社会・地域貢献

教養番組「知の回廊」2014年度

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(一部、権利問題等により、ダイジェスト版のみを公開している番組もございます)。

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由比の桜えび漁にみる6次産業化の未来

桜えびは、サクラエビ科に属する小型のエビで、その美しさから『海のルビー』とも呼ばれています。日本では駿河湾や相模湾などに生息していますが、漁獲対象とされているのは、駿河湾の由比・蒲原と大井川のみで、国内で水揚げされる桜えびは、100%、駿河湾産です。水深200メートルから300メートルの深海に生息し、その生態についてはよくわかっておらず、養殖もできません。漁期は年2回で、春は3月中旬から6月初旬、秋は10月下旬から12月下旬とし、それ以外の時期は、資源保護のため休漁しています。

さらに、桜えび漁は、資源管理型漁業の一形態である『プール制』という制度を敷いています。これは全水揚げ高を、操業が許可されている120艘の船で、一定のルールに基づいて均等に配分することで、過当競争による獲りすぎや事故防止を目的として、約40年前から導入されてきた制度です。現在でも、由比港漁業協同組合が中心となり、漁業者自らが資源の保護と管理を行っています。

由比港漁協青年部では、桜えびの6次産業化をはじめ、さまざまな取り組みを行っています。6次産業化とは、一次生産者が自らの手で農水産品を加工・製造し、付加価値をつけて市場へと送り出す活動全般のことを言います。特に深海から水揚げされると、すぐに死んでしまう桜えびを、生かしたまま流通させることに成功した『活き桜えび』や、漁師ならではの食べ方の提案である『桜えびの沖漬け』。今までサイズが小さかったり、買い手が少なかったりして、市場に流通しなかった魚を、練り製品に加工する『漁師魂(りょうしだま)』などを、不断の努力と研究で、商品化に成功してきたのです。

今回は、資源管理型漁業のための、プール制という社会制度を背景にもつ、由比港漁協青年部の取り組みを紹介し、由比の桜えび漁から、漁業における6次産業化の未来を見つめます。

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今を生きる若者の人間的成長

私たちは時間の中で生きています。その時間は、過去から現在、現在から未来へと流れて行きます。時計の針を逆に回しても、過ぎ去った過去に戻ることはできません。物理的な時間は、ただただ流れていくだけです。

その一方で、心理的な時間は、現在を起点として、過去や未来へと移動することができます。過去の体験を思い出して嬉しくなったり、悲しくなったり。未来を思い浮かべて胸を弾ませたり、不安に感じたりします。私たちの心の中で、時間は、現在・過去・未来の間を、行ったり来たりするのです。こうした心理的な時間の流れを研究する学問分野を「時間的展望」と言います。

私たちは現在という時に生き、時間的展望を持ちながら、未来に向かって人生を歩んでいます。ときには過去から教訓を得ることもあり、現在の行動次第で、未来が形作られて行くのです。

では、今を生きる若者たちは、どのような時間的展望を持っているのでしょうか?

現代は、先行きの見えない社会だと言われています。バブル崩壊後の長引く不況やリーマンショック、就職難。こうした時代を生きる若者たちの中では、悩みや不安も大きくなり、未来に対する希望を、ついつい見失いがちとなります。特に大学生の場合、就職に対する不安感から、学業よりも就職活動を最優先に考えてしまい、未来のために、今しかない学生生活が空洞化してしまう傾向にあります。多くの悩みを抱えつつも、充実した人生を送りたいと願う若者たちは、現代社会をどのように生き抜けば良いのでしょうか?

中央大学文学部長 都筑学先生が、発達心理学の視点から、今を生きる若者たちへエールを送ります。

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情報貧国ニッポン

日本は自動車やエレクトロニクスなどの分野で、優れた製品を次々に開発し、世界市場で大きな経済的成功を収めてきました。モノづくりに関しては、日本は圧倒的な輸出量を誇ってきたのです。ところが『情報』に関しては、食料やエネルギー資源と同じく、大変な輸入大国です。今や我が国では、科学技術分野の先端的な情報は、海外製のデータベースや電子ジャーナルを通じて購入される『輸入品』に頼っているのです。

特に医学など理系の分野では、海外の有力な学術雑誌に論文を投稿し、その評価によって研究者の価値が決まります。そしてその成果の詳細を知るためには、学術雑誌の出版元から、この資料を購入しなくてはなりません。これはつまり日本の税金によって研究され、日本から発信された研究情報をわざわざ外国から購入しなければ活かせないという、いわば『二重払い』の悪循環に陥っているのです。

情報は貴重な資産です。我が国でも情報を整理して蓄積するための国家戦略を策定し、これを行政や企業経営の中で展開して、普及・定着させてゆかなければなりません。今回はさまざまな分野において情報問題に詳しい専門家の方々にお話を伺い、日本における情報資源の重要性を訴えます。

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放送100回記念『中央大学と近現代の日本』

中央大学教養番組『知の回廊』は、今回で放送100回目を迎えました。

これを記念して特別番組『中央大学と近現代の日本』をお送りします。

中央大学は1885(明治18)年、18人の若き法律家たちによって「英吉利法律学校」として創設されました。

明治維新後の日本では、文明開化のスローガンのもと、急速な西洋化が進んでいました。そうした状況の中で、法律関係の高い学識が求められるようになり、法学教育への需要も高まっていました。

創立者たちは、実社会と密接に結びついたイギリス法を学ぶことが、日本の司法制度の確立と近代化の達成に繋がると考え、近代社会にふさわしい人材の養成をめざしたのです。

2015年に創立130年を迎える中央大学が、これまでどのような歩みを遂げてきたのか。また、その歩みは近現代日本の歴史過程と、どのように関わってきたのかを探ります。

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都市成長戦略の再検討~八王子市まちづくり座談会~

『都市』とは、商業や工業に携わる人々の居住地です。現在のヨーロッパ都市の多くは、ローマ人集落に端を発しています。それが商工業の発展とともに都市へと成長し、周辺の農村と相互に作用しながら歴史的な変遷を続け、現在に至ります。

現在の日本の都市に目を向けると、多くの地域で商業の停滞の深刻化や、少子高齢化による人口減少、観光不況、自治体の財政難などを背景に、まちづくりの活性化が求められています。

中央大学のある八王子市は、多摩地区の中心都市として、21の大学を抱える国内有数の学園都市であり、高尾山に代表されるように、観光地としても全国的に有名です。さらに、2015年4月に中核市へと移行することになり、福祉や都市計画など事務権限の一部が東京都に移され、事務の効率化や独自のルールづくりが可能となります。国内の少子高齢化が進むなか、八王子市はどのようにして、個性ある魅力的なまちづくりを目指して行くべきでしょうか?

今回は、都市史・商業史から、まちづくりの在り方を研究されている商学部の斯波照雄教授と、八王子市の石森孝志市長、そして八王子市の成長戦略を担う有識者の皆さんと座談会を行い、これからの八王子市のまちの発展について語り合います。

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データ活用が切り拓くマーケティング戦略

ICTの急速な進化により、多種多様で膨大なデジタルデータを、ビジネスに活かす取り-組みが進められています。特に最近では『ビッグデータ』という言葉を、良く耳にするよ-うになりましたが、得られるデータは量だけでなく、質的にも大きく変化しています。
既に大企業などでは、ビッグデータを活用して、商品の開発や経営戦略に役立てていると-ころが増えており、さらにこれからは大企業に限らず、中小企業やベンチャー企業でも、-様々なデータを活用して、マーケティングや経営戦略に結びつけてゆくことが求められて-います。必要なデータを集めて分析し、現状の把握、消費者ニーズ調査、他社との差別化-や、業務の効率化にいかすなど、データの活用は、今や必要不可欠でしょう。
しかし、どれだけデータを集めても、最終的に判断するのは経営者自身です。客観的なデ-ータに基づく意思決定が重要であり、それに伴って『どのようにデータを分析するか』に-ついての知識や技術が、業界を問わず、幅広く求められているのです。
今回は、実際に様々なデータを活用して、商品開発や販売戦略を実践的に行っている企業-を訪ね、ビジネスにおけるデータ活用の現状とその可能性を探る、マーケティング・エン-ジニアリングの最前線を紹介します。