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「水環境に関する国際シンポジウム」-招待講演

2013年03月22日

河川再生による持続可能な水管理

国際水文環境学会会長、嶺南大学 李舜鐸教授

水は生活に欠かせないものであり、水と人類は密接に繋がっています。だからこそ水環境を整えること、つまり水管理は、我々の未来を見据えた行動であるといえます。

現在、水にまつわる課題として挙げられているのは、気候変動や成層圏オゾン層の減少、森林・湿地帯・動植物の生息環境の破壊、生物多様性の喪失、忍び寄る砂漠化、土地・水質の汚染、再利用不可能な資源の使用、水と食糧の不足、人口増加と都市化、越境流域の水資源をめぐる衝突、地域レベルでの衛生管理および水資源管理の遅れなど。こうした課題に取り組む上で問題となっているのが、資金や人材、技術力、政府的関与の不足、水環境に関わるすべての要因の需要と供給、質と量の不均衡、そして情報とコミュニケーションの不足です。

今後の我々の運命は、我々の手にゆだねられています。現在と将来、どちらのニーズも阻むことなく目的を達成していくためには、“sustainability(持続可能性)”がポイントになります。sustainabilityとは、環境資源と生態系を保護するとともに、短、長期にわたって環境と社会の双方の発展を目指すことであり、持続可能な水管理を推進するにあたっても、長期的な視野から、環境や安全性に配慮しながら、人々のニーズや公平性なども鑑み、水サイクル全体にわたって考えていくことが大切です。世界における今日の水危機は、こうした水管理が行き届いていないことによるものです。懸命に水管理に取り組むことによって、救われる人々も増えていきます。

ユネスコでは現在、HELP (Hydrology for the Environment , Life and Policy)プログラムを実施していますが、その中には、水環境と気候、水と食糧、水質と人の健康、水と環境、水とそれを取り巻く対立(衝突)という5つのテーマが設けられています。これらに取り組むにあたっては、統合水資源管理(IWRM)が重要です。これは、水や土地、その他の関連資源の調整を図りながら、開発・管理していくプロセスのことで、目的は欠かすことのできない生態系の持続発展性を損なうことなく、結果として生じる経済的・社会的福利を公平な方法で最大限にまで増大させることにあります。

韓国でも、急速な工業化とここ数十年での人口増加による水需要や水質汚染の大幅な増加に伴い、数年前からHELPの一環として4つの河川プログラムを実施しています。2011年4月には大邱(テグ)で未来のための河川の復元と管理に関するシンポジウムを開催し、「DAEGU STATEMENT」を宣言しました。このプログラムにおいては、多大な公的資金を投入し、インフラ等を整備した結果、流域の状況や植生の改善に至りましたが、これはまだ持続可能な水管理の第一段階に過ぎません。今後は主だった河川だけでなく、支流にまでこの取り組みを広げられるよう、しっかりとモニタリングをしていかなければならないと思っています。