広報・広聴活動

身体の持久力を保つことは脳の老化を防ぐ!

―高齢者における心血管機能と認知機能の相関性、その脳内機構を解明―

2015年10月22日

国立大学法人 筑波大学

学校法人 中央大学

 

研究成果のポイント

 

1. 高齢者では、身体の持久力が高いほど脳の認知機能が高いことを発見しました。

2. 持久力が高く認知機能の高い高齢者は若者型の脳活動、

    低い高齢者は加齢型の脳活動を示すことを解明しました。

3. 日常の活動性を維持し、持久力を高く保つことが、脳の老化を防ぐ可能性を示唆しました。

 

 国立大学法人筑波大学体育系の征矢英昭教授と学校法人中央大学の檀一平太教授の共同研究グループ は、光を用いた脳機能イメージング法である光トポグラフィ(fNIRS)注1を用い、高齢期の男性で、身体の持久力が 高いほど認知機能が高いことを発見しました。また、持久力と認知能力が高い高齢者は若者型の脳機能を保 ち、逆に、それらが低い高齢者は加齢型の脳機能へと変化していることを明らかにしました。

 

 同グループはこれまで、低強度の運動でも脳の機能が高まることを、ヒトと動物双方の研究から明らかにしてき ました。しかし、そのメカニズムに関しては不明な点が多くありました。そこで本研究では、複雑な課題を行う際に 適切な情報を選択(注意)しながら適切な行動(行動制御)をとる高次認知機能、すなわち「実行機能」に着目 し、持久力との関係を調べました。実行機能を司る前頭前野の背外側部注2 の脳活動は、若者では左優位です が、加齢とともに左右のバランスが崩れてきます。そこで、男性高齢者60名を対象に、身体の持久力、実行機 能、前頭前野の活動パターンを調べたところ、持久力が高い人ほど、実行機能を反映するストループテスト注3 の 成績が高いことを明らかにしました。さらにその際、左側の前頭前野背外側部の脳活動が右側に比べて優位に 活動している「若者型」の活動パターンを示すことを発見しました。一方、持久力の低い人ほどストループテストの 成績は低く、脳活動パターンも「加齢型」になっていました。

 

 本研究は、実行機能を維持するためには、前頭前野の機能を若者型に保つ必要があること、そしてそのため には身体の持久力が重要な要因となることを解明しました。日常生活での身体活動量を高め、持久力を維持増 進することが、脳の老化予防、ひいては認知機能向上につながる可能性を示唆する知見です。

 

* 本研究成果は、ニューロイメージング研究のトップジャーナル、米国の科学雑誌「NeuroImage (ニューロイメ ージ) 」 オンライン版 に掲載されます。

 

 本研究は、文部科学省特別経費プロジェクト「ヒューマン・ハイ・パフォーマンスを実現する次世代健康スポーツ 科学の国際研究教育拠点」(平成26年度~)、日本学術振興会戦略的国際研究交流推進事業費補助金「頭 脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム:スポーツ神経科学の国際研究拠点-認知機能 を高める運動処方を目指して」(平成26年度~)、ならびに、科学研究費補助金基盤研究B(25282243)の一 部支援を受けて行われました。

 

 研究内容の詳細は、以下のPDFをご覧ください。

 

【問い合わせ先】

<本研究に関すること>

中央大学問い合わせ先

 檀 一平太(だん いっぺいた)

 中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授

 〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27

 Tel: 03-3817-1711

 E-mail: dan@brain-lab.jp

 

<取材申し込み先>

 中央大学 広報室

 Email:kk@tamajs.chuo-u.ac.jp

 TEL: 042-674-2050 

 FAX: 042-674-2959