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グローバル・パーソンを目指す中大生 vol.027 四井 万緒さん

撮影/高坂 巧さん(写真研究部)

初めての海外研修で上海を訪問。そこで
海外からどんな風に日本が見られているのか、現地の同世代が
日本に対してどんな興味関心があるのかを知りました。
他の都市への興味が深まり、香港研修に参加しました。

香港でお会いした大学の先輩方や街の人々、
訪問した大学での交流や訪れた先々での新しい発見は
考え方や世界観をさらに広げてくれました。

想像力や洞察力を豊かに、
海外での経験を文学研究にも活かして成長していきたいです。

 

 子どもの頃から読書が大好きで、特に好きなジャンルや作家の先生が決まっているわけでなく、書店で表紙やタイトルを見たり、SNSで取り上げられているもの等、気になった本を1か月に10冊は読んできました。 国文学専攻に進学したのは、好きな読書をさらに発展させてじっくりと学んでみたいと思ったからです。入学後は、授業で課題図書を読むことが増えました。レポートを作成したり、授業で発表をしたりするため、一作品をじっくりと読み込むようになりました。冊数は減りましたが、そのぶん考えることが増えています。先生方からは「こんな読み方もある」「こういうモチーフからこんな考え方もできる」など、読み込み方についても指導をしていただいています。たとえ短編小説1冊であっても、アプローチする方法がたくさんあることを学び、本の読み方の幅は確実に広がっています。

アジアに行ってみる! アジアから日本を見てみよう

  2年次の春に、上海を訪問したのが私にとっては初めての海外でした。海外には興味があり、漢文を読んだり、第二外国語として中国語の授業を履修していることもあり、海外へ研修に行けるグローバル・ソシオロジー・プログラムを履修しました。
 上海研修に参加するにあたって、まずは日本で「ワーキング・プア」をテーマに選びました。現地では、「ワーキング・プア」を支援する団体や弁護士の方にインタビューし、その結果をまとめて、上海大学にて英語でプレゼンテーションを行いました。また、現地の学生との交流をきっかけに連絡を取り合うようになった友達ができました。
 上海での経験を通じて、海外から見える日本や、現地の同世代が日本に対して持っている興味関心等を知り、もっとアジアに行ってみたい、アジアから日本を見てみたいという思いが強くなりました。そしてグローバル・スタディーズを履修し、2年の夏に香港を訪問することになりました。

 グローバル・スタディーズには、香港やベトナム、韓国のソウルとプサン等へ行くプログラムがありましたが、香港を選んだのは、「香港社会で活躍する日本人」というテーマが気になったからです。香港の文化に興味がありましたし、日本と他国の関係性も気になり、グローバルに活動する日本人から何かを得られるのではないと思いました。

歴史を感じるものと最新のものが共存する街

▲高層ビルから見た香港の街

 この研修では、香港と中国・深圳を訪問しました。香港の街は古い建物が多いようなイメージを持っていましたが、実際に訪れてみると新しい建物も多く、昔ながらの雑多な街と新しい街が混在していました。宿泊した場所から電車で少し移動すると、とてもきれいな金融街があり、そこは日本の丸の内のような雰囲気の街でした。

 その金融街では、街の歴史や建物を紹介してもらいました。話を聞きながら銀行の建物を見ていると、ここを中心にこの香港が成長していったんだと、景色の中から歴史を感じることができて非常におもしろいと思いました。
 また、中国の深圳で「盒馬鮮生」(※)という最新のスーパーマーケットに立ち寄ったのですが、とても考えて作られた店舗で、システムは日本よりも進んでいると感じました。多くの中国の人々が現金を使わずに買い物をしている姿は新鮮でした。無人のコンビニエンスストアもあり、多くの人がクレジットカードや電子マネーを使っていることが前提にある為に無人でも成り立っている、そのような日本とは全く違うものを目の当たりにし、実際に見て感じることの面白さをつかんだ旅になりました。

盒馬鮮生(※)=オンライン活用することでオフラインの活性化を図るという戦略を行っているスーパーマーケット。実店舗では海鮮等が生け簀(いけす)に入れて売っており、試食ができる。ネット注文を行うと、店員によって選ばれた新鮮な食材が店内の天上にあるレールをつたって、素早く自宅に届く。また支払いは、中国のモバイル決済「アリペイ」に統一され、そこで蓄積された消費データをコンピューター解析し、消費者の動向分析と業務の効率化を経営に活かしている。

現地の大学生、街の人、大学の先輩方……いろいろな人たちと交流する

▲朝の公園にて。友人が本場の太極拳に挑戦

 香港では、担当教員の山田昌弘先生のお知り合いで、香港理工大学で指導をされている青山先生にお会いし、香港理工大学の学生と交流する機会をいただきました。大学生の中には、日本のアニメが大好きな方もいて、話を実際に聞いてみて「日本のアニメが海外で人気」という報道が本当のことなんだと実感できました。
 また、香港白門会の方々との交流会にも参加することができました。さまざまな分野で活躍されている先輩方が来てくださり、香港で働くことや香港から見た日本、グローバルに仕事をすることなど、とても興味深いお話を聞くことができました。秋から日本の大学に入学を控えたお嬢さんがいらっしゃる方にもお会いしました。そのお嬢さんは香港に育ち日本語よりも英語や中国語の方が得意で、日本での進学が少し不安だったのか、連絡先を交換し、彼女が日本に来たときに実際に会うことができました。今でも時々連絡を取っていて、彼女の日本の友達になることができてとても嬉しいです。

 ほかにも香港白門会に所属している方の息子さんに香港の街を案内してもらう機会がありました。研修に一緒に行った友人が太極拳をやっていて、本場の太極拳を見たいと公園に連れて行ってもらいました。朝の公園には、至る所で多くのグループが太極拳をしていたので驚きました。案内をしてくれた方がひとつのグループに話をしてくれて、友人はおばさまたちと一緒に本場の太極拳を体験することができました。おばさまたちから「上手だね~」なんて言われながら一緒にやっているのを見て、お互いに言葉が通じなくても一緒に交流できるなんてとても素敵なことだと思いました。
 

見たり聞いたり体験して、物事・事象について考える力を養う

 この研修期間は5日と短いものではありましたが、現地で働く日本人や現地の大学生、街の人々等、本当にたくさんの方々と交流する機会を持つことができ、充実したものになりました。また、香港は経済やビジネスから成長していった都市であることを聞き、とても興味深かったです。私は高校からずっと文学部への進学一筋で、経済学部や商学部はまったく興味を持っていなかったのですが、意外にもそのような分野に興味があるということを新たに発見することができました。専門分野の知識だけでなく、文化や実態、経済等について知ることも大切だと感じました。
 グローバル・スタディーズは、実際に見たり聞いたり体験したりすることを通じて物事・事象について考える力を養うことのできるプログラムです。担当の先生方の手厚いサポートがあるので安心して渡航することができます。とりあえず行ってみよう!行ってみたら発見がたくさんあって得るものは大きいと思います。

▲山田先生、一緒に研修に参加した仲間と

 実際に見て経験する、年代を問わずに様々な人と交流して話をする、そういったことはこれから大学で学び、社会に出ていく上で大切なことだと思いました。同時に、日本にいてはできない一味も二味も違う交流や経験から「海外に目を向けることの面白さ」を知り、自分自身の視野が広がってきたと実感しています。海外での経験とそこで学んだことは、本を読む上でも力になると思っています。もうすぐ3年生になりますが、大学院進学も視野に入れながら学んでいます。できることならば近現代文学の分野で、戦後作家について研究してみたいと思っており、そこで香港や上海での経験を研究活動に役立てることができると思っています。
 
 香港でも現地の大学生と友達になりました。写真という同じ趣味を持ち、メール、インスタ等で写真を見せ合ったり話をしたりしています。国を超えて同じ興味で繋がることができるのも、大学のプログラムが繋げてくれたご縁です。考え方も世界も広がった研修旅行になりました。香港で引率していただいた山田昌弘先生からは、「来年は、マカオに行きましょうか」とお声がけをいただいています。マカオでは、どんな発見があるのか、何を見ることができるのか、アジアのどこかでまた研修できることを楽しみにしながら、専門分野をもっと深めていきたいと思います。
 
文学部の授業科目<グローバル・スタディーズのここが良い!~香港>
・現地で働く日本人にインタビューしたり、現地の大学生との交流を通じて、海外から見た日本を知ることができる。
・現地での交流を通じてコミュニケーション能力を高めることができる。
・語学力に自信がなくても、担当教員のサポートがあるから安心。
・現地調査を通じて幅広い視野を身に付けることができる。
<四井さんの活動経歴>

●2018年3月グローバル・ソシオロジー・プログラム(1週間):中国・上海
●2018年8月グローバル・スタディーズ(1週間):香港、中国・広東省深圳