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ゲノムサイズのDNAが自発的に膜に包まれる現象を実証 --細胞内外で核酸が膜でつつまれた構造が多く生じる基本的な物理原理を提案

2020年10月06日

概 要

 中央大学理工学部 教授 鈴木宏明、共同研究員 津金 麻実子の研究グループは、細胞を模擬した巨大一枚膜小胞(ジャイアントユニラメラベシクル、GUV)注1内に封入されたゲノムサイズのDNAが、分子混雑の環境下で自発的に脂質二重膜注2に包まれる物理現象を発見し、実証しました。
 ゲノムDNAが細胞の区画である脂質二重膜にくるまれた分子構造は、あらゆる細胞システムにおいて普遍的にみられます。この事実から、DNAが柔らかい界面である脂質二重膜につつまれる、特定のタンパク質の分子機構に依存しない物理的なメカニズムが存在することが予想されました。
 本研究グループは、細胞モデルとしてのGUV(細胞膜の主要構成分子であるリン脂質のみから再構成された疑似細胞膜)を用い、この内部に封入したゲノムサイズのDNA分子が、細胞内の環境を模擬した分子混雑環境下(高分子が高濃度で存在する環境下)において、自発的に膜に付着し、かつ包まれるという物理現象を予測し、実験的に実証しました。また、この現象が、高分子の排除体積効果と呼ばれる物理現象に由来するものであることを示しました。

分子混雑によりDNAが脂質二重膜に包まれて出芽する現象の模式図(上)とその蛍光顕微鏡画像(下)

 この現象は、特定の遺伝子の制御に依存しない、細胞環境で生じる普遍的なDNAの膜区画封入のメカニズムが存在し得ることを示しています。生物界には、具体的な制御メカニズムが不明な膜区画封入現象が多く存在しますが、本研究成果は、それらの現象の解明の糸口となることが期待されます。また、得られた分子構造は、ウィルスや微生物がもつ分子構造に類似しており、人工的に制御可能な巨大DNAのデリバリー等、新たなバイオテクノロジーへの応用も期待されます。

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【注意事項】本内容については、すぐに報道していただけます。
【研究者】鈴木 宏明   中央大学理工学部 教授(精密機械工学科)
     津金 麻実子 中央大学理工学部 共同研究員(精密機械工学科)
【発表(雑誌・学会)】雑誌名:ACS Synthetic Biology (Published online: )
論文タイトル: “Elucidating the Membrane Dynamics and Encapsulation Mechanism of Large DNA Molecules under Macromolecular Crowding Condition Using Giant Unilamellar Vesicles”
論文リンク:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acssynbio.0c00360

 

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