2015年12月11日(金)、在日オーストラリア大使館よりトム・コナー首席公使を招き、講演会を実施しました。インターナショナル・ウィークの中核のひとつとなる講演会であり、講演前にはトム・コナー首席公使と在日オーストラリア大使館の市川智子主席商務官、本学の酒井正三郎総長・学長、武石智香子副学長・国際センター所長、スティーブン・ヘッセ国際センター副所長による懇談が行われました。
下記に、講演の概要を紹介します。
下記に、講演の概要を紹介します。
講演会『Moving to Strengthen Australia-Japan Relations』
相乗効果を生み出してきた日豪の経済

まず、日豪関係について。両国には、たくさんの共通点があります。互いに民主主義国家であり、人権を尊重するという共通の価値観があります。
オーストラリアは24年間連続して経済成長を遂げており、この期間はどの先進国・経済大国から見ても最長です。このオーストラリアの成功の一部を成しているのが、諸外国とのパートナーシップです。言うまでもなく、日本とは長きに渡り強力な関係を築いてきました。1957年に調印された日豪通商協定は、その皮切りと言えるでしょう。これによって幅広い分野で健全な関係を築き、今やオーストラリアは日本にとって第3位の輸入市場となっています。例えばエネルギーはオーストラリアから日本へ輸出されている大きな輸出品のひとつ。このほか牛肉や大麦、乳製品などが大量に日本に輸出されています。
日本からオーストラリアへの輸出品と言えば、自動車、電気製品。ほかに日本の企業はオーストラリアに対して多くの投資をしてくれています。この投資で雇用が創出され、真の意味で経済発展の手助けになっています。
2014年7月には安倍晋三首相がオーストラリアに来た際に日豪経済連携協定(JAEPA)が調印され、2015年1月に発効しました。これは非常に重要なことです。関税を引き下げ、よりよい環境投資のために両国が助けあえる形で合意ができました。スーパーマーケットには、オーストラリア産の食品が並んでいることに気がつくかと思います。これも、関税が下がったおかげです。価格が下がり、需要が押し上げられる。日本の供給業者も商品をたくさん売ることができると言えます。例えば、オーストラリアは日本にオージービーフを供給しています。これは家庭での需要が大きいですが、逆にレストランでは質の高い和牛が人気で、オーストラリアの牛肉は和牛の需要押し上げにも役立っています。こうした質の高い合意を実現できたことは、ほかの国に対してもよいお手本を示すことができたと思います。まだ朗報は続きます。環太平洋経済連携協定(TPP)です。地域レベルの自由貿易協定であり、前例のない範囲の広さと志の高さを持った協定となっています。これは日豪双方に雇用の伸びを生み出し、両国に恩恵をもたらせるだろうと信じています。
オーストラリアで学ぶ魅力と国際戦略
ビジネス関係が強いということは申し上げましたが、それ以外にもたくさんの結びつきがあります。そのひとつが教育、研究です。日本はオーストラリアの学生、研究者から人気がある国です。オーストラリアの学校では、約36万人の学生が日本語を勉強しており、学ばれている外国語としては第4位。日豪間の学校では650もの協定が結ばれています。1980年には日・オーストラリア科学技術研究開発協力協定が締結され、大学間では480を超えるパートナーシップが結ばれています。ご存知の通り、中央大学ではオーストラリアの11の大学と協定を結んでいます。
日豪間の共同研究の質は非常に高く、オーストラリアや日本の単独研究よりも日豪が共同で行った研究の文献の方が、より多く引用されていることも分かっています。日豪がこのような形で協力することによって、双方に恩恵が得られることが示されたのです。
ここから若干、オーストラリアの教育について付け加えておきたいと思います。オーストラリアで学ぶ学生は、受けた教育について高い確率で満足しているという報告があります。オーストラリアの大学の質の高さは世界から評価を受け、40万人の留学生がオーストラリアで学んでいます。もちろん、日本人の学生も多くいます。彼らがオーストラリアで学ぶ理由は“英語が勉強できるから”だけではありません。

新コロンボ計画(NCP)というものについてご紹介したいと思います。オーストラリア政府は、国際教育に関する新たな戦略を確立しました。そのひとつがNCPです。オーストラリアの学生をインド太平洋地域の大学・教育機関に送り出し、派遣された地域で暮らしながら文化を学び、勉強することで、アジア諸国との関係を強めることを目的としています。中央大学は2014年に、NCPの学生を受け入れてくれました。
技術革新への取り組みと成果
ここから少し、イノベーションについてお話します。イノベーションは将来的に、私どもの人材交流の核になると思っています。世界経済フォーラムの調査では、オーストラリアは世界で最も創造的な経済パフォーマーであると言われています。科学、リサーチ、革新といった分野に政府が投資する額は、OECD調査による世界平均額を上回っています。初めてWi-Fiを発明したのはオーストラリア人ですし、飛行機に搭載されているブラックボックス、Google Mapsや癌のワクチン、抗生物質の初期開発もオーストラリアの研究者が関わっていました。こうしたイノベーションにはたくさんのコミットメントが必要ですし、政府の予算も大切で、戦略的に取り組んでいかなければなりません。皆さん、リカルデントという名前を聞いたことがありますか? いわゆるガムですが、メルボルン大学で発明され、日本でパートナーシップを結び商品として発売しています。日豪協業の成果のよい例と言えるでしょう。多国籍な文化に触れられるオーストラリアで海外経験を!
オーストラリアは国際的な指標から高い評価を受け、国連開発計画による人間開発指数(HDI)では2位、英国誌「エコノミスト」ではメルボルンが世界で最も住みやすい年に5年連続1位、アデレード、シドニー、パースといった都市も上位10位に選ばれています。
オーストラリアは世界中から人が集まり仕事をしていますので、さまざまな国籍の人たちに出会えます。皆さんがオーストラリアで勉強をすれば、日本に戻ってから政府、大学、社会に多大な貢献ができるでしょう。海外での経験が、高い価値として求められるからです。ですから、海外に出てその経験を持ち帰り、周囲に共有してもらいたいんです。そうすることで、世界中でよりよい関係が築けると私は考えています。将来、皆さんがどのような仕事に就くとしても、海外と何らかの形で繋がりがあるでしょう。
それから皆さんには是非、オーストラリアに滞在しに来ていただければと思っています。皆さんがオーストラリアで勉強する、そしてオーストラリアから日本に学生を送ることによって、既に緊密な関係をさらに強くしていくことができると思います。オーストラリアは日本と時差が少なく、観光にも最適です。いい場所ですよ。「どこかに行きたい」と思ったら、是非、オーストラリアにお越しください。
■講演者プロフィール■![]()
2013年1月より2016年2月まで、在日オーストラリア大使館首席公使を務める。2003年6月から2006年5月にかけても、政治担当参事官として日本に赴任。2006年5月から2008年6月は、日本や韓国、北朝鮮との関係を担当する北東アジア部長の職に就いていた。2008年7月より2011年10月にかけて中国・上海の総領事として活躍した後、オーストラリアに戻り、2011年10月から2012年12月までオーストラリア政府外務貿易省(DFAT)のインドネシア・地域問題・東ティモール担当部長を務めた。
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