
大学院理工学研究科物理学専攻博士課程後期課程1年
本田 良二郎(私立聖望学園高校)
The 26th IUPAP International Conference on Statistical Physics (Statphys26)
(統計物理学に関する第26回国際会議)
2016 年7 月18 日〜22 日
リヨンコングレスセンター(リヨン・フランス)
私は7月18日から22日にかけてフランス、リヨンにおいて開催されたSTATPHYS26に参加しました。本会議は国際純粋・応用物理学連合が主催する統計物理学における最大級の国際会議であり、3年に1度催されます。今回は1300人を超える研究者が参加しており、日本からは100人ほどの研究者が参加しました。本会議では参加者の研究発表以外にも、ボルツマン賞と若手科学者賞の授与式が行われました。これらは統計物理学の発展・応用に尽力した研究者に贈られる賞です。今回若手科学者賞を受賞されたリサ・マニング氏とマーティン・レンツ氏両名は、統計物理学の手法を細胞や生体組織の形成機構に応用する研究をされていました。彼らの研究には実験的な事実が根底にあり、それが理論的考察とシミュレーションによる定量的な分析結果を支えていました。これは私自身が目指している研究の方向性でもあり、彼らの講演を直接聴けた経験は現在の研究を支えるモチベーションとなっています。
私は物理学専攻の博士課程1年であり、研究テーマはパターン形成の物理学です。非平衡系の現象を実験観察から定性的に分類し、自然の中に見られる様々な現象の普遍性を明らかにすることを目指しています。特に現在研究を進めているのは、バクテリアを用いた生物系が作るパターンの研究です。これまでの研究から、バクテリアを培養する環境条件を変えることで、生物的な動的な要素から成る形態から、非生物系に見られるような拡散に支配された形態を作り出せることが知られています。この研究を通して、生物系・非生物系に見られる現象の統一的な理解が深まるのではないかと考えています。

会場にある巨大な彫刻作品の前で
会議の中日の20日には、上述した2つの授賞式とボルツマン賞受賞者の講演が行われました。また、この式典の中では人権に関する議論も行われました。そこでは戦争と難民問題が取り上げられており、戦争によって人権が奪われてしまうことは、科学者が育つ機会も奪われてしまうということが訴えられていました。私たちが大学院で研究し、海外の研究者とも交流ができるのは、国際社会の安定の上に成り立つことなのだと強く実感しました。
最後になりますが、本会議参加にあたり、多くの方に支えていただいたことについて感謝を述べたいと思います。日頃から研究をご指導いただいている脇田順一准教授、香取眞理教授、資金面でサポートしていただいた中央大学に深く感謝いたします。