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【グローバル人材育成推進事業 学生啓発講演会】 「タイにおける流通業の現状と課題」を開催しました

2013年11月14日

11月5日(火)、多摩キャンパスにおいて、タイ国・パンヤーピワット経営大学(PIM)経営学部長であるルアンサック カオタマチャイ氏による講演会(グローバル人材育成推進事業学生啓発講演会)が開催されました。 

PIMは、タイのセブンイレブンを中心とする流通業大手シーピーオール(CP-ALL)が経営母体となっており、通常のカリキュラムの中で授業を受けてからバンコクを中心とした関連企業で実践を学ぶ、いわゆるwork based learningを取り入れている大学です。中央大学商学部では、その実績をもとに、PIMと連携して学生が海外において実践的な学びを展開できるよう準備を進めています。

本講演会は、商学部が2014年度から実施予定の海外インターンシッププログラムにおいて、PIMを通じてCP-ALLの関連会社に学生を派遣する関係で実現しました。

ルアンサック氏は、英語、日本語ともに堪能ですが、当日は流暢な日本語で「タイにおける流通業の現状と課題」をテーマに講演を行いました。

【講演者プロフィール】
ルアンサック カオタマチャイ
チェンマイ大学工学部卒業後、文科省奨学金で来日。岡山大学工学部大学院で修士号・博士号(工学)を取得。タイへ戻り、タマサート大学SIITの教員を経て、パンヤーピワット経営大学へ移り、現在、経営学部長。

タイの物流の発展に向けて

タイはASEANの中央あたりにあり、面積は日本の約1.4倍、人口は日本の半分程度です。首都はバンコクで年中暑く、民族は8割方がタイ族で、言語はタイ語、主要産業は農業となっています。

タイと日本の経済関係を見てみると、タイから日本への輸入量より、タイへの輸出量のほうが上回っています。輸出品目では、機械・同部品、鉄・鉄鋼、自動車部品が主要品目となっていますが、この理由についてルアンサック氏は、「タイに進出している日系企業が非常に多いため」と説明します。中でも、自動車産業、電気機器産業、小売業関係において日本の大手メーカーの進出が目立ちます。

では、タイの流通の現状はどうなっているのでしょうか。「Logistics Performance Index:Global Rankings 2012」によると、日本は世界8位に対して、タイは38位となっています。ルアンサック氏は、「シンガポールやマレーシアなどと比べると、タイでは道路、鉄道、港、空港などすべての交通整備がまだまだで、物流の改善に向けて今後さらに発展の必要性がある」と語ります。タイ国内における輸送に関しては、現在、道路が86%で最も利用されているものの、コストが非常に高くつくのが難点です。そのため「物流コストを下げるには、もっと鉄道を効果的に使う必要がある」とルアンサック氏は指摘します。

しかしながら、タイにおける鉄道路は現在トータル約4,000kmしかありません。しかも建設から100年以上経っており、列車のスピードも遅く、バンコクからチェンマイまで行くのに1日以上もかかるといいます。タイにおける鉄道での運送状況は決してよいとはいえませんが、改善のチャンスはあります。それは、2015年にASEAN経済共同体(AEC)が発足することです。タイはAECの中心にあたるので、物流もタイが中心地になる可能性があるのです。

そのためタイ政府は、物流の発展に向け、7年計画で高速鉄道の建設を決定しました。日本もしくは中国の技術を用い、チェンマイ-バンコクなど4ラインの建設を計画しています。

「7年後にぜひタイに来て、タイの新幹線に乗ってください。道路の開発も進み、北は中国、東はベトナム、南はマレーシア、シンガポール、西はミャンマー、インドまで、どの国にも行けるようになります。今は2ラインしかありませんが、地下鉄やモノレールも新設されます。PIMの近くにも駅ができる予定ですので、便利になると思います」。

AEC発足の影響でタイが経済発展をすると、流通に関わる企業の必要性がさらに高まることが予想されます。現在、タイのロジスティック企業のほとんどは外資で、日本のNYK Logistics(Thailand) Co. Ltd.は、ドイツのDHL Global Forwarding (Thailand) Ltd.についで2番目の売上を誇り、日本のTTK Logistics (Thailand) Co. Ltd.も6位にランクしています(ロジスティック専門誌「Logistics Thailand」より)。ルアンサック氏は、「現在、タイでは日本料理レストランが急増していて、非常に人気が高いため、ロジスティクス企業もチャンスになるだろう」と語り、講演を結びました。

その後、質疑応答があり、会は盛況のうちに終了。タイの研究者から直接話を伺う機会はめったにないだけに、今回の講演会は学生たちにとって非常に有意義な時間となりました。