広報・広聴活動

文学部出身の漫画家 今井哲也氏原作の劇場アニメ「ぼくらのよあけ」試写会・トークショーを開催しました

2022年10月27日

 文学部出身の漫画家、今井哲也氏が講談社「月刊アフタヌーン」で連載した「ぼくらのよあけ」の劇場アニメの試写会とトークショーを、10月19日(水)、多摩キャンパスで開催しました。本編映画上映後、今井氏と監督の黒川智之氏が登壇。文学部の学生やアニメーション研究会の学生・OBらを中心に約120名が参加し、特別試写会後に今井氏と黒川監督が学生からの質問に答えるトークショーを実施しました。

 本編上映後に盛大な拍手と共に登壇した今井哲也氏と黒川智之監督。母校の中央大学に久しぶりに訪れたという今井氏は「不思議な気持ちです。改めて大学にこうして(先生として)迎えられるのは、大学で学んだことを活かした結果でしょうか?」と笑いを誘いつつ、母校でのイベント登壇に嬉しそうな表情を見せていました。黒川監督は「本日はお邪魔しています。こうして実際に映画を観た方の前に立つのは本当に貴重な機会です。」と挨拶し、感慨深く会場を見渡していました。

 

■映画『ぼくらのよあけ』中央大学特別試写会 概要

実施日時 10月19日(水)
会場 中央大学多摩キャンパス
登壇者 (監督)黒川智之、(原作)今井哲也

画像素材 

コピーライト

オフィシャルスチール4点:
https://56.gigafile.nu/0127-e1a3b206546940ff354f138e16f2b593
(c)今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

 

~本編映画上映後、学生からの質問に今井氏と黒川監督が回答~

■研究会のOB漫画家になった経歴を知りたい
(今井氏)「学祭前は研究会のみんなと模造紙にポスターを描いたりしていました。元々漫画を描くのが好きで学生時代も趣味で描いていて、大学4年生の時に新人賞を獲ったので就活をせずに漫画家を目指すことになりました。2年くらい地元の書店でアルバイトをしながらネームを出していました。その後「アフタヌーン」でデビューして、『ぼくらのよあけ』は2つ目の連載です。」

■映画監督を目指したきっかけは?
(黒川監督)「最初から“監督”になりたい少年ではなく、(悠真たちと同じ)小学生のころはSF映画が好きだったので、ミニチュアを作ったり特殊メイクをやりたいと思っていました。高校の時に、とある映画との出会いをきっかけに映画監督を目指すようになりました。」

 

■団地の思い出、地球外生命体との接触、人間とA Iの関わり、の三つのテーマが複雑に関わっている印象を持ちました。アイデアのきっかけを聞かせてください。
(今井氏)「原作を書いたのが10年以上前なのでうろ覚えですが、最初に“昔地球に来て眠っていた宇宙船を子供たちが見つける”という発端から、宇宙船がしゃべったら?面白い宇宙船も子供たちもどちら側にもロボットがいたら?などとプロットを作っていきました。影響としては、私は「ドラえもん」がすごく好きなので、 “人間とロボットが友達”など、影響を受けているところがあると思います。」

(黒川監督)「原作から劇場アニメにする際に、子供たちがいきいきとしている姿やAIと友達になるところを描きたいと強く思い、脚本を担当した佐藤大とアイデアを出し合いプロットを作り、今井さんに話の骨格を提案しました。原作が素晴らしくドラマとしてチャレンジングだなと思ったのは“わかりやすい悪役”が出てこないこと。(悪役がいると)そこでアクションができるので全体の話が組み立てやすく、ハラハラドキドキし、わかりやすいのですが、この映画ではそういった悪役はいないけど120分の映画として盛り上げなくてはいけませんでした。」
 「主人公の悠真にとって、わかりやすい敵はいませんが何かと戦っているように感じられるように、映画では原作にはない“団地が取り壊される”という要素を入れて、“引っ越しの準備をしない”など悠真なりの信念や反抗を描きました。わかりやすい悪役がいなくても120分のドラマが描けるんだという発見がありました。」
 

■今井先生の作品に登場するキャクターが繊細でリアルです。気をつけている点はありますか?
(今井氏)「作品を作るときは軸になることをメインに、どうしたら面白くなるのかを考えています。その時々に、シナリオが面白くなる台詞や性格・行動を考えることが多いです。例えば『ぼくらのよあけ』では、子供のキャラクターたちは、大人にとっての理想像的な子供とならないようにしています。また、作者としてハンドリングは難しくなりますが、子供にできないことはさせないようにしています。」

 

■漫画家人生で辛かったことは?
(今井氏)「締め切りまでに原稿を書くのは毎回大変ですね。アニメ化になると嬉しいのですが、アニメサイドからシナリオやデザインなどチェックするものが大量に発生するので、なんて大変なんだ!と思います。「『ぼくらのよあけ』は2011年1月発売号から連載し、途中に震災があり、製紙工場が被災して雑誌が出るかどうかわからなくなった時がありました。それでも、描けば誰かが読んでくれて少しでも元気になってくれるかなと思いながらネームを描いてました。」
 

■アニメーション制作で辛かったことは?
(黒川監督)「辛くない作業はないですね。産みの苦しみは漫画もアニメも同じだと思います。ただ、苦しく感じるからこそ、想いを込めて作れるところもあって、『感動した』『好きです』と言ってくれる達成感は作品を作らないと得られないです。まだ見ぬお客さんに向けて作っている感覚は常にありますね。」
 

■原作から劇場アニメする際に、限られた尺で何を描くかの取捨選択について
(黒川監督)「『ぼくらのよあけ』についていえば、脚本の佐藤さんとディスカッションし、”悠真とナナコの関係性“ “悠真とナナコの初恋物語”として描く方向性にしました。本編を観ていただくと、物語冒頭から悠真を追っかけていて悠真が写ってないシーンはほぼありません。二人に直接かかわらないエピソードはカットしていきました。」(作品がいろんな人から様々に解釈されることについて)「意図と違う時はありますが、その人の解釈があってるかどうかが大事ではないと思います。ただ、伝わることの喜びは大きいですね。」

■原作から劇場アニメする際に、限られた尺で何を描くかの取捨選択について
(黒川監督)「『ぼくらのよあけ』についていえば、脚本の佐藤さんとディスカッションし、”悠真とナナコの関係性“ “悠真とナナコの初恋物語”として描く方向性にしました。本編を観ていただくと、物語冒頭から悠真を追っかけていて悠真が写ってないシーンはほぼありません。二人に直接かかわらないエピソードはカットしていきました。」(作品がいろんな人から様々に解釈されることについて)「意図と違う時はありますが、その人の解釈があってるかどうかが大事ではないと思います。ただ、伝わることの喜びは大きいですね。」

■2049年が舞台ですが、団地があり近未来だけどノスタルジーを感じる世界観が印象に残りました。意識された部分ですか? 
(今井氏)「古いものと新しいものが混在している世界観は、現実もそうなっていますよね。元ネタは鉄腕アトムですね。古い街並みとロボットが描かれていて…。現実でも、例えば、21世紀になったら建物や道路などが一斉に入れ替わるわけではなくて、建物は古くて電話線だけ新しいなどといったように少しずつ変わっていきます。このキャンパスには10年ぶりに来ましたが、新しい建物があったり、建物は同じでも机や椅子が変わっていたりしますよね。」

 

【今井哲也氏 プロフィール】    
千葉県船橋市出身。中央大学文学部卒業。
月刊アフタヌーン(講談社)主宰の新人賞「アフタヌーン四季賞」2005年冬のコンテストで投稿作『トラベラー』が四季大賞を受賞。2008年『ハックス!』(全4巻)にて連載デビュー、2011年『ぼくらのよあけ』(全2巻)連載。『アリスと蔵六』(徳間書店)はアニメ化され、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。

【黒川智之監督 プロフィール】    
日本大学芸術学部で映画制作を学んだ後、BEETRAINを経てフリーに。
『龍の歯医者』『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』など数々のアニメ作品の演出を手掛ける。
監督作として『MURDER PRINCESS』『心霊探偵 八雲』など。2022年10月21日公開の『ぼくらのよあけ』の監督を手掛ける。
 

■映画『ぼくらのよあけ』 10月21日(金)より絶賛公開中
原作:今井哲也 「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之 脚本:佐藤 大  アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦  
虹の根デザイン:みっちぇ 音楽:横山 克 アニメーション制作:ゼロジー 
キャスト:杉咲 花(沢渡悠真役)、悠木 碧(ナナコ役)、藤原夏海(岸真悟役)、岡本信彦(田所銀之介役)、
    水瀬いのり(河合花香役)、戸松 遥(岸わこ役)、花澤香菜(沢渡はるか役)、細谷佳正(沢渡遼役)、
    津田健次郎(河合義達役)、横澤夏子(岸みふゆ役)、朴 璐美(二月の黎明号役)
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト:bokuranoyoake.com 公式Twitter:@bokura_no_yoake (c) 今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

STORY 
「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」
西暦2049年、夏。阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近するという“SHⅢ・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。

「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在は、2022年に地球に降下した際、大気圏突入時のトラブルで故障、
悠真たちが住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。  
その夏、子どもたちの極秘ミッションが始まった―