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微小管が生まれる分子メカニズムを解明 --ごく少数の直線状オリゴマーだけが微小管になる

2021年02月08日

理化学研究所
中央大学

微小管が生まれる分子メカニズムを解明
-ごく少数の直線状オリゴマーだけが微小管になる-

 

  理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経細胞動態研究チームの武藤悦子上級研究員、鮎川理恵テクニカルスタッフ、中央大学理工学部生命科学科の上村慎治教授、今井洋助教(研究当時)らの国際共同研究グループは、「微小管」の形成(核生成[1])には、初めにタンパク質チューブリンが数個つながった直線状のオリゴマーが作られる必要があることを発見しました。
 本研究成果は、微小管ダイナミクス制御の一端を明らかにするもので、微小管の制御異常が関与する神経変性疾患[2]の病態解明や、チューブリンを標的とする抗がん剤の開発に貢献すると期待できます。
 細胞の形態形成や染色体分離には、細胞骨格[3]である微小管の長さや本数が正確に制御される必要があります。そのため、細胞内のさまざまなタンパク質が微小管の新生、伸長、短縮の過程を調節していますが、新しい微小管ができるごく初期の反応である核生成のメカニズムはこれまで謎に包まれていました。
 今回、国際共同研究グループは、独自に開発した組換え体チューブリンの技術[4]を用いてチューブリン変異体を作製し、微小管への遷移状態である1本鎖チューブリンオリゴマーのサイズや形態を系統的に調べました。その結果、オリゴマーの大多数は曲線状であり成長しないのに対し、稀にできるごく少数の直線状オリゴマーだけが微小管にまで成長できることを明らかにしました。
 本研究は、科学雑誌『Journal of Cell Biology』のオンライン版(2月5日付:日本時間2月6日)に掲載されました。

 

※国際共同研究グループ
理化学研究所 
 脳科学総合研究センター 分子動態解析技術開発チーム(研究当時)
  チームリーダー(研究当時)       武藤 悦子 (むとう えつこ)
  (現 理研 脳神経科学研究センター 神経細胞動態研究チーム 上級研究員)
  テクニカルスタッフ(研究当時) 鮎川 理恵 (あゆかわ りえ)
  (現 理研 脳神経科学研究センター 神経細胞動態研究チーム テクニカルスタッフ)
  研究員(研究当時)          岩田 聖悟 (いわた せいご)
  (現 理研 脳神経科学研究センター 神経細胞動態研究チーム 研究員)
  研究員(研究当時)           林 真人   (はやし まさひと)
  (現 法政大学 生命科学部 助手)
  研究員(研究当時)          キエン・スアン・ンゴー(Kien Xuan Ngo)
  (現 金沢大学 ナノ生命科学研究所 特任助教)
  研究員(研究当時)          箕浦 逸史 (みのうら いつし)
  (現 五稜化薬株式会社 執行役員)
  研究員(研究当時)          内村 誠一 (うちむら せいいち)
  (現 株式会社ダイセル 主任研究員)
  研究員(研究当時)          牧野 司   (まきの つかさ)
  (現 東京大学大学院 医学系研究科 助教)
 生命機能科学研究センター タンパク質機能・構造研究チーム
  チームリーダー             白水 美香子(しろうず みかこ)
  上級研究員(研究当時)        重松 秀樹 (しげまつ ひでき)
  (現 理研 放射光科学研究センター 生物系ビームライン基盤グループ 研究員)
中央大学 理工学部 生命科学科
 教授                 上村 慎治 (かみむら しんじ)
 助教(研究当時)             今井 洋   (いまい ひろし)
 (現 大阪大学大学院 理学研究科 助教)
パリ・サクレー大学
 グループリーダー            ジャイジャント・ブノア(Gigant Benoît)
パリ(第7)大学
 教授                 関本 謙   (せきもと けん)

※研究支援
 本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤研究B「変異チューブリンによる重合―GTP加水分解の共役メカニズムの解明(研究代表者:武藤悦子)」による支援を受けて行われました。