社会・地域貢献

ウチダザリガニを通して解った環境改善の大切さ

北海道美幌高等学校 環境改善班(2年 澤田 悠樹)

1 . はじめに
「あ。ザリガニだ。」2017年秋のことだった。
私が友達と網走川に釣りに行っていたときにザリガニらしき姿が見えて、私は手にとって見てみた。「やっぱり!ウチダザリガニだ!」何で網走川にまでいるのだ。すごく疑問に思った。画面1
そう思った理由は、中学一年生のときに美幌川水系の鴬沢川に特定外来種のウチダザリガニ駆除に行ったときに美幌博物館の学芸員からウチダザリガニは鴬沢川付近でしか増殖していないと聞いていたからです。駆除は思っていた以上にすごく面白くて、その時からウチダザリガニや川の環境問題について詳しく知りたいと思うようになりました。画面2

2 . 私の取り組み
そこで私は地元にある美幌高等学校に入学して、高校のプロジェクト学習の中で駆除したウチダザリガニを野菜の肥料として使っている「環境改善班で活動をしてみたい。」と思うようになりました。
2年生から遂にプロジェクト学習が始まりました。私は念願叶ってウチダザリガニの駆除やその利用法だけではなく、地域の生態系の保護や環境保全について研究している「環境改善班」に入ることが出来ました。
実際に駆除を行ってみると鶯沢川以外にも少数ではあるが下流の美幌川や網走川でも発見されていることが解ったので在来種の保護のためにもこれ以上増殖させないように効果的な駆除活動が必要なことが解りました。
その他にも高校の近くの美幌川や網走川で生態調査をしているとゴミの不法投棄が目立ち水質調査をしてみると基準値以下ではあったが、鶯沢川よりもアンモニア態窒素やリン酸態リンなどの値が高く生活排水や付近の畑から肥料が流亡していることが解ってきました。画面3
そこで下流に行くほど川が汚れているのではないかと考え、下流にある網走湖の状況は高校の周辺よりも問題を抱えていないかと思い調べてみました。そこで解ったことは、網走湖では更に生活排水が流れ込んでおり、「富栄養化」が進み湖面の一部には有害なアオコや湖底にはヘドロが堆積して硫化水素が発生している危険な状況であることが解り、環境改善班の活動を通して在来種保護や美幌川や下流にある網走湖の環境を守る活動をしていきたいと決意しました。画面4

3 . これからの目標
私は、美幌川だけではなく、オホーツク管内全体の自然環境を良くするために4つの目標を立てました。
まず1つ目は、地域のみんなとウチダザリガニ駆除をすることです。ウチダザリガニは私が中学校一年生のときに行ったときよりも、数はどれくらい減っているのか。ウチダザリガニの個体は小さくなっていて、増殖ができない状況に近づいているのかを詳しく調べて行きたいです。
現在では、鴬沢川の半径2キロ圏内にウチダザリガニはおもに増殖していますが、最近では近くの網走川や魚無川でも発見されるようになりました。
ウチダザリガニの駆除を推進して在来種のニホンザリガニ保護活動に力を入れていくのと同時に美幌川周辺の川に生息するニホンザリガニの生態はどうなっているのかを調べていき、本格的な在来種の保護に取り組んでいきたいです。画面5

2つ目は私たちが卒業した後も継続して環境保護の活動をしていくために若い世代での理解を推し進めていこうと考えています。
具体的には、今年から幼稚園児に高校で交流会を開催し、ウチダザリガニの影響について紙芝居やザリガニ試食会を計画し、中学生にも私が経験したようにザリガニ駆除の講習会を今年からは私たち高校生が一緒に参加して駆除を教えてあげながら生態系保護の重要性を伝えて行きます。画面6

3つ目は、ウチダザリガニを使った有機発酵肥料作りをより多くの人たちに普及していきたいです。作るときの問題としては、「臭い」があります。昨年までは発酵中の臭いが半径50mくらいまで広がり周囲の皆さんからのクレームがありました。そこで今年はザリガニ肥料の材料に使っていた「もみ殻」の代わりに「もみ殻くん炭」を使ってみました。これまでにも学校林の整備で出た枝を使って炭焼きをして畑や川の水で浄化試験をしていたこともあり、炭の抗菌効果と消臭効果を期待して使いましたが、結果的にほとんど臭いもなく発酵期間も昨年は2 3 日間かかったのが今年は1 8 日間で完熟し、発酵も早める効果がありました。
これで一般の人たちにも家で肥料作りをしても近所の迷惑にならず気軽にザリガニ肥料作りをしでもらえます。
野菜におけるザリガニ肥料の効果についても調査した結果を参考にして使用方法も教えていきたいです。過去4 年間の収穫量調査でカボチャやニンジンそしてハツカダイコンなどで増収の効果があることが解りました。更に今年は他の野菜でも効果があるかを調べるだけではなく、交流会などでも普及していくことを目標に取り組んでいきます。画面7
4つ目は、一昨年に私たちのプロジェクト活動を評価して下さり「応援証の受賞」 の機会を与えて下さった網走湖の漁業を取り仕切っている西網走漁協や近隣の農協や企業で組織されている「森と大地の会」の協力を得て、今年から調査範囲を拡大して美幌川水系だけではなく、下流で合流する網走川や網走湖での湖上調査を実施してウチダザリガニによる在来種の被害状況を調査していきたいです。そのほかにも、美幌川と網走川と網走湖の水質調査を行った結果、特に網走湖の水質汚染がひどい状況であることが確認されたので湖の清掃や木炭や葦を使った効果的な汚染物質除去に取り組んで在来種保護を強化していきます。画面8

4 . まとめに
そして私は、美幌町の自然が大好きです。そのためにウチダザリガニを駆除して、そのウチダザリガニの命をいただいて新しい命の「野菜」を作るということは、すごくいいことだと思います。その作った野菜を使い交流会を通じてもっといろんな人に食べてもらって「駆除したウチダザリガニの命は人のためになる。」ということをたくさんの人たちに伝えて行きたいと思います。画面9
今のままでは、人数や予算的にも元の状態の美幌川や網走川そして網走湖に戻すことは不可能だと思います。
そこでウチダザリガニの駆除や川の水を浄化する活動を高校や中学校の授業として取り入れてもらえるようによりメディアの活用や全国規模の環境関連の発表会に出場し、全国の皆さんにより多くの関心を持ってもらえるように働きかけていきます。画面1 0
私自身も高校時代に活動するだけではなく、高校卒業後もボランティア活動という形で環境保護を継続して行っていき、将来的には行政にも強く呼びかけて環境保護に協力してもらえる企業を増やしていき環境保護活動をする団体を立ち上げていきます。

付録: ウチダザリガニについてのミニ知識

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』からの一部引用。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウチダザリガニ (2018年11月1日参照) 
ウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus trowbridgii) は、エビ目(十脚目)・ザリガニ下目・ザリガニ科に分類される北米大陸原産の甲殻類の淡水ザリガニの一種で、標準和名はウチダザリガニ。日本には天然分布していない外来種。体長は15cm程度になり、ニホンザリガニやアメリカザリガニと比較してやや大型。
typyvt@eかつて本種はアメリカザリガニほどではないにしろ、ペットとして普及していた。しかし、低水温を好み、暖かい水や、汚れた水では生息できずに死んでしまうために、低温装置やエアポンプが必要不可欠であるなど、アメリカザリガニよりも飼育が難しいとされた。 
オレゴン州ポートランド・コロンビア川流域の個体が、1926年に農林省水産局(当時)が食用を目的に実施した「優良水族移植」により北海道摩周湖に移入され養殖に成功した。その後、1930年にかけて計5回輸入され、1都1道1府21県の水産試験場に配布された。
アメリカ合衆国北西部(コロンビア川水域とミズーリ川源流部)原産、カナダ南西部ブリティッシュコロンビア州。2000年代には、北海道(支笏湖・洞爺湖・摩周湖・阿寒湖・屈斜路湖等)、福島県(小野川湖、桧原湖、秋元湖)、長野県、滋賀県(淡海湖)、千葉県(利根川水系)、福井県(九頭竜湖)での生息を確認している。
北海道では、日本固有種である在来種のニホンザリガニの生息域と競合して圧倒している。水生生物(魚類・植物)の食害も深刻で、陸水生態系に大きな影響を与えている。天然記念物のヒブナが生息する釧路市の春採湖ではウチダザリガニによる水草の食害でヒブナの産卵床が食い荒らされ、合成樹脂製の人工産卵床を沈める対策がなされている。阿寒湖でも天然記念物のマリモがウチダザリガニの食害にあっていることが確認された。
感染被害も確認される。有名な事例として世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている卵菌類のアファノマイセス菌 Aphanomyces astaci (別名 ザリガニペスト)があり、ヨーロッパでは White-clawed crayfish (Austropotamobius pallipes)など在来ザリガニの局所的絶滅をもたらしている。こうした病気の日本国内の侵入は確認されていないが、ニホンザリガニはこの病気に感染すると100%死亡する。
2006年2月1日より本種は外来生物法に基づき特定外来生物に指定されている。日本生態学会では、「日本の侵略的外来種ワースト100」に本種を選定している。
北海道では駆除活動が盛んに行われており、2010年度の捕獲数は約15万匹に上っている。洞爺湖では、ボランティアダイバーの協力や篭を使用した駆除を展開し捕獲している。
単に駆除するだけにとどまらず、本種を料理にして観光資源として活用する動きも各地で行われている。釧路市阿寒湖漁協では、ウチダザリガニをレイクロブスターの名で、販売しているほか阿寒湖周辺の宿泊施設、飲食店に供給している。阿寒湖と塘路湖では、ウチダザリガニが内水面漁業規則による漁業権魚種に指定されている。外来生物法が施行されてからは、一般消費者にはボイルして冷凍したもののみを販売し、飲食店等に対しては環境省認定の梱包箱に梱包し、生きた状態で出荷されている。阿寒湖では、養殖ではなく、すべて捕獲されたものを出荷している。
釧路市では捕獲したウチダザリガニを釧路市動物園の動物の餌に活用している。
福島県裏磐梯では本種の駆除を観光につなげる試みとして、夏のシーズンに「釣って食べる!ウチダザリガニ釣り大会」が開催されている。

※論文内の写真データに関しては、個人情報保護の観点から掲載しておりません。