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グローバル・パーソンメッセージ vol.020 下田屋 毅さん

英国ロンドンでCSR関連事業を展開

ロンドンからの東北復興支援活動に対する中間支援団体「TERP London」事務局長としての一面ももつ。桜ブローチは支援活動の一つ

「Sustainavision Ltd.」は、CSRコンサルティング、CSR関連研修、CSR/環境関連リサーチを行う企業です。CSR(corporate social responsibility)とは、企業の社会的責任のことで、日本では、法令遵守や利潤を追求しない環境活動や慈善事業、ボランティアなどと認識されがちですが、実際はそうではありません。企業の事業活動すべてがCSRであり、CSRを企業の投資とみなして経営戦略に組み込み、持続可能な社会の構築に貢献していくことが、グローバル社会を生きる現代企業に求められているのです。これを企業のCSR担当者やトップに対して啓蒙し、支援していくのが私たちの役割です。

設立は3年前。大学卒業後に入社した川崎重工業株式会社で培った人事・総務・採用・教育・安全衛生・環境ビジネスに関わる知識と経験、その後の英国留学で得た環境科学とMBAの知識をベースに起業しました。ロンドンに拠点を置いたのは、欧州にはCSRの先進企業が多く存在し、欧州連合としてもCSRを政策として実施していて、欧州が世界のCSRを牽引している状況があり、日本企業が学ぶべき先進事例などの情報が入手しやすいということがありました。また、現地でCSRのコンサルティングやリサーチを行う日本人がいなかったため、日本企業をサポートする上での差別化につながるということ。そして、日本のCSRコンサルタント・関係者の方と協働して事業に取り組む機会を生み出すことができるという点からです。

現在、力を入れていることとして大きく2つありまして、1つ目としては、日本でのCSRのトレーニングやセミナーの開催です。とくに英国IEMA認定の「サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習」というCSRの国家資格を欧州のCSRコンサルティング会社であるCSEとパートナーシップを結び、2012年2月から日本にて開始しました。この資格講習では、世界の先進企業のCSRの取り組み状況と日本企業とのギャップを認識しながら、CSRをどのように企業戦略に統合していくのかを体系的に学ぶことができます。これは日本企業だけの課題ではないのですが、CSR担当部門は企業内でまだまだ理解が得られていない状況にあるので、この講習の参加者が企業全体のCSRの意識を高める活動ができるように、その足掛かりになることが提供できればと考えています。

また、2つ目として、欧州企業のCSRの先進事例や最新情報を日本のメディアを通じて欧州から発信することです。日本企業が欧州でのCSRの動向を的確に捉えて、とくに海外でのCSR戦略に活用していただくことを目的として実施しています。

持続可能な社会の構築に向けて

ロンドンにはさまざまな人種や文化、宗教があります。こうした多様性の中に身を置き、欧州と日本との違いを考えつつ、日本企業がCSRを戦略的に推進し持続可能な社会を構築するために何が必要なのかを常日頃から考えています。

現在は日本の大企業を対象としたサポートが中心ですが、将来的には、中小企業へのサポートにも力を入れていきたいと思っています。欧州は中小企業の割合が高く、CSRに関わる政策面でのサポートが進められていますが、中小企業がCSRへの取り組みをするための障害があり、政策だけではカバーしきれない面が多々あります。欧州に展開する世界の先進企業の模範事例を活用し、欧州そして、日本の中小企業がCSRの取り組みを進めていけるようにサポートしていきたいと考えています。

また、日本との連携をより深め、CSRに関する日本の有益な情報を得ながら欧州への情報発信もしていきたいと考えています。日本と欧州とのCSRの橋渡しができるよう今後も活動を進めていきたいと思っています。

日本と世界を結ぶ人材となるために

サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格保持者向けセミナーの様子

学生の皆さんには日本を知るという意味でどんどん海外に出て経験を積んでほしいと思います。

日本は島国ということで隣国と接触する機会が少なく、現在は国内市場が大きいため、無理に海外に出る必要もないかもしれません。しかしこれからますますグローバル化が進む中で、海外からグローバルな視点で物事を考え、冷静に日本の特異な文化を眺めること、日本を客観視することで必ず見えてくるものがあります。そしてそれが自分の将来に非常に意義を持つものとなると思います。日本という国が国内だけで成り立っているのではなく、世界と密接に関わり合いながら成り立っているということを体験するよい機会となると思います。日本をこれから担っていく皆さんにはぜひそのような体験をしていただきたいと思っています。そしてグローバルな視野で物事を考え、日本と世界をうまく連携できる人材がさらに増えてほしいと期待しています。
応援しています。頑張ってください。