくお願い申し上げます。

　皆様にとって実り多き年になることを祈念して、年頭のご挨拶と致します。

　　　2024年1月1日

学校法人中央大学　
理事長　大村雅彦