広報・広聴活動

中央大学・自治医科大学・国際医療福祉大学病院・認定NPO法人カタリバと那須塩原市が連携して、病院でヤングケアラーを発見し、地域と協力して支援するプロジェクトを開始

2023年11月28日

中央大学(本部:東京都八王子市)の髙瀨堅吉教授(専門:発達生物心理学・臨床発達心理学)は 、2023年11月28日(火)、自治医科大学・国際医療福祉大学病院・那須塩原市・認定特定非営利活動法人カタリバ(以下、認定NPO法人カタリバ)と連携して、病院でヤングケアラーを発掘・支援するプロジェクトを開始しました。

「ヤングケアラーをどう見つけるか」は社会的な課題

本来大人が担うべき家事や家族のケアを日常的に行っている「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたち。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年に行ったヤングケアラーの実態調査(※1)によって中学生の17人に1人が家族のケアを担っていることが明らかになりましたが、2022年に株式会社日本総合研究所によって小学生を対象に行われた調査(※2)で、15人に1人の小学生もまた家族のケアを担っていることが分かりました。

しかし、日常的なケアを「お手伝い」だと認識している、精神的なサポートなどを行っている場合そもそも「ケア」を担っている認識すら持てないなどの理由から、ヤングケアラーを発見し、支援することの困難さが社会的な課題となっています。

学校現場でちょっと気になる様子の子どもが見つかっても、家族への配慮から本人が相談を控えてしまったりすることもあるため、なかなか特定は難しい状況にあります。また家族の世話に長時間を要する場合、学校での居眠りや、遅刻・欠席などが続き、不登校へとつながってしまうケースなどもあり、子ども自身が学校や社会とのつながりを持てなくなってしまうこともあります。

※1:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和3年、3月)
   https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2021/04/koukai_210412_7.pdf
※2:株式会社日本総合研究所「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和4年、3月)
   https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/2021_13332.pdf

病院だからこそ、ヤングケアラーを見つけられるかもしれない

本プロジェクトで連携する認定NPO法人カタリバでは、2021年12月より「キッカケプログラム forヤングケアラー」プログラムを開始し、ヤングケアラーとその家族向けのオンライン伴走型支援に取り組んできました。現在は、およそ60名のヤングケアラーの子どもと、その家族をサポートしています。

しかし先述したように、支援が必要である認識がないヤングケアラーの子どもも多く、当事者の発見が難しいことは、課題の1つとなっていました。今回のプロジェクトでは、小児外来の医療者が問診などを通して家族歴や困りごと等をヒアリングしながら、ヤングケアラーを発掘し、支援につなげていきます。

小児外来では、中長期にわたる病状を持つ場合、家庭でのケアやサポートについても問診でヒアリングしていくため、通常業務の中でヤングケアラーのスクリーニングが可能です。また、保護者やきょうだいと一緒に来院することも多いため、家族の様子も知ることができます。子どもも、学校の先生にはなかなか言いにくいことでも、第三者である医療者には話せる場合があります。

将来的には、さまざまな地域での展開も

本プロジェクトは2023年6月より検証を開始し、すでにヤングケアラーの子どもの発掘や支援への誘い出しを始めています。病院でヤングケアラーと判断した子どもには、パソコンを病院に設置して認定NPO法人カタリバのオンラインプログラムへテスト参加してもらったり、また地域のNPOの食事支援や居場所にもつながっていけるよう、働きかけています。

本プロジェクトはまだ実証研究の段階ではありますが、モデルが確立できたら別の地域や病院へも知見を共有し、より多くのヤングケアラーとその家庭に支援を届けていくことを目指します。

<本プロジェクトにあたっての連携団体と問い合わせ先>

・那須塩原市
 
子育て支援課(担当:亀田(かめた))
  〒329-2792 栃木県那須塩原市あたご町2-3
  Tel:0287-46-5532

・自治医科大学
 門田 行史(もんでん ゆきふみ)(自治医科大学小児科学講座)
  E-mail:mon4441977319[アット]jichi.ac.jp
 吉田 智美 (よしだ  ともみ)(自治医科大学研究支援課)
  〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
  Tel:0285-58-7550
  E-mail:shien[アット]jichi.ac.jp

・国際医療福祉大学病院
 上田 清史 (うえだ きよし) (国際医療福祉大学病院 リハビリテーション室)
  E-mail:ueda[アット]iuhw.ac.jp
 八尾 淳史 (やお あつし) (国際医療福祉大学病院 総務部) 
  〒329-2763 栃木県那須塩原市井口537-7
  Tel:0287-39-3060
  E-mail:kaokjt[アット]iuhw.ac.jp

・認定特定非営利活動法人カタリバ
 和田果樹(キッカケプログラムforヤングケアラー担当)
  〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3丁目66−3 高円寺コモンズ 2F
  取材問い合わせ先:https://www.katariba.or.jp/report/
  その他問い合わせ先:https://x.gd/q3Nu9

【那須塩原市 ケアラー協議会】
ケアラー当事者や医療福祉関係者、行政、議員などの多様なメンバーが集まり、学校や地域向けの啓発活動やLINEなどの相談窓口運営、サポート体制構築強化に向けたネットワークづくりを行っている。

【子ども第三の居場所  AppleBase】
運営法人*一般社団法人AppleBase
日本財団「子ども第三の居場所」事業の採択を2022年に受けて、今年で2年目の児童施設。行政や地域のサービス・支援を受けられない児童や、地域や連携企業からリーチした支援の必要な児童を受け入れ。困難を抱えていない児童も塾や学童のような利用もでき、家以外の安心して過ごせる居場所作りを目的に設立。未就園児から高校生、地域の高齢者まで様々な方が利用可能。児童を見守るスタッフは、教員免許、作業療法士、理学療法士、保育士などの有資格であり、児童は学習や食事、入浴、洗濯、体験活動、宿泊など生活基盤の習得から学習までを集団で行い、非認知能力と生活力の習得の先の学力向上まで総合的に支援を行っている。現在登録者数60名、利用料無料(イベントや体験活動は別途料金が必要)


<取材に関するお問合せ先>
 中央大学 研究支援室 
  TEL 03-3817-7423または 1675 FAX 03-3817-1677
  E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac

※上記アドレスへご連絡いただく際は、[アット]を【@】に変換して送信してください。