大学卒業後、2回の海外留学を経験
初めて留学したのは、大学院在学中でした。英語の勉強や修士論文の資料収集のために1年間カナダへ。英語と同時にフランス語も勉強しようと、ケベック州に留学しました。残念ながらフランス語のほうは途中で挫折してしまいましたが、英語圏に囲まれたフランス語圏に滞在するというのは貴重な体験でした。その後修士課程を終え、社会人になってから、再び留学しました。4年間勤めた翻訳会社を退職し、南米のパラグアイに住むことに。以前から興味があったスペイン語を勉強しながら、1年間暮らしました。私は帰国子女でもなく、特にインターナショナルな環境で育ったわけでもありませんが、なんとなく海外への興味を持ち続けていました。当時の私の周囲では海外旅行や留学が流行っていたこともあり、自然と海外に目が向いていたのかもしれません。留学中は苦楽を共にする友人たちにも恵まれ、素晴らしい時間を過ごすことができました。単純ですが、留学中の楽しかった経験が、国際的な仕事に関わりたいという、その後のキャリアの方向性を決めていったように感じます。
帰国後、国際協力関係の仕事を探して
パラグアイから帰国後、就職活動をスタートしました。大学や大学院を通じて“教育”をテーマに研究していたので、当初は教育関係の仕事に就くことを希望していました。それと同時に、大学院の時に国際協力機構(JICA)でインターンを経験したことから、国際協力の分野にも興味を持っていました。とはいえ、開発経済学や国際政治学といった専門的知識を持ち合わせているわけでもないので、国際協力分野はあまり自分には縁のない世界かもしれないとも感じていました。そうしていくつか応募していた中で、運良く国連大学に採用が決まったのです。現在の所属は学長室で、副学長のアシスタント(秘書)を務めています。副学長は東京に2名、ヨーロッパに1名おり、私は東京の本部でゴヴィンダン・パライル教授についていますが、教授は国連大学高等研究所(UNU-IAS)の所長も兼任しているため、所長付きアシスタントでもあります。
国連大学でアシスタントとして勤務
主な仕事は、副学長のスケジュール管理、出張や会議の手配、ビジネスレター作成、翻訳・通訳などの秘書業務全般です。また、国連大学では開発途上国支援を目的とした、さまざまな研究・教育プログラムを展開しており、それに関わる会議やワークショップのロジスティクスサポートも重要な仕事です。国内外の出席者の参加手配、会議資料の準備、イベント当日のVIPのアテンドなども担当しています。仕事での使用言語や会議資料はほぼすべて英語です。もともと私は英語の読み書きはあまり得意ではなかったのですが、前職の翻訳会社で翻訳のチェックを自ら手掛けたり、英文のビジネス文書に触れる機会が多くあったため、そういった経験が今の仕事で活きていると感じます。また、会議など学内の共通言語は英語ですが、さまざまな国から来ている方たちの英語なので言い回しがそれぞれ違います。でも、留学中に、各国からの留学生と多くの時間を過ごしていたので、いろいろな言い回しに自然と慣れてきていたようでした。そのおかげか、いまはそれほど苦労せずに済んでいます。自分のこれまでの経験すべてが活きる職場だと実感しています。
国際的で、刺激が多い職場環境
仕事はすごく楽しいですし、やりがいもあります。国連大学には海外からのフェローがたくさん在籍しているので本当に国際的ですし、そういう方たちとお話しをするとすごく刺激を受けます。開放的でリラックスした雰囲気もありますので、働きやすい環境だと思います。国連大学高等研究所では環境関連のセミナーが多数行われているのですが、私たち職員も参加することが許されています。外国から研究者を招いてプレゼンテーションをしてもらったり、学生やフェローと一緒に意見交換などができる貴重な機会ですので積極的に参加したいのですが、なかなか業務で忙しく参加できていないのが現状です。せっかくリソースにアクセスできる恵まれた環境にいるのですから、もっと参加できるように努力していきたいと思っています。また、現在は自分の担当業務ではないのですが、いつかは教育関連のプログラムにより深く関わっていきたいという希望もあります。
世界を広げてくれた、中央大学での出会い
大学時代に得られたいちばん大きな財産は、文学部の森茂岳雄教授との出会いです。学生をやる気にさせてくれる、とても素晴らしい先生で、大学院進学も勧めてくださいました。私は大学で一度専攻を変えていて、入学当初は英米文学専攻で学んでいたのですが、途中で教育学専攻に転部しました。実は先生は、私が転部する際の試験の面接官をされていて、そこで初めてお会いしました。面接で「英米文学専攻でいちばん面白かった授業は?」と聞かれたので、「ジョージ・タケイという日系アメリカ人が書いた”To the Stars”という自叙伝を教科書にした授業が興味深かった」と答えたら、なんと先生が日系人研究の第一人者ということで、その場でかなり突っ込まれてしまいました。これはもうダメだろうと思っていましたが、逆にそれが良かったのか合格することができました。大学院での研究は「日系人の教育」をテーマにしたので、本当にいろいろとアドバイスいただきましたし、先生を通して素晴らしい方々とも知り合えました。先生の存在が、私の世界を広げてくれたと言っても過言ではありません。また、私が学生の皆さんにぜひおすすめしたいのは留学です。最初の留学の時、大学の交換留学プログラムを利用したかったのですが、残念ながら選考に通らなかったため、自分で留学先を探しました。現在は大学の制度やサポートがさらに充実しているそうなので、ぜひ積極的に利用してください。語学や文化交流はもちろんですが、自分の視野を広げるという意味で、積極的に海外に出て行って、たくさん吸収してきてほしいと思います。