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光触媒材料中の見えない光生成キャリヤを可視化する方法を開発 ~AIによる顕微画像からの情報抽出~

2020年08月07日

中央大学
科学技術振興機構(JST)

光触媒材料中の見えない光生成キャリヤを可視化する方法を開発
~AIによる顕微画像からの情報抽出~

ポイント

・光触媒として用いられる無機半導体粒子で構成される薄膜材料の通常「見えない」光生成キャリヤを「見える」化した。
・ナノ秒時間分解の位相差顕微鏡と画像回復やデータ同化手法により光生成キャリヤの可視化及び物性値マッピングを可能にした。
・太陽光水分解、光触媒、太陽電池材料の高効率化につながる。

 JST 戦略的創造研究推進事業において、中央大学の片山建二は、ナノ秒の時間分解能をもつ位相差顕微鏡注1)を開発し、統計的データ解析手法である画像回復の方法と組み合わせることで、光触媒注2)などに頻繁に用いられる無機系半導体微粒子で構成する薄膜材料中の光生成キャリヤ(電子やホール)を可視化することに成功しました。
 光触媒・太陽電池などの太陽光デバイスでは、界面での反応を用いるため、表面積の大きいナノ・マイクロサイズの多孔質の半導体基板材料が用いられます。これらのデバイスでは、光生成キャリヤを有効に利用する必要がありますが、反応が速く、また、検出しやすい発光などを伴わないために検出が難しい問題がありました。
 本研究グループは、ナノ秒の時間分解能をもつ位相差顕微鏡を開発して、酸化チタンなどの光触媒粒子薄膜材料に適用して、光生成キャリヤによる屈折率変化を画像化しました。その際に、微小な屈折率変化を画像化するために、特定の空間パターンでキャリヤを生成して、情報解析技術を用いて画像回復することで、可視化に成功しました。さらに、データ同化注3)の情報解析技術を用いて、構造中の物性値を推定し、マッピングすることにも成功しました。
 今後、同様の半導体粒子材料が用いられている、光触媒・太陽光水分解・太陽電池材料に適用されることで、デバイス材料の高効率化につながるものと期待されます。
 本研究成果は、2020年8月7日米国物理学協会発行の科学誌「Journal of Chemical Physics」のオンライン版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
 研究領域:「計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用」
 (研究総括:雨宮 慶幸 高輝度光科学研究センター 理事長)
 研究課題名:「変調光誘起位相差顕微鏡による光生成キャリヤ寿命・移動物性評価法」
 研究者:片山 建二(中央大学 理工学部 教授)
 研究実施場所:中央大学
 研究期間:平成28年10月~令和2年3月

<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
 片山建二(カタヤマケンジ)
 中央大学 理工学部 応用化学科 教授
 〒112-8551
 東京都文京区春日1-13-27
 Tel:03-3817-1913 Fax:03-3817-1895
 E-mail:kkata◎kc.chuo-u.ac.jp (◎を@に変換して送信してください。)

<報道担当>
 中央大学研究支援室
 〒112-8551
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