オランダ人戦争被害者の体験談と交流を通じて平和理解を深めました

2022年11月29日(火)、「中央大学日蘭交流会」が多摩キャンパス・グローバル館7階ホールにて開催されました。「日蘭平和交流事業」の下で来日した2名のオランダ人女性と外務省関係者が本学を来訪され、本学からは法学部学生のほか、オランダからの留学生、教員等60名近くが参加しました。
参加した学生は、彼女らの戦争体験という過去の記憶を聞いて教科書や本からは読み取れない事実を学ぶとともに、日本とオランダ間にある過去の歴史に向き合う貴重な機会となったようです。さらに、交流を通じて平和理解を深めました。
「日蘭平和交流事業」について
第二次世界大戦時、日本の支配下にあったインドネシアにおいて、オランダ人の方々が旧日本軍の捕虜・民間人拘留者となった過去がありました。戦争が終結して平和条約が交わされたのちに、日本とオランダの間で平和と友好のために、1995年より「日蘭架け橋事業」が開始されました。2005年からは外務省欧州局が主体となり、「日蘭平和交流事業」として事業が引き継がれました。以降、オランダ国内に今も残る日蘭間における過去の問題に向き合う試みを続けてきました。
この事業は、戦争の捕虜や拘留などに関わりのあるオランダ人の方々を毎年日本に招聘し、観光や交流を通じて日本および日本人についての理解を育むとともに、両国の理解を深める日蘭間の平和交流の事業のひとつです。
「中央大学日蘭交流会」とは
「中央大学日蘭交流会」は、かつて外務省に所属していた元法学部教授・元駐英大使 折田正樹(2022年逝去)の発起により、中央大学国際センター主催、外務省欧州局西欧課の協力を得て、2007年より本学で実施しています。「日蘭平和交流事業」を通じて日本に招聘されるオランダの戦争被害者の方々を本学にお招きし、学生らに戦争時の体験をお話しいただくというものです。学生たちは戦争経験に触れることにより学修の動機づけを得るだけでなく、平和理解と国際交流の場にもなっています。また、招聘者にとっては学生との対話から現在の日本の姿を知っていただく良い機会にもなります。折田元教授が退任した2014年以降は、法学部教授 宮丸裕二、法学部准教授 ピーター・ソーントンがこの事業を引き継いで毎年継続してきました。2020年・2021年はコロナ禍での渡航制限等により中止となりましたが、2022年は2年ぶりに実施されました。当初5名が来訪予定でしたが、招聘者がご高齢であることからご体調等に配慮し2名の来日・来訪となりました。
オランダ人戦争被害者の方たちによるスピーチ

「今から75年以上前、第二次世界大戦の最中で、多くのオランダ人がオランダ領東インド(現インドネシア)で日本軍により収容所に抑留されていました。私はまだ幼かったですが、収容所での大変な生活、その後の苦しみは一生忘れられません」「今回、日本を旅して、日本への印象が変わりました。長崎では平和祈念館を訪問し胸が痛みました。ここで当時オランダ人捕虜とやりとりした経験をもつ被爆者の方とお会いすることができました。日本はとても美しい国です。平和は本当に大切です」「皆さんは将来を担う世代です。二度と戦争が起きないように、平和と友好のためにがんばってほしい」等と、イナさんとアニータさんは真摯に語りました。
質疑応答・親睦会

おふたりのスピーチに続いて、学生からの質疑応答・感想発表が行われました。「空爆から逃れるために祖父母たちは穴を掘って隠れたと聞いた」、「私は祖父の体験を聞いてみたけれど、祖父からは戦争体験を聞くことができません。辛い体験を思い出したくないのだと思う。どのように心をほぐせば話してもらえるのでしょうか」、「政治家も若い人たちも、戦争体験者からリアルな経験談をぜひ聞いてほしい。きっと法づくり・整備に生かせるのではないかと思った」といった声があがりました。中には、祖父が広島の原爆で被爆したことを涙ながらに話す学生もいました。学生たちは英語で質問発表を行いましたが、時にはソーントン准教授が日本語を英語に通訳してサポートしながら進められていきました。
学生からの質問や感想に対して、「私自身も両親にもっと話を聞いておけばよかったと後悔しています。ぜひていねいに根気強く話を聞いてみてください」「若い皆さんに期待しています」等と答えていました。
続いての親睦会は、コーヒーを飲みながらアットホームな雰囲気で行われました。彼女たちに直接話を聞きたいという学生も多く、積極的に質問する学生、英会話が苦手な学生も一生懸命に英語で話しかける様子が見られました。オランダからの留学生も熱心に話を聞いていました。また、スピーチや質疑応答の内容を学生同士で活発に話し合ったり、教員と語り合う様子も見られました。交流会の締めくくりには、学生から記念品を贈呈しました。おふたりからはオランダのクッキーをいただきました。法学部教授/国際センター副所長 スティーブン・ヘッセの閉会挨拶では、体験談へのお礼、交流の機会を与えてくれた外務省へ感謝の意が表されました。